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特集/検証・市町村障害者計画

なぜ進まないのか、市町村障害者計画

村谷昌弘

 市町村障害者計画策定については、多くの障害者団体が大きな期待と関心をもっている。いま私が代表をつとめている日身連(日本身体障害者団体連合会)、日盲連(日本盲人会連合)でも、もちろんのことである。福祉行政の権限が大幅に委譲された全国の市町村において、障害者施策推進協議会は置かれたのか、障害者計画は策定されたのか、その内容はどのようなものか、同協議会には障害者が参加したのか、策定された計画を当該市町村地域に在住する障害者らはどう受けとめているのか、関心は山積みである。
 いまさら述べるまでもないが、市町村に協議会が置かれたのかどうか、計画が策定されたのかどうかが問われているのは、平成5年12月3日に改正公布された「障害者基本法」によるもので、同法第7条の2「政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画を策定しなければならない。」ついで、二の3に「市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第5項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。」の規定に基づく。
 身体障害者福祉法や精神薄弱者福祉法などいわゆる福祉八法が改正されたのが、平成2年である。若干の猶予期間があったにせよ、すでに、障害者関係の行政権限が市町村に委譲されている今日、いまなお、市町村に障害者施策推進協議会を置かず、市町村障害者計画を策定していないのは何故か、というよりも、当該地域住民、とくに、心身の障害故、難渋している障害者を無視したものだと怒りがこみあげる。
 日本は第2次世界大戦に大敗し、国土は荒廃、人心は極度に混乱していた。そうした中にも、1947(昭和22)年に児童福祉法、ついで1949(昭和24)年12月、身体障害者福祉法が公布され、なお、翌年昭和25年に、戦前からの救貧、生活保護施策を整備した生活保護法が改正公布され、窮迫する行財政の中にも福祉立法が芽生えた。
 まだ、復興途上であった昭和30年代に入って、34年に国民年金法の公布とともに、補完としての老齢・障害・母子の福祉年金、35年に身体障害者雇用促進法、36年、精神薄弱者福祉法が公布、45年には、障害者総合の心身障害者対策基本法が制定公布され、障害者福祉行政の体制がほぼ整った。1981(昭和56)年の国際障害者年、83(昭和58)年からの国連障害者の十年に当たって、わが国における障害者対策に関する長期計画、ついで、アジア太平洋障害者の十年には、さきの長期計画に継ぐ新長期計画、この新長期計画をもとに、1995(平成7)年12月、政府の障害者施策推進本部がたてた障害者プランの実行は、必ずしも政府の施策によるだけでなく、都道府県も市町村も当然行わなければならない行政の指針ではないのか。
 私は斯く思うとき、すでに障害者施策推進協議会を置き、障害者計画を策定された市町村に、深甚の敬意を表わすとともに、未設置、未策定の市町村は直ちに障害者施策推進協議会を置き、障害者計画を立て、実行されるべきだと強調したい。
 協議会の設置状況や計画策定の遅れの理由については、1995年12月に、新・障害者の十年推進会議(事務局:日本障害者リハビリテーション協会内)が全国3255市区町村長にアンケートを実施し、その回答結果は、昨年3月に公表された報告書で詳細に説明されているので省略する。
 私は障害者計画の策定をどのようにして促進すべきか、思い当たる点を次に述べてみたい。

1、すでに政府が、または都道府県が全市町村に対して、障害者施策推進協議会の設置、障害者計画策定の意義等について連絡、指導を行ってきたものと思うが、単に文書だけでなく、当事者による集会等をもって、徹底した連絡指導を行われたい。

2、市町村当事者は、協議会の設置、障害者計画の策定に、行財政の実態とともに不可解な点があれば徹底的に質問されたい。

3、市町村当事者は、早急に地域内における障害者個々人、及び障害者を含む世帯の実態を把握されたい。

4、市町村内に特定の障害者団体がない、または、当該都道府県における障害者団体の支部、または分会等が置かれていない場合、その支部または分会の設置促進を図ること。支部等が置かれていれば、組織相互が連携をとって、当該市町村と積極的に折衝を進められたい。

5、障害の種別、特性が受け入れられるよう協調するのもよいが、障害者もしくは障害者団体相互が協議、協力態勢を確立するよう、さらに市町村社会福祉協議会に参加し、協力を求められたい。

 日身連は、これらのことをこれまで年度ごとに事業、運動方針にもあげてきたが、組織を市町村地域末端にまで浸透させる最善の努力を傾注する。それには当然、組織当該都道府県ならびに政令指定都市、団体との連携によって、市町村地域障害者または障害者団体の実態を把握し、障害者のニーズに応えられるよう協議協力に努めていきたい。

(むらたにまさひろ 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年6月号(第17巻 通巻191号)22頁・23頁