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高度情報化社会にむけて

施設のOA化に取り組む

中野和典

 私は小学校を養護学校で、中学、高校は普通学校で過ごしました。今から25年前の話になりますが、養護学校から普通学校への転入は、今以上にむずかしいものでした。勉強も遅れていましたので、先生が毎日夕方5時まで補習をしてくれたり、普通小学校への体験入学をさせてくれたりと、若さとパワーで転入を実現させてくれました。それ以来、私はいつか障害者福祉の仕事をしたいと考えていましたが、今、ようやく「むさしの青年寮(埼玉県東松山市の知的障害者入所更生施設)」で、その夢がかないました。
 高校を卒業して私は日本チャリティプレート協会の職能訓練所に入所し、コンピュータを勉強しました。そして日立製作所に入社して14年間、情報管理課で大型コンピュータを使ってオンラインの生産管理システムの開発と運用を担当していました。福祉とはまったく関係のない職場で、必死に働いてきましたが、今の職に変わって給料は少し下がりはしたものの、仕事のやりがいは上がったと自分では思っています。
 転職した当時は、前の職場との落差の大きさに驚かされました。書類はほとんど手書きで、パソコンはあるが、使ってもワープロどまりで、ウィンドウズでないため使える汎用ソフトがほとんどありませんでした。その中で先輩と1年間、業務の引き継ぎをしながらコンピュータシステムの設計をしました。その結果、大きいメーカーの社会福祉法人用のシステムでなくても汎用のソフトで十分であるということがわかりました。そこでまず、なるべくお金をかけずに将来を見越したシステムを考え、この4月より稼動しましたので簡単に紹介します。
 ハードはDOS/V2台(1台は自作)。OSはWindowsNT4.0とWindows95によるネットワークシステムによるDATAと周辺機器の共有化とユーザーのパスワード管理を実現させました。
 ソフトはおもにマイクロソフトのオフィス95をベースにしたもので、財務会計はミヤエンジニアリング(宮崎豊和さん)のむさしの青年寮バージョン。
 寮生会計(入所者のこづかい管理)システムは、システム設計は私がやり、プログラムは東京コロニーと共同で開発しました。給与計算は一般会社用のソリマチの物で十分で、量販店でも3、4万円ぐらいで売られています。
 以上が現在、稼働中のシステムですが、たぶんコスト的には大手メーカーのシステムの半分ぐらいの予算でできたのではないかと思います。
 今後、開発したいシステムとしては、献立栄養システム、生活ホーム(グループホーム)会計システム、レスパイト予約請求システム、ケース記録のデータベース化システム、インターネットを利用した養育相談等です。
 私がOA化にこだわるわけは、福祉は究極のサービス産業であると考えるからです。OA化することにより、職員が入所者にかかわる時間を増やし、人的サービスを向上させると共に、地域の在宅者へのサービス向上も実現させていく手伝いをコンピュータを使って行っていきたいと考えています。
 OA化の問題点としては、まず施設の中の問題として、データの共有がないことがあげられます。例えば、行事の案内や計画書は毎年同じことをやるのにもかかわらず、担当職員が変わると一から個人もちのワープロに作りなおすなど、無駄が多くみられます。
 このことは、行政側にもいえることで、毎年同じような内容のアンケートや申請書を係が変わると書式だけ変えて提出していますが、これなどは1つの書式にして行政側でデータの共有化をはかってほしいと思っています。
 また独自でネットワークを作ろうなんてしないで、汎用のネットワークもどんどん活用してほしいと思っています。

(なかのかずのり むさしの青年寮)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年7月号(第17巻 通巻192号)54頁・55頁