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新しい仕組みへの評価と課題

松尾榮

1 障害者団体の参画と意見の尊重

 社会福祉基礎構造改革について、社会援護局長や保健福祉部長との意見交換会等が設けられ、団体の意見を聞いていただいていることについては感謝している。
 しかし、まだ多くの課題がある。日本身体障害者団体連合会で陳情要望したことなどを踏まえて、具体的に書いてみたい。

 先の社会福祉基礎構造改革の分科会委員の中には障害者団体の名は一つもない。
 もちろん、日身連会長として参画し、意見を述べる機会はなかった。当事者団体の能力があまり評価されていないことが大きな今後の課題の一つである。
 このことについて、障害者関係3審議会の意見具申として「障害者の地域生活を支援するための相談事業、苦情解決制度、サービス内容の評価基準の作成、障害者計画の立案等に広く参画できるように支援する必要がある」と発表されている。
 しかし、最近ある座談会で「住民参加で障害者団体が計画づくりに参加する際に、各障害者団体がそれぞれ自分の主張ばかりされていては、方向がまとまらぬ恐れがある」「障害者団体が福祉全般を考えて、計画づくりに参加する力量を、すでに備えていると考えていいのか」とのある大学教授の発言があり、大変気になることである。

2 市町村障害者計画の策定

 総理府の発表では、市町村障害者計画の策定は平成10年3月、33.3%であり、数値目標が設定されているものはさらにその29.7%にとどまっており、全体の9.89%にすぎない。
 このためには市町村障害者計画策定の義務化が必要であり、都道府県のさらに強力な指導をお願いしたい。また、地方障害者団体としても強力に推進し、策定に参加できる当事者能力のさらなる向上を期待している。

3 社会福祉事業の充実、活性化

(1) 社会参加推進事業

●障害者地域生活支援事業
●障害者相談員活動「障害者110番事業」
●障害者情報提供事業
●手話通訳派遣事業
●要約筆記派遣事業

などを、福祉事業として認めていただきたいと要望しているが、厚生省は「障害者110番事業」は相談員活動の中で、との考えのようだ。
 今、各都道府県社会参加推進センターで運営している「110番事業」の相談件数はかなり多い。
 要約筆記については、これからという見解であるが、聴覚障害者や中途失聴者からの要請はかなり高い。手話だけでなく要約筆記も、社会福祉事業として認めていただきたい。

(2) 社会福祉法人の設立要件の緩和

 先の社会福祉基礎構造改革の大綱骨子に、

●障害者の通所授産施設の要件の引き下げ
●在宅サービス事業等を経営する社会福祉法人の資産要件(1億円)の大幅引き下げ
●通所施設の用に供する土地、建物について賃貸を認めること

とあり、大変有難く感謝し、また、期待しているところである。
 障害者の通所授産の法人化要件として、

●人員を10人以上
●資産要件1,000万円
●土地建物は県市町村が設立したものや賃貸を認める

よう要望している。
 なお、管理運営主体とし、役員として県市町村議員の参加も必要だと考えている。今、障害者の雇用は大変厳しく、解雇された人の多くは通所授産施設に入ってきている。また、養護学校卒業者の受け皿にもなりつつある。法人化した通所授産施設のあり方として、障害者生活支援センターと障害者雇用支援センター併設の場として活動すべきだろうと考えている。
 幸い、労働省も平成11年度にこれをモデル的に行う計画がある。将来的には障害者活動拠点として、生活支援、雇用支援センターおよび障害者ボランティアセンターとして、地域障害者の生活福祉の向上を目指したい。

4 地域間格差

 地域間格差はないのが好ましいが、現実にはかなり格差がある。たとえば、小規模作業所の地方単独補助金(5人~10人のもの)は110万円~1,263万円の格差がある。地域の財政力により格差があることは認めざるを得ない。
 この格差をどのようにして縮めるのかは、今後、中央、地方の障害者団体に課せられた使命の一つである。

5 まとめ

 来年4月から始まる介護保険の問題もあり、まだまだ書きたい項目は多いが、次回にまわすことにしたい。
 障害者団体の当事者能力の向上と責任ある参画、発言が重要であることはもちろんだが、中央、地方障害者社会参加推進会議や、新障害者の十年推進会議(日身連、リハ協、全社協、日障協)が十分活動して、障害者が一般健常者と同じように社会生活できる福祉のまちづくりに邁進すべきだと思う。

(まつおさかえ 日本身体障害者団体連合会会長)