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滋賀
障害者オンブズパーソン交流集会の報告

佐野武和

 滋賀県の北部を「湖北」とよびます。冬は雪深く北陸路の出発点でもあります。今回民間の助成を得て、この地で障害当事者による障害当事者全体のための人権擁護活動=障害者オンブズパーソンの交流集会を去る3月6日(土)、滋賀県立文化産業会館において開催しました。全国自立生活センター協議会やDPI権利擁護センターの協力・支援のもと、身体・知的・精神の各障害当事者をパネリストに、障害者の置かれている現状や問題点が話し合われました。
 障害者の人権相談はこれまで人権擁護委員会、社協や行政機関のよろず相談、行政窓口が直接担ってきましたが、実はなかなか現実に機能してこなかった面があることは否めません。
 最近、障害者人権擁護の相談センターが設置され始め、相次いだ知的障害者への虐待事件が明るみに出て、厚生省の「人権110番」の事業補助や、法務省がすすめた「成年後見制度」の改正が行われるなど、障害者を取り巻く背景に当事者自身が強い関心をもっているとの報告がなされました。
 また、地域にある障害者の施設を対象に、第三者として調査や相談にあたるという趣旨の市民活動が注目をあびています。しかし、構成される委員やスタッフに障害当事者の割合が少ないので、当事者活動の充実とともにこれらに積極的に参加していこうとの意見が出されました。
 人権は市民社会の真ん中に存在するものであり、一部の専門家が担っていくものではないことは確かです。たしかに市民の側にも、実は差別に対する敏感な感覚が養われているようには思えないところがあります。そこで具体的に、障害当事者がその担い手になれないかという課題を、今後の実践の中で求めていこうという提起がありました。裁判や法律的な問題にはもちろん弁護士も必要です。専門的な学者にアドバイスを求めることも含めて、これまでにない当事者主体の人権擁護活動をセルフアドボケイト=障害者オンブズパーソンと称して、活動を実践し、交流していこうと確認し合いました。
 今回の交流集会では、具体的な人権侵害事件は取り上げられませんでしたが、滋賀サングループ事件の地元として被害者の会からも発言があり、遠く福島や四国の香川から障害当事者のかかわる「福祉オンブズマン」設立の報告がありました。
 特に施設に入居している参加者から、「施設をなくす方向での施設内人権はあり得ないのか」との強烈な問題提起もあり、会場では熱っぽい意見が飛びかっていました。
 今後は、できれば地方の自立生活センターが中心となって、1年に1回くらいは交流集会を持ちたいとの希望も出され、これからの課題となりました。
 地域におけるさまざまな活動と人権擁護活動は、連携していなければなりません。また各地の活動の特質や解決事例、問題点などに多くを学び合う当事者活動のネットワークも必要だと思います。そういう意味では、今回の交流集会はその小さな一歩といえます。約100人の参加者は各々の立場から、できる限りやさしいことばを使ってそれぞれの思いや実情を語り、障害当事者としての地域活動の役割と課題を感じることができたと思います。
 最後に、運営スタッフのほとんどとパネリストは、すべて障害当事者で開催された手作りの集会であったことも付け加えておきます。

(さのたけかず CIL湖北)