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アメリカ障害者事情

“車いすの大統領の像をメモリアルに”キャンペーン

樋口恵子

 去る6月にワシントンDCで開かれたNCIL(全米自立生活協議会)の年次総会に、日本から28人のツアーで参加しました。私にとってワシントンDCは、14年前に数か月住んだことのある思い出の土地で、会議の合間を有効に使って大切な人のお見舞いや親しい人との再会を実現しました。
 ワシントンDCにあるFDR(フランクリン・デラノ・ルーズベルト)メモリアルは、1997年5月1日にオープンしました。
 ルーズベルト前大統領は、39歳でポリオにかかり、それ以降歩くことができず、車いすを使用していました。大統領という強大な権力を用いて、米国民、そして世界の目から車いすを常用していることを巧妙に隠していた(『障害学への招待』明石書店より)のです。
 NOD(障害全国組織)のマイケル・デランド委員長は、その記念碑は車いすを使用しているルーズベルト前大統領として登場すべきだと要求しました。
 2年間にわたってFDRメモリアル委員会は、「障害者」団体からの要求に耳を傾けなかったのですが、97年5月1日の開会式前日に、前大統領の「障害」についての記述を加える法案が上院の満場一致で採択されました。クリントン大統領が法律にサインし、メモリアルの敷地のどこに、どのようにデザインするかといった諮問委員会がスタートしました。
 「車いすを使用しているルーズベルト前大統領を描き出すことによって、世間の人々は、「障害」をもつ人々がアメリカ合衆国大統領になれるということを知るだろうし、彼の「障害」に触れないことは、「障害」をもつ人々の限界について時代遅れのステレオタイプをそのままの形で守り続けることになる」と、前述のマイケル・デランドが寄付金の呼びかけのパンフレットで語っています。
 FDRメモリアルパークを視力障害の友人と訪ね、小さなキャスターのついた重厚な椅子に座っている姿の銅像を見てきました。壁に点字がモチーフとして描かれていて、私には新鮮でした。
 私たちだったら、ここまでできあがったものに対しブーイングはしても、新たな像をつくる法律の改正までできるのだろうか、いつもの「仕方ない」であきらめてしまいそうです。アメリカの障害者のパワフルさに改めて感心させられました。

(ひぐちけいこ 全国自立生活センター協議会)


寄付金の送付先は
Rendezvous with Destiny Campaign
C/o National Organization on Disability
910 16th Street,N.W.Suite 600
Washington,D.C.20006-2988