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平成12年度
障害保健福祉部関係予算案について

厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課

1 障害保健福祉施策の総合的検討

 西暦2000年という記念すべき節目の年、障害保健福祉行政は社会福祉構造改革、介護保険制度の実施、さらには地方分権の一層の推進、省庁再編などますます激動の時を迎えることとなります。
 そのような中、障害保健福祉施策全般の見直しについては、昨年9月に身体障害者、知的障害者及び障害児に係る福祉サービスに関し、措置制度から利用制度への変更、身体障害者生活訓練事業や知的障害者デイサービス事業等の法定化、知的障害者福祉に関する事務の市町村への委譲などを行うため、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法等を改正することについて、身体障害者福祉審議会及び中央児童福祉審議会から了承する旨の答申をいただきました。
 現在開かれている通常国会において、法案が成立するよう全力で準備を進めているところです。

2 障害者プランの推進

 平成12年度の障害保健福祉関係予算については、平成8年度よりスタートした「障害者プラン」を中心に、障害者の総合的な保健福祉サービスを整備するために必要な額が確保されています。
 障害者プラン関係予算としては、平成11年度第2次補正予算において、身体障害者デイサービスセンター等の在宅福祉関連施設並びに精神障害者生活訓練施設(援護寮)等の整備に必要な経費として、約48億円の予算を確保したところです。
 また、平成12年度予算においては、厚生省全体の予算の伸びが3.8%という厳しい財政状況であるのに対し、障害者プラン関係予算については、2767億円を計上し、対前年度伸び率は8.7%と大幅増の予算を確保したところです。障害者プランも後半にさしかかり、昨年暮れに策定された高齢者保健福祉施策の一層の充実を図るための「ゴールドプラン21」及び少子化に対応した総合的な子育て支援策である「新エンゼルプラン」とともに、厚生省としても強力に推進を図っていくこととしています。

3 介護保険法施行に伴う障害者施策の対応

 本年4月から介護保険制度が施行されることになっていますが、障害者についても、40歳以上の方は原則として介護保険の被保険者となり、65歳以上(特定疾病による場合は40歳以上)の方は、介護保険と共通する在宅介護サービスについて、介護保険給付としてサービスを受けていただくこととなります。円滑な制度実施に向けて適切な情報提供に努めるとともに、若年障害者については、介護保険給付と遜色のないサービスを提供できるよう、次のような予算を確保しております。

1.訪問介護(ホームヘルプサービス)事業

 ホームヘルプサービスについては、原則として介護保険と共通するサービスですので、65歳以上(特定疾病による場合には40歳以上)の障害者の方は、介護保険の保険給付としてサービスを受けることが基本となります。しかしながら、重度の脳性マヒ者等の全身性障害者や視聴覚障害者等については、社会生活の継続性を確保する観点から、介護保険では対応できない部分について、引き続き障害者施策から必要なサービスを受けることができるよう所要額を確保したところです。

2.訪問入浴サービスの実施

 デイサービス施設への通所が困難な重度の身体障害者に対する訪問入浴サービスを身体障害者デイサービス事業に追加して実施することとしています。

3.住宅改修費の導入

 在宅で生活する身体障害児(者)で、下肢、体幹機能等の障害により移動等が困難な方が段差解消や手すりの設置など比較的小規模な住環境の改善を行う場合に、これに要する経費の一部を補助することとしました。

4 精神障害者に対する支援強化

 精神保健福祉施策については、昨年6月、精神保健福祉法等の一部を改正する法律が公布され、精神障害者の人権に配慮した適正な医療の確保、緊急に入院が必要となる精神障害者の移送の法定化、保護者が負担する義務の軽減、精神障害者地域生活支援センターの法定化等について、本年4月から施行するとともに、平成14年4月からは精神障害者居宅生活支援事業等の実施を市町村において行うこととしています。

1.精神科救急医療システム整備事業の拡充

 精神障害者の緊急時における適切な医療及び保護の機会を確保するため、夜間や日曜、休日を含め、輪番制等により緊急時における保護・治療を行う救急医療体制を整備するため、平成7年度より精神障害者救急医療システム整備事業を実施してきたところです。平成12年度からは、今般の法改正により創設された移送制度の円滑かつ適正な実施に必要な経費を盛り込むこととしました。具体的には、搬送体制の確保、精神保健指定医や看護婦等移送従事者の確保、精神科救急情報センター機能の整備に必要な人件費等を新たに計上するとともに、本事業が全都道府県において実施できるよう実施か所数の増を図ったところです。

2.精神障害者社会復帰施設の運営費の充実

 精神障害者社会復帰施設については、近年における利用者の高齢化や単身化の進行、自立度の低下が顕著になるなど、施設を取り巻く状況が変化してきており、利用者の処遇等の充実を図る必要が出てきたところです。
 そのため、平成12年度予算において、精神障害者生活訓練施設(援護寮)、精神障害者授産施設(入所及び通所)の指導員及び事務員各1名ずつの増員を計画的に図ることとしたほか、今般の法改正により、新たに社会復帰施設として法定化された精神障害者地域生活支援センターに施設長を配置することとしております。
 また、施設運営の安定化を図る観点から、民間施設給与等改善費や業務手当等施設職員の処遇の改善等に必要な経費を運営費に算入し、施設運営の大幅な改善を図ることとしています。

3.精神保健福祉担当職員等特別研修事業の実施

 今般の法改正により精神保健福祉施策に係る関係機関の役割分担を見直し、平成14年度から精神障害者がより身近な地域で必要なサービスを利用できるよう、市町村において新たに次の事務を実施することとなりました。
●精神保健福祉手帳及び通院医療費公費負担の申請の受理
●精神障害者の福祉に関する相談
●精神障害者居宅生活支援事業の実施等
 そこで、事業の円滑な実施が図られるよう、市町村の精神保健福祉担当職員等を中心とした研修事業を実施することとしております。

5 その他、新規施策等主要事項

1.生活訓練、コミュニケーション手段の確保及び移動を支援するための事業の実施

 障害者が住み慣れた地域の中で自立し、積極的に社会に参加することは、非常に重要なことであり、従来よりその支援方策として市町村障害者社会参加促進事業並びに「障害者の明るいくらし」促進事業等により推進を図ってきたところです。
 平成12年度予算においては、「障害者の明るいくらし」促進事業の各メニューの中から、障害者が身近な地域で自立した生活を送るため最も重要と考えられる生活訓練、コミュニケーションの確保、移動の支援等の事業を別事業(障害者生活訓練・コミュニケーション支援等事業)として再整理し、さらなる推進を図ることとしています。また、事業の創設に併せて、盲導犬育成事業や手話通訳派遣事業の充実を図るほか、重度の視覚と聴覚の障害を併せもつ、いわゆる盲ろう者の社会参加を支援するため、通訳・介助員の派遣事業を全国10県程度で試行的に実施することとしております。

2.障害者スポーツの振興

 障害者スポーツについては、4年前に開催された「アトランタパラリンピック夏季競技大会」や、一昨年に冬季大会としてわが国で初めて開催された「長野パラリンピック冬季競技大会」における日本選手団の大活躍などで大きな盛り上がりをみせています。そのような中、障害者スポーツの振興を図るための基盤整備を進めるため、厚生省内に「障害者スポーツに関する懇談会」を設置し、さまざまな角度からの検討を行い、今後の障害者スポーツの方向性と取り組むべき課題についてとりまとめたところです。
 また、財政的支援としては、平成10・11年度の補正予算において「障害者スポーツ支援基金」の創設や障害者スポーツの施設及び種目別競技団体に対し、各種競技用車いす等の障害者スポーツ用具を貸与するための経費を計上するなど、その充実に努めてきています。
 平成12年度予算においては、昨年8月に財団法人日本身体障害者スポーツ協会が知的障害者等を含めた財団法人日本障害者スポーツ協会に改組するとともに、同協会内に競技スポーツを所管する日本パラリンピック委員会を設置したことから、それらを軸とした障害者スポーツ関係団体、指導者等の連携強化を図るための経費を確保したところです。

3.労働省との連携事業

 最近の雇用情勢の悪化に伴って障害者の就労促進策の充実が求められる一方、情報通信技術の発達に伴い、これらを活用した在宅就労の可能性が広がってきていることから、厚生省と労働省の連携事業として、重度の障害者がパソコン等の情報機器を活用して自宅等で仕事ができる可能性を高めるための「情報機器の活用による重度障害者の社会参加・就労支援連携モデル事業」を新たに全国10か所で実施することとしています。
 厚生省では、現行の身体障害者デイサービス事業または市町村障害者社会参加促進事業において、パソコン等を活用するための基礎訓練を行い、労働省では基礎技術を取得した方に、遠隔教育システムによる技術向上のための指導や実際の就労に役立つハイレベルな訓練指導を行うこととしています。
 また、11年度からスタートした障害者の生活支援と就業支援を一体的に行うための「障害者就業・生活支援の拠点づくり試行的事業」についても、実施か所数を10か所追加し、全国20か所で実施することとしています。

4.授産活動活性化特別対策事業の実施

 昨今における経済不況は、身体障害者や知的障害者等の授産施設に甚大な影響を及ぼし、受注量の減少や製品価格の下落等により授産活動に大きな支障が生じてきています。このことから、授産施設が安定的に運営され、利用者である障害者が安心して活動を続けることができるよう、都道府県が行う次のような事業に対し、補助を行うこととしております。
●授産施設活性化対策の策定
 授産施設関係者、企業関係者等により構成される授産活動活性化対策検討会を設置し、授産施設の現状及び課題等を踏まえた授産施設の活性化対策を策定する。
●授産活動活性化助成事業の実施
 前記の活性化対策に基づき、指定した社会福祉法人等において共同受注や常設展示販売の実施、企業等との技術提供による製品開発等を行う。

5.その他

 社会福祉施設等における職員給与の福祉職俸給表への対応、これまでおおむね5年に一度実施してきている知的障害児(者)基礎調査の実施、通所授産施設における障害種別を超えた相互利用の促進、短期入所(ショートステイ)事業(障害児・知的障害者)において、保護者が通院等により一時的に外出するような場合の日中における一時預かりの実施等を行うこととしています。
 なお、特別児童扶養手当並びに特別障害者手当の手当額については、自動物価スライド制となっており、11年の消費者物価指数は0.3%下落しましたが、特例措置として平成12年度の手当額は、前年度と同額とすることとしております。