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沖縄・伊江島から思うこと(2)

内藤喜和子

 福祉が神奈川より20年は遅れている沖縄での私の生活と島の人たちのかかわりについて書いてみたい。
 夫は菊栽培をしており、毎日20時間労働、2月に1日しか休めないほどの過酷な労働下にある。そのため、私たちは母子家庭状態だ。私も子どもが保育所に行っている朝8時から午後5時までは畑仕事をし、家事と育児と菊を手伝ってもらうアルバイトの人を含めた8人分の食事作りとで座る暇もないほどだ。今回、次男出産後もアルバイトの人がやめてしまったので、産後20日で畑に出ざるをえなくなった。神奈川で公務員生活をしていた頃とは比べものにならないようなハードな生活をしている。
 畑を手伝う私を見て、島の人たちは夫に「喜和子さんに畑までさせるのね。できるね、どうやってするね」と言っていたようだ。私自身も見えなくて農業ができるのか不安だったし、夫も手伝わなくていいと言っていた。しかし、できることがあれば手伝いたいので、できるか否かやらせてみてほしいと談判したところ、もちろんできないこともあるが、できることも多かった。また、母子家庭状態なので1人で何もかもする私に「カズ(夫)にやらせればいいのに、何でも1人でしてえらいさ」と言われていた。
 島には視覚障害者が5、6人おり、年をとってから中途失明した人が多いが、先天盲で治療院をしている四十代の女性もいる。しかし、彼女は全く外に出ず、用事は家族がしているようだ。だから島の人たちは実際に接したことがないので、障害者は何もできずに家にこもっていて家族の世話になっていると思っていたようだ。
 沖縄の方言には「ちむくくる」「ちむくりさ」など、ちむ(情け)の付く言葉が多いことでも分かるように、沖縄の人は情が厚い。他の人に分けずに1人で飲み食いしたり、台風の後片づけを自分だけしないような人をもっとも軽蔑する。障害者に対しても、毛嫌いしたり、乗り物でも席が空いているのに見て見ぬふりをする人はいない。
 沖縄は子どもや老人など弱い立場の人に優しい社会で、障害者にも優しい。しかし、実際に接したことがないので、優しさが「かわいそう」という哀れみになっているのだ。しかし、接しているうちに当然見方は変わってきていて、私も今では「かわいそう」と言われることはなくなった。

(ないとうきわこ 沖縄県自立生活センター・イルカ理事)