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社会復帰施設の立場から

谷中輝雄

 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律等の一部を改正する法律」が平成11年6月4日に公布されたところである。改正法の施行は平成12年4月1日である。この法改正の中で、居宅生活支援に関する事項については、平成14年4月1日の施行となっており、精神障害者の在宅福祉事業が市町村を中心に実施されることになった。
 いよいよ市町村が精神障害者の在宅生活支援を行う時代となったのである。
 具体的には、精神障害者居宅介護等事業(ホームヘルプサービス)及び精神障害者短期入所事業(ショートステイサービス)の2事業を、従来の精神障害者地域生活援助事業(グループホーム)とともに新たな在宅福祉事業に位置付けたものである。加えて地域生活支援センターを社会復帰施設として位置付け、市町村との連携により在宅福祉事業の要としての役割をもつことになったのである。
 さて、ここで精神障害者のノーマライゼーションについて概観してみよう。
 大きな柱は「障害者プラン(ノーマライゼーション7か年戦略)」であろう。平成8年から14年度までの7年間で達成すべき内容、数値を明らかにしたものである。この障害者プランは、ライフステージのすべての段階において全人間的復権をめざすリハビリテーションの理念と、障害者が障害のない人と同等に生活し、活動する社会をめざすノーマライゼーションの理念のもとに策定されたものである。この障害者プランの実施は、精神障害者を精神病院から社会復帰施設へという一つの流れをつくったものであり、今後社会復帰施設から地域社会への流れをつくっていくための施策として、在宅福祉事業の役割が登場したものだと考えてよいであろう。
 そこで、これからの精神保健福祉の充実のためにも、第2次障害者プランを作成することが必要となろう。第2次障害者プランの柱は、市町村の役割と地域における支援者の配置を含めた内容と数値目標を示したものでなければならない。
 時代は大きなうねりとなって動きだした。精神障害者にとって昭和の時代(精神衛生法)までは冬の時代であった。精神病院への収容中心の時代。平成になって精神保健法から精神保健福祉法へ変化し、在宅福祉事業が市町村中心となり、ようやく春の訪れを感じさせる時代となった。精神障害者のノーマライゼーションの実現化は、平成14年が実質的なスタートの年と考えてもよいであろう。
 それにしても、30万人の入院施設をもっているわが国が、精神障害者のノーマライゼーションを実施していると言えるであろうか。少なくとも精神病床を10万削減させる年次計画と併せて、地域における生活支援体制をつくり上げていくことがなければ本物とは言えない。
 平成14年をノーマライゼーションに向けたスタートの年にしたいものである。

(やなかてるお 全国精神障害者社会復帰施設協会理事長)