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列島縦断ネットワーキング

鹿児島
全国地域生活支援ネットワーク
かごしまフォーラム

 水流源彦

 “自分たちの地域にふさわしい町ぐるみで支え合うネットワーク“を作りあげることをめざして、「全国地域生活支援ネットワーク」(以下、ネットワークという)の輪が全国津々浦々に広がりつつあります。4月22日から23日にかけて開催された「全国地域生活支援ネットワーク かごしまフォーラム」は、その幾重にも広がる輪のひとつです。
 主催はネットワークであり、事務局のみを地元が担当するという形式で、開催にあたっては鹿児島県をはじめとした地元の多大なるバックアップをいただきました。
 会場が指宿市ということで、アクセス方法が限られていたにもかかわらず、九州・中国地方を中心に全国各地から250人近い参加があり、ネットワークに対する関心ならびに地域生活支援の取り組みが広がりをみせつつあることを強く感じました。

開催の経緯

 ネットワークでは、総会、セミナーを東京、神奈川で実施し、滋賀で行われているアメニティフォーラムにも共催という形でかかわっていますが、地方都市でのフォーラム開催を通して、その地域でのネットワークの形成をめざしています。
 ネットワークに参加しているメンバーの多くが、「顔の見えるサービス」「緊急対応が可能」「利用する側の安心感」等の共通するキーワードで、利用者を主体に置いたサービスを提供または準備していたり、利用していたり、仕組みづくりにかかわっています。当鹿児島でも生活支援サービス「くれぱす」が平成9年より活動を開始しています。鹿児島での独自のネットワークはいまだ形成されてはいませんが、この機会に準備を進めているところです。その手始めにこのフォーラムの開催が位置付けられたということになります。

ネットワークのめざすもの

 フォーラムは、シンポジウム、講演、鼎談(二つ)の形式で進められました。
 シンポジウムでは、ネットワークがこれからどういう戦略をもって活動をしようとしているのか、ネットワークの代表で「藤沢育成会」の根来正博さん、「相楽福祉会」の廣瀬明彦さん、「西宮市社会福祉協議会青葉園」の清水明彦さん、「全国宅老所連絡協議会事務局長」の池田昌弘さん、聞き手に鹿児島県保健福祉部長の矢島鉄也さんをお迎えしてお話いただきました。
 地域によって工夫を凝らしながら、非定型的なオーダーメイドとも言えるサービスが展開されていますが、地方分権の流れの中で、これらの拡充を地域ごとに働きかけていく必要性があるようです。その際、画一的にネットワークを広げるのではなく、地域にあったそれぞれの方法で形成していくこと、また、どんなに障害の重い人でも、なんとかして地域で暮らせるような支援を展開していくことこそが、地域生活支援であり、対象者の制約をせずに、本人を中心に置いた地域のネットワークで支えていくことをめざすべきではないか、というお話をいただきました。
 バラエティーに富んだメンバーで、もっと話を聞きたかったという声が聞かれるほどでした。また現実問題として、障害者、高齢者それぞれにかかわるメンバーの横のつながりが、想像以上に希薄であることについて、改めて認識させられる機会となった人も多いようでした。

今後の障害者福祉行政

福祉サービスの新しい利用制度とは

 社会福祉基礎構造改革に関連する八法が改正されることになりましたが、その中身について、基本となる考え方を中心に説明を受けようという趣旨で、厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課の遠藤浩課長にご講演いただきました。遠藤課長には、ネットワークの設立総会にも応援のごあいさつをいただきました。
 3月3日に国会提出、フォーラム前日(4月21日)に衆議院で審議に入ったばかりというタイムリーな時期に、今回は、「利用制度化」にスポットをあててお話いただきました。その中でも、利用者の立場に立った社会福祉制度であるべき点、利用者の自己決定、事業者との対等な関係を重視していくということを特に強調されていました。

ケアマネジャー・コーディネーター・生活支援ワーカーの関係性

エリアで果たすべき役割

 このセッションでは、「北信圏域障害者生活支援センター」の福岡寿さん、「東松山市社会福祉協議会ケアサポートいわはな」の曽根直樹さんに、東洋英和女学院大学教授の石渡和実さんが聞き手として、これからの障害福祉のキーワードとも言えるケアマネジメントについてお話いただきました。
 何かの事業であるかのように勘違いする人は多いようですが、あくまでも方法としてのケアマネジメントであること、地域における社会資源のありようで、ケアマネジャー、コーディネーターの役割は変わらざるを得ないということと、明確な位置付けをすることで、マニュアル化してしまうのではなく、利用者の生活の質を高めるにはどうしたらよいかということに対して、具体例を交え、とてもわかりやすい内容で、テンポの良いやりとりとなりました。

サービスの評価基準

日本における今後の福祉サービスの質の保障の展望

 このフォーラムの締めということで、サービスの評価基準について桃山学院大学教授の北野誠一さん、「サポートセンターぴっころ」の安井愛美さん、進行役に「しがらき会」の北岡賢剛さんにご登壇いただきました。
 北野さんは、厚生省福祉サービスの質に関する検討委員でもあり、カナダ・ブリティッシュコロンビア州における福祉サービスの質保証プログラム(RQAP)についての研究もされています。安井さんの「サービスをつかってもらわないとぴっころは生きていけない」というお話には会場の反響も大きかったようです。
 本当の意味で、利用者とサービス提供者側との対等な関係をめざすこと、サービスの質の向上に向けて、ヒントがたくさん散りばめられた内容でした。

おわりに

 「とてもよかった、刺激を受けた、元気になった、がんばるぞと思った、勇気をもらった」など全国各地から参加していただいた方方の、ネットワークに寄せる期待感がひしひしと伝わってくる感想を多くいただきました。その期待に応えるべく、また、各地域でのネットワーク形成に向けて、今後ともネットワークの活動は続いていきます。
 「全国地域生活支援サービスガイドブック」(1部2500円)が完成しました。関心のある方はご連絡ください。

(つるもとひこ ゆうかり学園)


〈問い合わせ〉

全国地域生活支援サービスガイドブック販売事務局
社会福祉法人 落穂会 ゆうかり学園内
TEL 099-243-0535
FAX 099-243-0520

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2000年7月号(第20巻 通巻228号)