街なか探検隊 Vol.25
奈良
庶民の息づく町「奈良」
竹内信人
奈良町
奈良と言えば東大寺・薬師寺・平城京など神社仏閣を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、この奈良町では、寺社のイメージよりも庶民の息づくまちであったことを思い出させてくれます。昔の町家や商家が建ち並ぶ街並みは、古都奈良の趣をそのまま今に伝えています。
「庚申(こうしん)さんの身代わり猿」というお守りがまるで道案内をしてくれているかのように軒下に下がり、一足ごとに望郷の世界にいざなってくれます。迷い込んだ路地の奥に、時が止まってしまったかのような懐かしさを感じさせてくれます。
奈良町はJR奈良駅から東へ行くと猿沢池があり、そこから南へ「ならまち振興館」までの細い路地が奈良町の中心部です。
奈良町の道は平たんで、比較的、車の通りも少なく、また資料館などの建物に入るのも段差がほとんどなく利用しやすいです。それと奈良市が管理するほとんどの建物には車いす用トイレが設置されています。
「庚申さんの身代わり猿」の言い伝え
この奈良町に伝わる生活民具や漆器、古書、いろいろな看板などが展示・紹介されている奈良町資料館があり、そこに「庚申さん」がまつられています。館内は段差が少しあり、スロープは設置されていますが、傾斜がきついです。
「庚申(こうしん)さんの身代わり猿」という赤いぬいぐるみのお守りがそれぞれの家の軒下にぶら下がっていますが、これは「庚申さん」のお使いの猿を型どったお守りで、魔除けを意味し、家の中に災難が入ってこないように吊るしているそうです。災いを代わりに受けてくれることから「身代わり猿」と呼ばれています。また、その猿の背中に願い事を書いて吊るすと願いが叶うと言われていて「願い猿」とも呼ばれています。
この「身代わり猿」は、奈良町資料館の別館である今昔工芸美術館で、今でも手作りで作られています。綿を詰める作業で綿ぼこりをなるべく吸わないように、冬も扇風機を回しながら作業しているそうです。
また館内では、江戸時代から明治にかけての珍しい商家の看板を保存し、その一部を展示しています。館内は入口付近が少し狭いものの、段差はほとんどありません。
山野草に包まれた喫茶店「野の花 黄花」
今回、私が奈良町を散策していて、一番注目したのが喫茶店「野の花 黄花」です。このお店はオープンして2年目を迎えたばかりの新しい形の喫茶店です。同店は和とも洋とも表現できる無国籍空間で、おしゃれな雰囲気です。
店内は山野草の鉢植販売・ギャラリー・アジア系雑貨の販売・喫茶(オープンカフェ)をやっていて、その奥にはオープンガーデンがあり山野草の管理をしています。
母親の佳子さんがオーナーで、ガーデンデザイナーの福村典子さんは同店の庭の設計からデザイン・管理をされて、依頼があれば個人の庭の設計・デザインの相談にものってくれるそうです。
典子さんの話では「以前から、買って帰った花のプラスチックの鉢をそのまま飾るのは味気ないので、自分が選んだ気の利いた鉢に植えて、持ち帰ってすぐに楽しんでもらえるように」「楚々としながら、一輪だけでも存在感のある山野草を買ってすぐ飾れるように」と思い、山野草の鉢植えを始めたそうです。
奥行き60メートル以上の空間を最大限に活かし、これから先「もっともっと花や木が育ち、ほんのりとした空間に包まれて喫茶を楽しんでもらえれば」と話していました。
ほかに山野草のガーデニングを学びたい人のために、典子さんが「黄花」で「野の花教室」を開いています。
障害者の人だけでなく、お年寄りや小さいお子さんをバギーで連れて来られる家族のためにも、入口から段差のない店を設計しました。のんびりとした心温まるアットホームな空間で、お茶や山野草を楽しんでみてはいかがでしょうか。
さいごに
奈良市内では今、2台のリフト付バスと2台のノンステップバスが市内循環の内回りを走っています。4台とも同じコースを走っているのは不自然です。せめて障害者・高齢者施設の多い地域に1台、市役所のある乗車率の多い地域に1台は走らせてほしいと願って活動しています。また、段差や階段の少ない街づくりに取り組んでほしいと、市や県とも積極的に交渉を行っています。
(たけうちのぶと 「フリーダム21(自立センター)」)
車いす利用の方でもっと詳しいことをお知りになりたい場合は、下記までお問い合わせください。
福祉作業所「フリーダム21(自立センター)」
住所 奈良市般若寺町285-2
TEL 0742-23-9064
Eメール f21@kcn.ne.jp
TEL
●奈良町資料館 0742-22-5509
●今昔工芸美術館 0742-22-5516
●野の花 黄花 0742-22-1139
●奈良市観光センター 0742-22-3900