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インターネットで投票のプライバシー保護を

 岩下恭士

 6月25日に行われた第42回衆議院選挙で、一番印象に残ったのはインターネットの威力だ。
 毎日インタラクティブを初め、各新聞社のHPでは選挙特集ページを設け、立候補者の経歴や各党の動き、リアルタイムの当選状況などを新聞紙面より詳しく報じた。
 毎日新聞社が発行する点字の週刊新聞「点字毎日」の編集に携わっていたころ、選挙になると必ず立候補者と当選者の一覧を載せていた。本紙の記事や選挙本部からいただいた資料を基に特集ページを作るわけだが、点字という物理的制約からほとんどエッセンスしか入らない。
 インターネットも音声ブラウザーもなかった当時、点字情報は貴重なものだったが、視覚障害者の点字識字率が1割に過ぎないと言う現実に直面して、点字メディアの限界を痛感した。
 当選者一覧は選挙翌日の朝刊を基に作る。パソコンでの点字入力、読み合わせ校正、製版、印刷、製本、発送という過程を経て、読者の手元に届くのは1週間後、とても新聞というには気が引けた。
 そんな情報過疎に置かれていた視覚障害者にとって、抜粋や要約でなく、晴眼者が見ているものと同じ情報に直接、しかも同時にアクセスして自分で情報を選択する自由を与えてくれたインターネットはまさに革命と言っていいだろう。
 そこでもう一歩進めて、重度の障害者や高齢者がインターネットを介して在宅で投票できる電子投票システムの導入を要望したい。
 視覚障害者の場合、現在どの選挙会場にも点字投票のための点字立候補者名簿と簡易点字筆記具が用意されており、点字による投票が認められている。しかし、点字の投票用紙は第三者が墨字に訳す必要があるため、プライバシーが侵害される恐れがある。特に居住地域内に点字投票者が1人などという場合は、いやでも投票の秘密が侵されかねない。しかも、点字を書けない視覚障害者の場合は代筆ということになるからなおさらである。
 電子投票の実現には、まず個人認証方式の確立が求められる。認証方式の決定に当たっては利用者の意見を十分取り入れ、障害者や高齢者などだれもが問題なく使えるユニバーサルデザインに適うものにしていただきたいと思う。

(いわしたやすし 毎日新聞社総合メディア事業局サイバー編集部)