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ハイテクばんざい!

DAISY CD録音図書
-みんなで使おうハイテク技術、便利に使えてこそ価値がある-

小林好彦

1 はじめに

 DAISYとは、(digital audiobased information system)の頭文字を並べたもので、録音図書(CD録音図書)を製作するためのフォーマットの呼び名です。このCD録音図書は、パソコンを使ってCDを作る技術と、CD再生機やパソコン再生用のアプリケーションソフトを用いてCDを聞く技術に分けて考えることができます。ここでは、再生機(PLEXTALKまたはⅤICTOR)でCD録音図書を聞く人の立場から、その素晴らしさを紹介したいと思います。
 私のように、カセットテープの録音図書に依存してきた中途失明者には、画期的な学習環境を提供してくれます。録音図書の中の移動が容易にできますし、1冊の本が1枚のCDに納まってしまいます。何よりも使うためのトレーニングが簡単にすむのは最高です。
 ここでは、DAISYフォーマットによって製作されたCD録音図書がどのような点で便利なのか、を使っている人の視点から紹介し、国立塩原視力障害センターのあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師養成課程で学ぶ100人あまりの中途失明の入所者に、どのように使う技術を提供してきたかについて紹介させていただきます。

2 ここが便利DAISYフォーマットのCD録音図書

(1)録音図書の中の移動が容易にできる

 ここでは、DAISYフォーマットによって製作されたCD録音図書(以下、CD図書という)を、再生専用機(PLEXTALKまたはⅤICTOR)で聞く環境について、カセットテープによる録音図書(以下、カセット図書という)と比較しながら話を進めたいと思います(PLEXTALKまたはⅤICTORの詳細については、最寄りの視覚障害者情報提供施設にお問い合わせください)。
 CD図書では、先頭や最後への移動、章と章の間の移動、節と節の間の移動、開きたいページへの移動が容易にできます。また重要なところに「しおり」をつけて、その間を移動することもできます。
 カセット図書では、第1巻の始めに録音されている目次と「勘」を頼りに探すのが一般的でした。トーンインデックスや一定時間のブランクなどが備えられている図書もありますが、キュー&レビュー機構を使って忍耐強く探す必要がありました。視覚障害者情報提供施設の貸し出し用に多く用いられている90分のカセットテープを、最後から先頭まで巻き戻すと、テープレコーダーの機種によって異なりますが、2分30秒から3分ほどかかります。
 CD図書では、録音時間が10時間程度のものでも数秒で最後から先頭へ移動することができます。ただし、章から章へ、節から節へ自在に移動する機能を使いこなすためには本の構造についての知識、本の解剖学の学習が必要です。

(2)速聞きができる

 CD図書は75%から300%の範囲で再生速度を調節することができます。カセットテープレコーダーにも再生速度を調節できる機種がありますが、速度を上げると再生音が高くなって、聞き取りにくくなります。さまざまな技術的な調節をしても200%が限界でした。CD図書は300%でもはっきり聞き取ることができます。収録時間9時間の小説も3時間で読み終えることができます。
 そんなに早く聞けるはずがないとおっしゃる方のために、少し聴読理論を説明しましょう。
 人の目は、1秒間に20から40文字を入力し処理することができると言われています。音声言語の代表であるNHKラジオニュースの速度は、1秒間に約5音節だそうです。どちらも感覚性言語中枢で処理されるわけですから、4倍速で再生しても脳で処理できる可能性があることになります。肩のこらない小説なら、3倍速でも十分聞けるという仲間が幾人もいます。

(3)1冊の本が1枚のCDに収録できる

 DAISYのフォーマットを用いると、1枚のCD-ROMに50時間余りの録音図書を収録することが可能だそうです。全国の視覚障害者情報提供施設から貸し出しが始まっている「厚生省委託DAISY録音図書変換委託事業」によって製作されたCD図書の中にも、1枚のCDに38時間もの録音図書を収録したものも含まれています。1冊の図書の録音時間を9時間とすると、90分のカセットテープなら6本になりますが、CDなら1枚で十分間に合います。収納スペースも少なくてすむことになります。

3 みんなで使おう

-塩原視力障害センターにおける取り組み-

 日本障害者リハビリテーション協会からPLEXTALK30台の貸与を受けた塩原視力障害センター録音室では、平成10年度末から11年度にかけて次のような取り組みを実施しました。
(1)プレクストークインストラクター(PTⅠ)の養成 
(2)ピアインストラクター(PI)の養成 
(3)入所者全員対象のPLEXTALK体験学習 
(4)入所者対象の個人貸し出し開始
 まず、教育職員全員(20人)を対象にPLEXTALKについての研修会を実施し、使い方の指導ができる教官の養成を行いました。
 次に、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師養成課程の各クラスから3人ずつの代表を選び、PLEXTALKの使い方を指導できる入所者を養成しました。クラスへのPR係も務めてもらうためです。
 その結果、教育職員、入所者(学生)の中に使い方の指導ができる人が何人か出てきて、PLEXTALKの存在が広く伝わったところで、ホームルームの時間などを使ってPLEXTALKに触れる体験学習をしてもらいました。このプログラムは、(1)のPTIと(2)のPIの協力を得て、チームティーチングの形式で実施しました。
 入所者全員がPLEXTALKの体験を終了したところで、厚生省委託DAISY録音図書変換事業の一環として貸与されたCD図書の個人貸し出しを開始しました。この時点から現在に至るまで、PLEXTALK使用技術のサポートやCD図書についてのカンファレンスは継続しています。

4 もっと便利になる使い方の提案

 視覚障害者、とくに中途失明者がCD図書の技術を使うことによって得られる大きな恩恵の一つは、録音問題による受験が認められているいくつかの資格試験ではないでしょうか。
 最も録音問題受験者の多いあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師国家試験はその代表的なものです。目的の問題番号への移動、難しい問題にしおりをつけておいて、後で検索して解答するようなことも簡単にできます。CDの録音問題を製作する時の階層デザインを研究することによって、視覚障害者がより受験しやすい録音問題の形を提案することができます。
 その他、録音問題で受験できる介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員などの試験でも、問題を考える時間に多少のゆとりができるのではないかと思います。

5 おわりに

 DAISYフォーマットによるCD図書は、便利で簡単に使える画期的な技術です。CD図書も、再生機PLEXTALKまたはⅤICTORも、あなたの利用している視覚障害者情報提供施設に備えられています。今すぐ問い合わせてみてください。

(こばやしよしひこ 国立塩原視力障害センター)