音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

列島縦断ネットワーキング

愛媛
第2回 障害者とテクノロジーの
シンポジウム in えひめ

 氏間和仁

 6月11日(日)に愛媛県松山市で、第2回障害者とテクノロジーのシンポジウムを開催しました。会場は松山市総合福祉センター大会議室で13時の開会でした。主催はBu.system(任意団体)、協賛はダイキ株式会社、後援は松山市社会福祉協議会と愛媛新聞社でした。Bu.systemは「障害者の活動と就労を支援する会」として昨年7月に発足しました。シンポジウムは、Bu.systemの理念を実現するための広報事業の一つとして昨年より行われています。
 今回のシンポジウムは「障害者の社会活動を支えるコンピュータネットワーク」と題して行われました。情報提供を行ったのは、真野浩さん(ルート株式会社代表取締役)、黒岩力さん(マイセルフネットワーク事務局長)、和田宰さん(第一養護学校整肢療護園分校教諭)、佐藤淳さん(FAシステムエンジニアリング株式会社)の4人でした。コーディネーターは愛媛大学工学部でBu.systemの代表でもある村田健史さんでした。
 真野さんは無線ネットワークを構築するための機械をつくる会社を経営しています。その経験や理念から地域ネットワークの重要性と、それを実現するための無線機器の重要性についてのお話がありました。特に過疎地でのネットワーク構築の事例などをおりまぜながら、地域ネットワークの発達が障害者の社会参加を促す一つの方法であることが改めて紹介されました。
 黒岩さんは高知でマイセルフネットワークという団体の代表をしています。この団体は、高知県の21プロジェクトの支援を受けて、障害者がパソコンを利用して就労できる場をつくっています。Bu.systemがめざすところを具現化されています。ただ、その過程ではさまざまな苦労があったようです。当初は会員の家へ出かけて行って、インターネットへの接続やメールの送受信など最低限のスキルを教えたそうです。現在は、商店街の一角を借りて年賀状作成やコンピュータ講習会などを行い、障害者の就労を実現されています。
 佐藤さんは脳性小児マヒで下肢が不自由です。その佐藤さんが一般の小中高校・大学を卒業して、現在の会社でプログラマーとして働くまでの体験談やそこで考えたこと、さらに現在の仕事について話されました。特に今の社長さんが佐藤さんを理解して雇用した経緯や、その後、佐藤さんのがんばりで徐々に会社の中での信用を得てきたことなどが報告され、「念ずれば花開く」を目の当たりにした気持ちでした。
 和田さんは養護学校で先生をしています。その中で実践していることを紹介していただきました。和田さんのコンセプトは「掃除機のような手軽さで」です。当日持参されたコンピュータを利用した教材はまさにそのとおりで、持ち運びの手軽さ、セッティングの容易さ、操作の簡便さのどれをとっても和田さんの信念が感じられました。そして実際に、子どもたちの障害の程度に応じた各種スイッチの工夫などの紹介があり、大変参考になりました。
 情報提供の後、会場の質問を受け付けながら討論が始まりました。その主な内容は、障害者が就労するための環境づくりや、就職をめざした教育のあり方、コンピュータやネットワークが障害者の就労を切り開くための課題など多方面に及びました。テーマが障害者とテクノロジーですから、当然、プログラマーへの道やテープリライターヘの道などの可能性についてもディスカッションが行われました。
 このシンポジウムは、企業による出展及びデモンストレーションも同時に行われました。協力いただいた企業は、日立製作所、富士通中部システムズ、ルート株式会社、高知システム開発、NECパーソナルC&C事業グループの5社でした。四国でこれだけの企業が集まってブースを設けた催しは、これまであまりなかったと思います。
 日立はMimehandを出展しました。Mimehandは手話のアニメーションを作成するソフトですが、新バージョンでは、いわゆる手話の文法に変換して入力しなくても、自然な日本語を入力すると手話文法に変換されてアニメーション化するようになっており、扱いやすそうでした。
 富士通はOutspokenを紹介しました。視覚障害者がWindowsを操作するときにその画面を読み上げてくれるソフトです。かなり細かな情報まで読み上げるようでした。またピンディスプレイへも出力できるようになっており、音声が使えない場所やユーザーにとっても便利なソフトであると思いました。
 レートは無線ルータを出展しました。地域のネットワークづくりも身近なものになってきていることを感じました。
 高知システム開発はマイワードを紹介しました。全盲のみならず弱視にも使いやすい機能が満載されていて、なかなかの商品だと思いました。
 NECはZoomText Ver.7.03とオペレートナビを紹介しました。ZoomTextはWindowsの画面をさまざまな方法で拡大するソフトです。弱視は見え方に個人差がありますが、さまざまな拡大形式が選べて汎用性が高い画面拡大ソフトでした。オペレートナビは高機能のランチャーとオンスクリーンキーボードが合わさったような肢体不自由者の支援ソフトです。各社とも会場からの質問にも快く応じていただき、有意義なデモンストレーションになりました。
 今回は、昨年と違い大きな会場で開催しましたが、参加者が少なかったのが残念でした。来年はさらに広報活動に力を入れ、多くの参加者と情報を共有し意見を交換し、本会の理想とする社会を実現させていきたいと思いました。

(うじまかずひと 愛媛県立松山盲学校教諭)