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1000字提言

途中下車ができる日はいつ?

吉浦美和

 私が所属している「電車に乗るぞ障害者の会(のるぞ会)」は1987(昭和62)年10月に、数人の障害をもつ友人たちで結成した。西鉄福岡駅(福岡県内を南北に縦断する西日本鉄道の始発着駅で、地下鉄、バスに通じる大規模ターミナル)が新築移転されるという報道を読み、「今度の駅は楽だといいねえ」この気持ちだけで続けてきた。
 西鉄への話し合い申し込みの最初のお断りを皮切りに、内容証明郵便の送付、勉強会、シンポジウム、ビラまき、デモ行進、署名集め、話し合いとお決まりの交渉コースをたどり、3年ほどでだれもが使いやすいエレベーターやトイレのある福岡駅が約束され、1998(平成8)年、実現を見た。西鉄は他の駅でも大規模改修工事に伴う所では改善努力がなされた。
 福岡県内の公共交通の大半は、JR九州と西日本鉄道と福岡市営地下鉄である。バスはほとんどが西鉄の独占と言ってよい。のるぞ会では三者を相手に『西に改築の話があれば飛んで行き、東に市民運動団体があれば行って署名を頼み、地元の市会議員、県会議員、行政担当者にお近付きになり、なにより大切マスコミ対策』といった運動を続けてきた。振り返ると、よくも続いていると思う。しかし「いつかこういう個別の運動をしなくてもよくなりたい」と考えていた。
 福岡市営地下鉄は公営なので自治省管轄であり、わりと早く公共交通の円滑な利用のための工事費用捻出の起債事業が認められた。エレベーターのない駅にエレベーターを設置する事業が平成5年から着手された。その年からのるぞ会では「もう地下鉄はほっといてもいいね」ということになった。それから7年間で16もの駅が改善された。工事中の地下鉄3号線は計画段階から16駅すべてがエレベーター付きで、ホームゲートもあり、平成17年開通予定である。
 「途中下車 やってみたいな 車いす」
 「途中下車 できない待たせる 身のつらさ」
 これは、数年前まで募集していた地下鉄川柳に応募しようと思った句である。でも地下鉄については、全駅にエレベーターが付いて川柳自体が意味をなさなくなってしまった。
 しかし、JRも西鉄もバスもまだまだだから、既存施設の改善が法的に決まるまでは、運動は続く。

(よしうらみわ 電車に乗るぞ障害者の会副代表)