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おかやま脳外傷友の会・モモ

清水正紀

会設立の経緯

 平成13年7月1日に設立した「おかやま脳外傷友の会・モモ」は、ようやく歩み始めたばかりの中国、四国地方では、初めての友の会です。

 友の会を作りたいと思ったのは、息子が交通事故で脳外傷者となったことでした。事故によって多くの障害をもつことについては、時間の経過とともに受け止めることができるでしょうが、障害の中でも高次脳機能障害について医療、福祉の現場でよく理解されていないこと、脳外傷が医療と福祉の谷間に置かれた障害であるという現実を知り、若い息子の将来に対する大きな不安が募るばかりでした。そんな中、昨年4月「日本脳外傷友の会」の発足を新聞報道で知り、いつの日か岡山県にも友の会を作りたいと思い続けてきました。
 今年2月、2家族が地元新聞社の取材を受け、高次脳機能障害への理解と友の会参加への呼びかけの記事を掲載してもらいました。3月には設立準備委員会を立ち上げ、新聞やテレビの報道をはじめとして、福祉の窓口へのFAX攻勢などを通じて当事者家族からの電話連絡が相次ぎました。反響が大きく、7月1日の設立総会には、当事者家族、医療、福祉関係者および学識経験者など130人以上の参加がありました。友の会・モモは、当事者家族30家族、賛助会員27人で出発することになりました。

活動内容

 会の活動の目的は、会員相互の交流によって情報を交換し、共に支え合い、家族と社会での問題解決の道を探すことです。さらには脳外傷リハビリテーションの開発普及を求めること、社会的不利を改善するための啓発活動、脳外傷発生の予防も視野に入れて活動します。
 この目的の実現のため、次のような活動を行うことにしています。
・会報の発行(年4回)
・交流会の開催
・講演会、学習会の開催
・「日本脳外傷友の会」に加盟し、国や県の行政関係機関への働きかけ
・当事者を元気にさせ、社会復帰への意欲をもたせる当事者活動
 友の会設立を通じての大きな成果は、来年度から高次脳機能障害支援モデル事業に岡山県として参画するという県知事の答弁を県議会において引き出すことができたことです。これからは設立間もない、友の会・モモにも新たな活動を導き、よい成果をあげられるように取り組んでいきたいと考えています。

課題と今後の展望

1.会の運営拠点の確保

 現在は会長宅を事務局として会の運営を行っています。今後は、会の運営拠点と気軽に集まれる場所(事務局兼作業所)およびボランティアの確保が当面の課題ですが、社会福祉施設などを利用して月1回程度当事者、家族が集まることから始めたいと思っています。

2.孤立している当事者家族への呼びかけ

 当事者および家族の中には、高次脳機能障害という言葉さえ知らない(知らされない)まま苦悩と困惑の中で孤立している人たちが、まだ多く存在すると考えています。この人たちを掘り起こす努力を続けます。

3.脳外傷による高次脳機能障害の認知度の向上

 家族さえ理解することが難しい高次脳機能障害を一般社会に理解してもらうには地道な努力と時間が必要です。医療、福祉関係への会報の配布、報道機関を利用した広報などを通じて、理解を得るための地道な広報活動および「見えない障害」を見える形にするため、テレビ局への取材要望、ビデオ作成配布を積極的に行っていきます。

4.専門家養成への啓発活動

 脳外傷による高次脳機能障害に関する専門家を身近に見つけることは大変難しい現状にあります。私たちが専門家を育てるという気持ちで、社会資源の積極的な利用に努め、ひいては多くの当事者の存在が専門家を育てることにつながると思っています。

5.国への働きかけ

 日本脳外傷友の会に加盟し、組織として現行制度の改善などを求めていきます。国の取り組みである高次脳機能障害支援モデル事業は今年度から始まったばかりですが、当面は本モデル事業の成果が現行制度の改善および脳外傷者の総合的なリハビリテーションの研究開発と長期的なケア体制の充実につながることを願い、最大の関心を持って見守っていきたいと思っています。
 将来的には、脳外傷専門の研究機関の設置と救命救急医療の段階から脳外傷者を継続的に把握できる脳外傷登録の制度化など脳外傷先進国の施策について勉強し、わが国に適用できるものについては積極的に取り入れるよう訴えていきたいと思っています。

最後に

 私自身、家族に脳外傷者を持つことになって、初めて勉強することばかりです。学ぶ範囲は極めて広範囲にわたり、当事者家族だけの活動では限界があります。ぜひ、医療、福祉の専門家、学識経験者など多くの方々の知識と経験を教えていただき、会員相互の資質の向上に努めたいと考えています。そして他の障害者団体との連携は、友の会の活動を有意義なものとするうえで欠かせないものとして、積極的に連携を図っていくつもりです。
 何よりも脳外傷者の理解者を増やし、協力者のネットワーク作りに取り組みたいと考えています。
 すべては、これからです。

(しみずまさのり おかやま脳外傷友の会・モモ会長)