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できることから始めよう

福原誠二

 昨年の夏に、知人の5歳の男の子が横断歩道で信号無視のトラックに跳ねられ頚髄損傷の重傷を負いました。自立呼吸もできない危険な状態が続きましたが、母子の頑張りで命だけは取り留めました。今の皆の願いは、その子が早く元通りの元気な体に戻ることです。
 しかし現実は厳しく、いまだに人工呼吸器を外せない状態にあり、しかも受け入れの病院からは時期が来ると転院するように言われています。また、幼い子どもということでリハビリも十分に受けられない状態です。
 家族の方の苦労も想像を絶するものでお母さんは事故の日以来、1日も欠かさず看病に付いています。今は両親が交代で毎日付き添っています。小さな弟は両家の祖父母が交代で面倒を見ています。また予測もしないことがいくつも発生し、そのたびに命の縮まる思いをされているとのことです。そしてこの状態が一体いつまで続くのか、この子の将来はどうなるのかなど、果てしない不安が家族全員を常に襲っています。
 母親は、今後の医学の進歩でこの子が必ず治ることを信じ、それまでは少しでも健常の子どもと同じ環境で過ごせるように願っています。そのためには多くの人の協力が必要と考えて周囲の人にお願いしたところ、通っていた幼稚園の先生や父母が中心となり70人以上のボランティアの会ができました。私もその会の1人ですが、何ができるかは分からないけれども何か役に立てればという思いで、多くの方が集まってくれたのです。
 はじめに何ができるかをいろいろと検討しましたが、結局はできることからやろうということになりました。お見舞いに行ったり、お母さんや男の子の話し相手になることが、今は立派なボランティア活動になっています。現在はホームページを情報の交換場所にして取り組みを発展させています(http://www.canvass-net.com/seiya/)。まだまだ力不足ですが、必ず本当に役に立つときが来ると信じています。
 今回のことでボランティアは「何ができるのか?」ではなくて「今できることをする」ということが大切だと改めて気が付かされました。ボランティア活動を特別なことと考えずに、力を抜いて、毎日の身近な生活の一部と考えることが必要だと思います。そして身を持って参加することが大切だと思います。そうすればそこから多くのことを学べ実践でき、経験として自分のものになり、「何ができるか?」が分かるからです。
 「参加すること」は「知ること」の第一歩になるはずです。これからもこの気持ちを忘れずに活動していきたいと思います。

(ふくはらせいじ 株式会社カンバス)