フォーラム2002
支援費制度の準備状況について
厚生労働省障害保健福祉部支援費制度施行準備室
■はじめに
障害者福祉施策に係る支援費制度の施行まで、いよいよあと1年ばかりとなりました。
本稿では、支援費制度の準備状況の説明として、支援費制度担当課長会議や審議会(社会保障審議会障害者部会の身体障害・知的障害分会)等においてお示しした内容を紹介します。
■障害程度区分について
障害程度区分は、重度の障害者に対するサービスが適切に行われるよう、施設訓練等支援費の額について、障害の程度に係る区分に応じた差異を設けるためのものです。
このため、障害程度区分は、施設支援を受ける際の、障害の状況に基づいて生じる支援の必要性と困難性を考慮して区分すべきものであり、その内容は各施設支援の種類によって異なることにかんがみ、施設支援の種類ごとに設定することとしています。
障害程度区分の数については、障害程度区分を簡素で合理的なものとする必要がある一方で、各障害者に係る支援の必要性の度合いは重度とそれ以外で明確に区別できるものではないため、各施設支援とも3区分とすることを考えています。
現段階における具体的な障害程度区分のイメージは次のとおりです。
1.まず、障害程度区分を決定するためのチェック項目(表1参照)を施設支援ごとに設定し、これらについて、主に支援の必要性の度合いについて、市町村が聴き取り調査を行います。
2.この際の各チェック項目は、支援費の必要性の度合いに幅があることを考慮して、3段階で評価することとし、支援の態様や支援を要する頻度等による選択肢を設定します。
3.各項目に係る選択肢に支援の必要性の大きい順に2点、1点、0点を与えたときの合計点数と障害程度区分(3区分)との対応関係を各施設支援ごとに設定することにしています(表2参照)。
表1 障害程度区分に係るチェック項目(知的障害者更生施設支援(入所)の例)
ア 起床、就寝の働きかけ イ 洗面・歯磨き等の整容に関する支援 ウ 衣服の着脱の介助 エ 屋内・屋外移動に関する介助 オ 食事の準備から摂食、後片付けまでの支援 カ 排せつ行為に関する支援 キ 入浴の介助または入浴中の見守り等の支援 ク 医療処置や受診等に係る援助 ケ 医師等の診断結果や説明の理解に関する支援 コ 健康管理(健康チェック、軽度褥瘡や肥満の予防等)に関する支援 サ 自ら身体や衣服の清潔を保持することへの支援 シ 金銭管理に関する支援 ス 衣類や身の回り品等の管理に関する支援 セ 外出、買い物等に関する支援 ソ 強いこだわり、多動、パニック等の不安定な行動への対応 タ 睡眠障害や食事・排泄に係る不適応行動への対応 チ 自傷行為や他人・物に対する粗暴な行為への対応 ツ 集団生活や人間関係等に関する問題への対応 テ 日常生活における不安や悩み等に関する相談援助 ト 余暇活動や地域の活動等への参加に関する支援 ナ 訓練に対する動機づけ及び内容の理解に関する支援 ニ 地域・在宅生活に必要な生活関連行為(清掃、洗濯、調理等)を習得するための支援 ヌ 各々の障害に応じたコミュニケーション手段による支援やコミュニケーション訓練 ネ 代筆や電話の仲立ち等に関する支援 ノ 就労・社会復帰に向けた生活支援の体制づくり等に関する支援 |
表2 障害程度区分の決定方法のイメージ(知的障害者更生施設支援(入所)の例)
1.下表のアからノまでの各項目について、(ア)~(ウ)列に示した選択肢のうち、あてはまるものにチェックを行う。
2.各項目について表の(ア)列にあてはまる場合には2点、(イ)列にあてはまる場合には1点を与え、その合計点数が◎点以上であれば区分A、△点以上▲点以下であれば区分B、□点以下であれば区分Cとする。 |
なお、各選択肢の具体的な判断基準については、解説を作成することとしています。
また、支給決定の際の勘案事項や支給期間については、昨年8月の全国会議において示された内容のとおりとしています(表3参照)。
表3 支給決定の際の勘案事項、支給期間について
(1)支給決定の際の勘案事項について 支援費の支給決定については、法律上、厚生労働省令で定める事項を勘案して、その要否等を決定することとなるが、居宅生活支援費であれば支給量と支給期間を、施設訓練等支援費であれば障害程度区分と支給期間を定めることとしている。 厚生労働省令で定める勘案事項としては、以下のものを予定している。 1.障害の種類及び程度その他の心身の状況 2.介護を行う者の状況(※1) 3.居宅生活支援費の受給の状況 4.施設訓練等支援費の受給の状況 5.居宅支援及び施設支援以外の保健医療サービスまたは福祉サービス等の利用の状況 6.利用意向の具体的内容 7.置かれている環境 8.指定居宅(施設)支援の提供体制の整備の状況(※2) ※1 介護を行う者がいる場合に支援費の支給を行わないという趣旨ではない。 ※2 サービスの基盤整備は重要な課題であり、支援費制度導入の趣旨を勘案し、都道府県、市町村はニーズを踏まえた基盤整備に向けてより一層取り組む必要がある。 (2)支給期間について 支援費を支給する期間については、障害の程度や介護を行う者の状況等の支援費の支給決定を行った際に勘案した事項が変化することがあるため、市町村が障害者の状況を的確に把握し、提供されているサービスの適合性を確認するとともに、障害程度区分または支給量について見直しを行うため、厚生労働省令で定める期間を超えない範囲で市町村が定めるものである。 省令で定める期間(案)
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■指定基準・最低基準について
支援費支給の対象となるのは、支給決定を受けた利用者が都道府県知事等の指定を受けた事業者・施設(指定事業者以外の者で、指定基準のうち一定の事項を満たす基準該当居宅支援事業者を含む)から支給決定に係るサービスを受けた場合となります。
このため、指定基準は、支援費制度において対象となるサービス提供主体の範囲を特定するものと言えます。
指定基準は、ホームヘルプ事業等の居宅サービスについては、現行の事業運営要綱を、施設については、現行の最低基準を基に設定することを基本としていますが、具体的には、以下のとおりです(表4参照)。
表4 事業者の指定基準の概要(身体障害者居宅介護の例)
1.基本方針指定居宅支援に該当する身体障害者居宅介護の事業は、利用者が居宅において日常生活を営むことができるよう、当該利用者の身体その他の状況及びその置かれている環境に応じて、入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯及び掃除等の家事、生活等における相談及び助言並びに外出時における介護その他の生活全般にわたる援助を適切に行うものでなければならない。2.人員に関する基準従業者の員数・事業所ごとに置くべき従業者の員数は、常勤換算方法で2.5人以上。 ・事業の規模に応じ、1人以上の常勤のサービス提供責任者を配置。 常勤の管理者の設置(兼務可) 3.設備に関する基準事業運営に必要な広さを有する区画及び必要な設備・備品等を備える。4.運営に関する基準内容及び手続きの説明、契約支給量の市町村への報告、正当な理由のないサービス提供拒否の禁止、市町村等が行うあっせん・調整、要請に対する協力、指定居宅介護の取扱方針、利用者負担額等の受領、居宅介護計画の作成、同居家族に対するサービス提供の禁止、事業者が定めるべき事業の運営についての重要事項(運営規程)、守秘義務、苦情解決、会計の区分等について規定。5.基準該当居宅支援に関する基準従業者の員数・事業所ごとに置くべき従業者の員数は、3人以上。(離島等の場合は1人以上。) ・1人以上のサービス提供責任者を配置。 管理者の設置(兼務可) 設備に関する基準 事業運営に必要な広さを有する区画及び必要な設備・備品等を備える。 同居家族に対するサービス提供の特例 運営に関する基準 指定事業者に準ずる(一部適用除外) |
1.人員に関する基準
人員に関する基準として、各サービスごとに必要となる職種、員数等について基準を定めることとなりますが、居宅サービスについては、現行の居宅生活支援事業の各運営要綱を、また、施設については、これまでの最低基準及び措置費上必要な員数として示してきたものを基本とします。その際、置くべき職種と員数については、効率的な運営や経営の弾力化が図られるようにするため、直接処遇職員全体として必要な数が常勤換算方法で算定できるようにすることとしています。なお、施設については、重度者に適切な対応を図るために必要な従業員の配置を求めることとしていますが、その具体的な指針については今後お示しします。
2.設備に関する基準
基本的には、現行の運営要綱、最低基準等を基に必要な検討を加え設定します。
なお、施設の設備については、これまでの重度施設の施設類型の廃止に伴い、重度の入所者に配慮する必要がある等の理由により、入所者一人当たりの床面積を収納設備等を除き3.3平方メートル以上から、6.6平方メートルに拡大(身体障害者更生施設、身体障害者授産施設、知的障害者更生施設、知的障害者授産施設及び知的障害者通勤寮の場合。身体障害者療護施設は、6.6から9.9平方メートルに拡大)するとともに、身体障害者更生施設、身体障害者授産施設の廊下幅を、1.8メートル以上から2.2メートル以上に拡幅する予定です(なお、既存の施設等については一定の経過措置を設けることにしています)。
3.運営に関する基準
運営基準は、利用者と事業者の関係、事業者と市町村・都道府県との関係で必要となる事項について規定することになります。具体的には、利用者へのサービス提供に当たって事業者が書面を交付して説明すべき事項、正当な理由のないサービス提供の拒否の禁止(いわゆる「応諾義務」)、利用者の受給資格の確認、支援費支給申請に係る援助、利用者負担額の受領、支援計画等の作成、守秘義務、苦情解決、各種記録の作成、市町村への通知等について基準を設けます。
なお、現行の施設の最低基準については、指定基準で規定した直接支援に係る人員、設備及び運営に関する基準の中で支援費制度特有の部分(重要事項に関する書面交付や領収書の交付など)を除いた事項を反映させることにより、最低基準上の担保が図れるよう見直すこととしています(図1参照)。
図1 指定基準と最低基準との関係
![]() (解説) 指定基準においては、指定施設として必要な直接支援に係る人員、設備及び運営に関する基準を規定するとともに、支援費制度の下で施設の運営に必要な事項を規定するものである。その他の人員、設備基準の内容については、指定基準と最低基準で基本的に同様の取り扱いとなる。 |
■市町村の事務処理について
障害程度区分、指定基準と併せ、市町村の事務について、居宅生活支援費の支給量管理の方法等の審査支払い事務の流れも示しています。また、大都市等の市町村が、支援費の請求から支払いまでの事務を電算処理する場合、そのシステムのうち、全国的に統一された取扱いが望ましい事項については、システム開発事業者団体の協力を得て、国においてその取扱いを示すこととしています。
■今後の予定
今後、速やかに関係政省令を公布するとともに、具体的な市町村等の事務処理の方法を説明した市町村等事務処理要領を提示することとしています。また、支援費基準、利用者負担については、今年の概算要求時を目途に、その骨格を提示する予定となっています。
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年5月号(第22巻 通巻250号)