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みんなのスポーツ 第2回

だれでも楽しめるスポーツ、ボッチャ

佐竹隆子

1 ボッチャについて

 ボッチャは、子どもから高齢者まで楽しめるレクリエーションスポーツとして南ヨーロッパで生まれました。学校・スポーツクラブ・病院・老人ホーム等で幅広い年齢層で行われているスポーツです。
 また、障害者スポーツでは、「重度脳性マヒ者の競技スポーツ」として1988年パラリンピックソウル大会で公開競技となり、パラリンピックバルセロナ大会から、正式種目として採用されています。
 ルールは、とても簡単です。まず、赤・青の2チーム(1対1~3対3)に分かれ、最初に投げた目標球めがけて、自分のボールを6球投げます。そして、相手チームが投げたボールより目標球に近くに、できるだけたくさんのボールを投げることで得点を競います。
 ゲームは、ペタンクやローンボールと似ていますが、ボッチャのボールは、皮を手縫いで丸くしているので、完全な円球になっていないのが特徴です。そのためボールを投げた時にまっすぐ転がらないところが、このスポーツの面白く、また難しいところです。

2 国内における普及

 日本では、10年以上前に「どなたでも楽しめるレクリエーションスポーツ」として、片マヒ者を中心に障害者スポーツセンターで紹介されました。その後、1997年に千葉県で日本ボッチャ協会が発足し、重度障害者を対象とした競技会が開催され、現在では日本の選手も世界大会に数多く参加しています。
 今まで、重度の脳性マヒ者が参加できる競技スポーツは乏しかったのが現状でした。しかし、ボッチャがパラリンピックの正式種目に採用されたことにより、世界の大会へ出場できるという目標が生まれたことは、大変素晴らしいことと言えるでしょう。

3 競技スポーツとしてのボッチャ

 競技スポーツのボッチャの対象者は、重度の脳性マヒ者で、障害の程度によって3クラスに分けられます。一番障害の重いクラスは電動車いすレベルで、自分でボールが投げられない方が対象です。このクラスの選手は、ランプスと呼ばれる、すべり台のような形状の補助具を投球時に使用します。そして、競技中の選手の介助を行うサポーターと二人一組で参加するのが特徴です。ランプスは、塩化ビニール管や木を材料に、選手が製作したさまざまな形状のものが使われていました。現在は、日本ボッチャ協会で製品化され、販売されていますが、大半の選手は、障害の程度や自分の競技スタイルに合わせ、さらに改良を加えています。
 競技の方法は、選手が、身振りや顔、目の動きで指示を出し、サポーターが正確にそれを読み取り、ランプスの方向や高さを操作します。正式の試合は、競技中、サポーターがコートを見ることは許されないことや、制限時間内ですべてのボールを投げ終えなければならない等の厳しいルールに従って行われます。
 反則をした場合、ペナルティーが与えられるため、選手は自分の指示を正確に伝え、サポーターはそれを理解するといった、お互いのコミュニケーションの取り方が大切です。
 また、食事や排せつ、更衣といった生活面の介助が必要な選手は、試合に臨むまでの体調を管理する介助も必要な場合があります。
 このようにサポーターの役割は重要ですが、選手とともに、ボッチャの練習や試合に時間を重ねることができる人材をみつけることは大変難しいのが現状です。

4 横浜ラポールにおけるボッチャ

 障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール(以下、ラポールとする)では、公式ルールを少し変更した「レクリエーションボッチャ」の指導、普及を行っています。公式のルールは、重度脳性マヒ者の競技用規則なので、たとえば、時間制限内に6球のボールをすべて投げ終わることや、反則にはペナルティーが与えられるなど厳しいルールになっています。そこで「レクリエーションボッチャ」は、反則の数を減らし、ペナルティーをなくし、初心者の方や脳性マヒ者以外の障害者でも参加しやすいルールにしました。
 ラポールでは、3年前より毎週土曜日「ボッチャの時間&リーグ」として、レクリエーションボッチャの紹介を行っています。毎回30人近くの参加者が集まり、大変人気があります。愛好者の8割近くは、肢体不自由者(主に脳血管障害の後遺症による片マヒ者)で、次いで脳性マヒ者、知的障害者、健常者の方も一緒に参加しています。
 また、愛好者が日頃の練習の成果を発揮する場として、年に3回の大会とボッチャ投球テストを開催しています。ボッチャ投球テストは、レベルごとにコート内の決められたエリア(新聞紙一面の大きさ)やコースにボールを投球するといった課題を設定しており、基本的な投球フォームの獲得と投球技術の向上をめざしています。
 初級は基本的な投球フォーム、中級は投球のテクニックの向上、上級は競技会出場をめざすレベルに設定しています。なお、初級テストの合格者は、ラポール主催のボッチャ競技会の出場資格を与え、愛好者の競技意識を高めています。
 ボッチャの競技会は、主に重度障害者を対象とする日本ボッチャ協会主催の日本ボッチャ選手権大会があります。しかし、重度障害者以外の愛好者が参加できる大会や競技会は少ないのが現状です。ラポールでは、今年3月、脳血管障害の後遺症による片マヒ者(110人)を対象に、横浜では初めての競技会を開催しました。今後は、初心者の方が参加しやすく、参加者同士の交流を深めるレクリエーション型と、競技志向型のように大会の主旨を分けて開催し、幅広い対象者にボッチャを楽しんでいただきたいと思います。

5 地域における展開

 ラポールでは、横浜市内の各地で障害者のスポーツ環境を整備する、という地域支援事業を行っています。
 具体的には、地域のスポーツセンターなどで、障害者向けのスポーツ教室や大会を開催していますが、地域の特徴として、さまざまな障害の方がいらっしゃるということがあります。
 ボッチャはこれまで述べてきたような理由で、大変多くの方々が楽しめる利点から、地域で行う種目として最適と言えます。実際、過去2年間の地域における普及の結果、ボッチャの愛好者は300人を超え、今後ますます増えていくと思われます。
 さて、地域での普及では、実施場所の確保・対象者への周知など、多くの課題がありますが、中でもボッチャに精通しているボランティアスタッフの育成が重要なポイントです。ラポールでは、レクリエーションボッチャのルールや審判方法を盛り込んだ研修会を開催し、スタッフの育成を行っています。現在では、140人のスタッフが、ラポール主催の大会や地域のボッチャ活動の支援に協力をいただいております。

6 おわりに

 以上述べてきたように、ボッチャは、障害を問わず、年齢や性別に関係なく、どなたでも一緒に参加できます。今後は「障害者のスポーツ」ではなく、レクリエーションスポーツとして一般の方に普及できないかと考えています。そして、ボッチャを通じて障害者と一般の方が交流を図ることで「障害者のスポーツ」への理解を求めていきたいと思っています。

(さたけたかこ 障害者スポーツ文化センター横浜ラポールスポーツ課)