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第3次「障害者基本計画」に思う
―地域生活支援の具現化を―

板山賢治

 わが国の障害者に関する基本的計画は、次のような推移をたどっており、今次計画は、「第3次計画」ということができよう。
 1982年から1991年の「障害者対策に関する長期計画」は、前年の「国際障害者年」を受けての計画で「国連・障害者の十年行動計画」に1年先行・策定されたものである。
 1993年から2002年の「障害者対策に関する新長期計画」は、「アジア・太平洋障害者の十年」(1993~2002)にも対応するものであった。なお、この計画は、「障害者基本法」(1993年12月公布)の制定により法定の「障害者基本計画」となった。また、政府は、1996年から2002年における重点施策を「障害者プラン」(ノーマライゼーション7か年戦略)として策定し、昨年で終了した。
 こうして第3次「障害者基本計画」(2003年~2012年)の誕生を迎えたわけであるが、昨年12月24日、政府は、新基本計画の閣議決定と同時に「障害者施策推進本部」において「重点施策実施5か年計画」(新障害者プラン)をも決定している。
 そして、平成15年度予算編成にあたっては、この計画に基づく施策の推進が図られているが、この機会に計画の概要と課題を紹介することとしたい(総務省については、郵政事業の公社化に伴い、予算概算要求を行っていない施策がある)。
○平成15年度障害者施策関係予算の概況予算額 1兆2,384億円(対前年度比 ▲4.2%)

第3次「障害者基本計画」と「障害者プラン」

 この計画は、障害者基本法第7条に基づく「法定計画」であり、平成15年度からの10年間において講ずべき障害者施策の基本的方向を示すものであるが、この構成は、次のとおりである。

(1)計画期間 平成15年度から同24年度

(2)計画の基本的考え方

 国民誰もが人格と個性を尊重し、相互に支え合う共生社会の実現を目指し、「リハビリテーション」と「ノーマライゼーション」の理念の推進を図る。

(3)4つの「横断的視点」

 施策推進の共通的な基本方針として、1.社会のバリアフリー化、2.利用者本位の支援、3.障害の特性を踏まえた施策の展開、4.総合的かつ効果的な施策の推進をあげている。

(4)4つの「重点課題」

 施策の重点化を目指して、1.活動し、参加する力の向上、2.活動し、参加する基盤の整備、3.精神障害者施策の総合的な取組み、4.アジア太平洋地域における域内協力の強化の4点をあげている。

(5)8つの「重点施策」

 「啓発・広報」「生活支援」「生活環境」「教育・育成」「雇用・就業」「保健・医療」「情報・コミュニケーション」「国際協力」が挙げられている。
 最後に、「推進体制」として「重点施策実施計画の策定」「市町村計画の策定支援」「計画の見直し」等が列記されているが、「障害者プラン」は、この計画の前記5年間における「重点施策実施計画」という意味をもつものであり、次の7つの「重点施策と目標値」からなっている。
(1)活動し参加する力の向上のための施策
 予防・治療・医学的リハビリテーション、福祉用具等の研究開発とユニバーサルデザイン化、情報バリアフリー化、欠格条項見直しに伴う環境整備等の具体策と目標値
(2)地域基盤の整備
 生活支援(相談・在宅・施設サービス)、生活環境(まちづくり、住宅・建築物・交通機関等のバリアフリー化、生活の安全、防災)等の具体的施策と目標値
(3)精神障害者施策の充実
 入院患者7万2,000人の社会復帰、保健・医療、福祉サービスの具体的施策と目標値
(4)アジア太平洋地域内協力の強化
(5)啓発・広報 「共生社会」の周知・啓発等
(6)教育・育成 専門的機能の充実と指針の策定
(7)雇用・就業の確保 年間3万人の就職件数、20年度雇用障害者60万人を目指す施策
(8)推進方策 計画の見直し、障害者関係団体等との意見交換、進行管理、全国都道府県会議の開催、全市区町村の障害者計画の実現、総合的データベースの構築等

これからの課題

 新計画および新プランが「共生社会」を目指し、「活動し、参加する力の向上」と「地域基盤の整備」を重点施策として一定の目標値を示したことは、評価されてよい。問題は、その具現化である。全国、約3,200市区町村に自立生活力、社会生活力を高める方策や社会参加の基盤づくり、特に退院可能な精神障害者7万2千人の社会復帰などに真剣に取り組む人と組織を育てることに全国会議などを通して努力してほしいものである。
 「共生社会」の考え方を成人国民の50%以上に周知するという計画の行方をも監視しつつ、当事者団体の立場から何をすべきかを考えたい。

(いたやまけんじ 社会福祉法人浴風会理事長)