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脱施設化を実現する地域生活支援の充実を
―具体化の段階に入ったノーマライゼーション―

尾上浩二

「インクルーシブ・バリアフリー・権利」がキーワードになる時代に

 昨年はDPI世界会議札幌大会を皮切りに、大阪、滋賀と「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム関連の会議が開催された。その余韻もさめやらぬ昨年12月、「新しい障害者基本計画」が閣議決定された。また、併せて、「重点施策実施5か年計画」も決定された(双方あわせて『新障害者プラン』と略す)。
 この「新障害者計画」の実施期間は2003年~2012年度であり、第二次アジア太平洋障害者の十年と重なる。「インクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会」がテーマになる時代を展望しうる計画が期待されていた。計画策定にあたって設けられた「新しい障害者基本計画に関する懇談会」でも、障害者権利条約や障害者差別禁止法、総合福祉法制定、扶養義務等の民法改正等についての意見が出されていた。

「共生社会と社会参画・障壁除去」を提起した基本的な方針

 「新障害者計画」の総論では、キー概念として「共生社会」が示されている。その(考え方)では「共生社会においては、障害者は、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに社会の一員としてその責任を分担する」と述べられている。
 さらに、続けて、「他方、障害者の社会への参加、参画を実質的なものとするためには、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去するとともに障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援することが求められる」と述べられ、「参加・参画に当たっての障壁、制約要因の除去」があげられている。
 かつて『平成7年版・障害者白書』では「四つの障壁除去」論を前面に打ち出し、その後のバリアフリーや欠格条項見直しの基本視点となった。「新障害者プラン」の「共生社会」論が、今後の障害者差別禁止法や総合福祉法制定につながっていくことを期待する。

脱施設化を進める計画・地域生活支援の充実を

 「新障害者プラン」について、新聞などでも一面で、“障害者「脱施設」を地域の支援重視”等と大きく報じられた。それに関連した部分を中心に、以下見ていきたい。
 身近な相談支援体制の構築として、「各種の生活支援方策を中心として、ケアマネジメント実施体制の整備やケアマネジメント従事者の養成を図る」と述べられている。また、在宅サービスの充実では、「ホームヘルプサービス等の在宅サービスを障害者がニーズに応じて利用できるよう、その量的・質的充実に努める」とされている。
 施設サービスについて、「施設等から地域生活への移行の推進」として「障害者本人の意向を尊重し、入所(院)者の地域生活への移行を促進する…」、「入所施設は、地域の実情を踏まえて、真に必要なものに限定する」としている。
 確かに、これまでの政策体系が施設を中心につくられてきたことからすると、「真に必要なものに限定する」とした点は注目すべきであろう。ただ、脱施設化・地域生活移行のための計画が具体的に示されているわけではない。
 たとえば、知的障害者のグループホームは「重点施策実施5か年計画」では1万5,000人の上積みが目標とされている。だが、脱施設化を図ろうとするならば、数倍の目標数値を掲げる必要があろう。脱施設化は、決して親・家族扶養への回帰ではなく、社会サービス・支援を得ながらの地域生活であるはずだ。
 「新障害者プラン」で曲がりなりにも示された「脱施設」。その着実な実行のためには、脱施設化を進める具体的な計画と、介護サービスや相談体制など地域生活支援の充実が不可欠だ。
 日本でノーマライゼーションの理念が広く紹介されて20年以上が経つ。理念の段階から、具体的に実施していく段階に入っている。そうしたなか、一時的な混迷が生じるかもしれない。しかし、時代の流れは、「保護・更生」から「自立・権利」への枠組み転換にあることは間違いない。そして、施設から地域生活へという流れも、当然のニーズに根ざしたものであり、決して逆転できるものではない。
 『新障害者プラン』を受けて、各自治体での障害者計画の見直し等も進んでいくだろう。「われら自身の声」をさらに高め、当事者参画を進めていきたい。

(おのうえこうじ DPI日本会議事務局次長)