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ホームヘルパー派遣と
相談支援事業充実のための具体的方策を

曽根直樹

 東松山市では、平成10年に策定した市の障害者プランである「市民福祉プランひがしまつやま」で、支援の対象者を従来制度が対象としてきた「障害が固定した人」だけでなく、回復可能なケガや病気によって起きる一時的なハンディキャップの状態の人も計画の対象と考えてきた。それは、障害福祉が人口比5%程度の「障害者」だけを対象としているため、95%の障害のない人にとっては、ケガや病気でどんなに困っていても利用できないという不合理さを克服し、フォーマル、インフォーマルサービスをつなぎ合わせて、市民のだれにとっても生活の安心を支えるものとして「障害福祉」を捉え直す試みでもあった。
 新しい障害者基本計画では、「現在障害者施策の対象となっていない障害等に対しても必要性を踏まえ適切に対応する」としており、幅広い人を対象にしようとしていることは評価できる。「3 障害の特性を踏まえた施策の展開」では、ICF(国際生活機能分類)を「障害の理解や適切な施策推進等の観点からその活用方策を検討する」としている。ICFは、障害のある人だけでなく、すべての人の健康状況の分類である。プランが目指す「障害の有無に関わらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会」を実現するためにも、ICFの考え方を取り込んだ施策推進が期待される。
 新障害者プランでは、今後、地域福祉を推進していくうえで重要と思われる在宅サービスの「ホームヘルパー」と「利用者本位の相談支援体制の充実」について述べたい。
 ホームヘルパーの派遣体制づくりは、地域生活を支えるサービスとして最も重視されてよいと思う。しかし、現実には障害者へのホームヘルパー派遣は実績が少ない。
 埼玉県では、平成13年度の介護保険事業による派遣が500万時間に対して、障害者は45万時間であった。しかも、障害者の内訳では身体障害者が97%、知的障害者3%という現状で、特に知的障害者、重複障害者への派遣が立ち遅れている。精神障害者の派遣はさらに少ない。このような状況は、人口が少ない地方の市町村になればなるほど、「マーケット」が小さいために顕著である。全国約3,200市町村のうち93%が人口10万人以下の自治体であることを考えると、深刻な問題だ。市場原理による事業者の参入が見込みにくいこの状況を打開するためには、介護保険事業と障害者のホームヘルパー派遣事業を統合して行う事業運営の方法を確立することが急務である。高齢者、三障害を縦割りにしてきたこれまでの考え方を改め、サービス提供においてもユニバーサルデザインが求められる。
 「利用者本位の相談支援体制の充実」では、「市町村を中心とした相談・支援体制の充実を図り、これを拠点としたケアマネジメント体制を整備する」とされている。「相談支援」は、今後の地域福祉の展開を考えるうえで、中核を担う業務であることを確信している。しかし、多くは「一般行政職」として採用された市町村職員が福祉課のケースワーカーとして相談支援にあたっており、3~4年周期で異動を繰り返している。このため、十分なノウハウの蓄積がなされないまま、障害者ケアマネジメントの拠点として位置づけられているのである。さらに、「相談支援」とは一体どういう活動をすることなのかといった、具体的なイメージも形成されていない。
 相談支援は、相談者の抱えている困難な「状況」と「気持ち」を相談員がいかに共有できるかが大切だ。そのためには、コミュニケーション技術が必要となる。「言葉」と「気持ち」を聴き、受け止め、整理するためのトレーニングを「傾聴」「カウンセリング」「アサーション」「家族システム」といったことを学びながら身に付ける必要がある。サービスのマネジメントまでいければ、ほとんど問題は解決に向かっていると考えられる。その手前で身動きできなくなっている人たちにこそ、相談支援が必要だ。このような援助技術を身につけた相談員を養成することが必要であるし、そのためのプログラムの開発が急務である。
 また、このような業務を一般行政職を中心に行っていくことが妥当なのか、検討が必要だ。今年度一般財源化された障害者相談支援事業を活用し、市町村、都道府県が専門職の確保にどれだけ真剣に取り組むのかが問われるし、この時期に一般財源化に踏み切った国は、地方自治体での取り組みを強力に推進していく大きな責任がある。
 最後に、平成7年に発表された障害者プランには「ノーマライゼーション7ヵ年戦略」というサブタイトルがついていた。新しい障害者プランにつかなかったのは、何か理由があったのだろうか?

(そねなおき 東松山市総合福祉エリア)