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ワールドナウ

パキスタン
パキスタン国際障害者セミナー・
シンポジウムに参加して

地村貴士

 去る2003年2月7日(金)~8日(土)にかけて開かれた「パキスタン国際障害者セミナー・シンポジウム」に参加してきました。このセミナーは主催団体である「マイルストーン」のメンバーのムハマド・シャフィク・ウル・ラフマンさん(ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業第3期生)が中心となり開催され、日本からは「広げよう愛の輪運動基金」「日本障害者リハビリテーション協会」「メインストリーム協会」「自立生活《夢宙》センター」「障害者生活支援センターTIJ」「自立支援センターぱあとなぁ」などの団体が参加しました。

パキスタン発上陸!

 日本からパキスタンへの直行便がないため、今回はタイ経由で1泊しながらパキスタンへ向かいました。日本からタイまでは約6時間。さらにタイから飛行機で約6時間、ようやく今回の目的地であるパキスタンはラホール国際空港に着いたのは日付も変わりそうな夜の12時ごろでした。どんな国なんだろう? と機内でわくわくしながら機内用の車いす(いすの高さがやたら高い!)に乗り機内を出ると、空港備え付けの車いすが何台か用意されていました。しかし、用意された車いすは日本で言うところの中古の中古品みたいな物で、足台は片側がなかったりブレーキは外れてなくなっていたりと、国際空港に備え付けられてある車いすとは想像し難いようなものでしたが、これがこの国の現状なんだと実感しました。空港通路を通り、ようやく自分の車いすと再会しホッとしながら空港の外に出るとまたまた驚くべき光景が…。空港の外へ出た僕たちを待ち構えていたのは、今回のセミナーの主催団体である「マイルストーン」の障害者のメンバー中心に2~30人が歓迎の花束を手に、こんな夜遅くに出迎えに来てくれていたのです。
 そんな感動的な余韻に浸りながら車で宿泊先のラホールホテルへ移動しました。そしてホテルのトイレを見てビックリ! かろうじて洋式トイレではあるものの便座がやたらでかい! お尻がそのままハマってしまいそうな便座を半身の状態で使用する姿は何とも言えない気持ちでした。ちなみにホテル滞在中は、以前このホテルで働いていたアガさんという障害当事者の男性がいろいろと面倒を見てくれました。アガさんありがとう!

パキスタン障害者セミナー1日目

 前日の寝不足は否めないまま、ラホール市外から牛や羊やヤギやロバや馬などが入り乱れる道を車で走ること約40分、イクワン教育施設という学校の敷地内にある大きな講堂のような場所でセミナーは始まりました。参加者は約300人ほどで、そのうち障害者は100人もいませんでした。本当はもっと多くの障害者に参加してもらいたかったようですが場所が少し郊外ということもあり、会場までのアクセスが不十分であったり、車いす等の機器の不足や送迎をするだけの車両の手配ができなかったことなどもあり、重度の障害者が参加するにはまだまだ難しい現状がありました。それ以外にも目を見張ったのが男女の席の座り方がきっちり分かれていること。イスラムの文化とは言え何か変な感じがしました。
 そんな中、元首相やラホール市の副市長などの来賓あいさつとともにオープニングセレモニーが始まりました。シャフィクさんが今回のセミナー開催に至るまでの経過報告等を行った後、日本からの参加者があいさつを兼ねてのスピーチを行い、比較的活気のある雰囲気の中、お昼過ぎには1日目のプログラムは終了しました。
 午後からはパキスタンとインドの国境で毎日朝夕行われるフラッグセレモニーを見学に行きました。内容は両国の国旗を掲げたり降ろしたりする儀式なのですが、国境を境に両国の軍人さんが相手よりもいかに勇敢に鼓舞するかというもので、その迫力は面白くも凄いものでした。また、両国の民衆も大声でそれを応援するからとにかく熱い! しかし、毎日こんなことをしてるのかと思うと、両国とも仲良くすればいいのにと思いました。

パキスタン障害者セミナー2日目

 セミナー2日目も同じ場所で開かれ、午前中はメインストリーム協会や日本障害者リハビリテーション協会の方々のスピーチがあり、スピーチの中で日本の障害者運動の流れや今のパキスタンに期待するようなことなどが話されました。そして午後からは「障害者の人権」「移動の権利」「女性の権利」の3つの分科会に分かれて熱く意見交換を行いました。
 1日目、2日目と参加しての感想としては、日本との現状の違いは仕方のないことかもしれませんが、パキスタンにおける障害者の現状は日本の一昔前と同じで、リハビリテーションに比重が多くて少しでも機能回復し、健常者に近づくことが素晴らしいという考えが強いような気がしました。そのため、第三者の力を借りて生活を築いていくという発想は考えにくく、スポーツやリハビリ等を頑張り社会復帰することに多くの人たちが一生懸命頑張っているような気がしました。
 そして午後の閉会式が終わろうとする直前、2日間にわたり出席していた副市長より「市内の公共施設にはすべてスロープを整備する」「市内を走るバスには最低3席は障害者優先座席を設ける」「公園等の公共施設の駐車場には障害者用スペースを設ける」というような3つの公約がなされました。いきなりの発言には少し驚きましたが、今度ラホール市へ来たときは楽しみにしてくださいとまで言われたので、素直に期待しようと思いました。

最後に…

 最後に全体の感想ですが、今回のセミナーで行政やマスコミが動いたことも大きいが、「マイルストーン」の仲間たちがみんな元気いっぱいな表情だったのが印象的でした。また。セミナー以外にも国民全体が昼夜を問わず空一面に行う凧上げ大会や、新聞社への訪問、市役所に招かれての議員団との意見交換会など、一つ一つが語りだすときりがありません。すぐにパキスタンの現状が変わるのは難しいかもしれません。しかし、この国は必ず変わるであろうし、近いうちに再びこの町を訪れるのを楽しみにしたいと思いパキスタンを後にしました。

(ちむらたかし 自立支援センターぱあとなぁ代表)