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国連・特別委員会会場でのインタビュー
各国の政府代表に聞く

【聞き手】
丸山一郎・日本障害者協議会

 第2回特別委員会の各国代表の顔ぶれは昨年の第1回とは大きく変わりました。
 日本政府代表に東俊裕氏が加わったのをはじめ、タイ、ブラジル、エクアドル、ジャマイカなど発展途上国の政府代表団にも障害のある人が目立ちました。本人に直接確認することはできませんでしたが、前回より少なくとも7人は増えて13か国の代表に障害のある人がいました(反対に、アメリカ代表には今回は障害のある人の参加がありませんでしたが、理由はフリーデン米国障害者協議会議長談を参照)。日本傍聴団の藤井克徳氏(日本障害者協議会)と最終日の会議場内で、休憩中の3氏にインタビュー【1.代表に選ばれた経緯、2.今回の特別委員会についての感想、3.条約実現の見通しはどうか? など】しましたので紹介します。

タイ王国

モンティエン・ブンタン氏
(視覚障害)

  1. 紆余曲折はあったが、政府の障害者に関する委員会から代表団に選ばれ、バンコクからの政府担当者と一緒に参加している。国連代表部と密接に打ち合わせはしているが、委員会における責任を任され私がすべて発言をしている。政府としては障害者の代表を送り出すことに不安や危険を感じておらず、私の国際社会での活躍に自信をもっていると思う。
  2. ヨーロッパなどの歩み寄りがなされた委員会決議案の提出を待っているところだが、今回は十分に各国の意見が出され、多くの建設的な提案がなされた。ニュージーランドやメキシコの調整も効果があり、全体の合意がなされたと思う。
  3. 正確な予想は困難だが、最低3年は検討が続くだろう。もしも2006年までに実現したら奇跡(ミラクル)だ。だが奇跡を起こすようベストを尽くしたい。

グアテマラ共和国

デメトリオ・ヴァルガス氏
(肢体不自由・車いす使用)

  1. 国の障害者協議会には政府・民間・学術など7機関の代表がいるが、外務省と協議会の話し合いの結果、民間団体の私が代表団に入った。
  2. 大変多くの意見が出され、いくつかの重要な提案もなされた。メキシコの条約案は実現すればグアテマラの社会にも大きな影響をもたらすと考えている。これからの検討は簡単ではないだろうが、今後お互いに協力して合意に向かっていけると思う。
  3. 早ければ早いほど良いが、多くの国では3年はかかると見ているようだ。もっと早期の実現を期待している。

メキシコ合衆国

フランシスコ・リベロ氏
(肢体不自由・車いす使用)

  1. とても珍しいことかもしれないが、フォックス大統領が選挙に勝って70年にわたる一党支配を終わらせた。どの政党にも属さない我々障害者のために、2000年12月1日に大統領は公約どおり国家障害者協議会を発足させた。協議会により、教育・雇用・環境改善などの分野で政策が新たに採られ、5つの国家計画が建てられた。大統領が国連総会でこの委員会を提案した。私は民間人だが、協議会のアクセス委員長であり権利擁護も担当しているため、代表団に選ばれた。
  2. 今回は前回よりも非常に活発な委員会だ。条約案の中身の検討に入れることになった。しかし、メキシコはすでに条約案文(テキスト)を提案していて他の国と違った立場にいる。来年の委員会までに2回(9月と3月)の草案検討を主張したが、ヨーロッパは専門家委員会での検討を主張した。時間も費用もかかるやり方だ。ガルゴス議長のまとめでは、どうやら来年の特別委員会までに草案検討は1回になりそうだ。
  3. 大変早く検討が進んでいると思う。すべての国連関係者も同じテーブルについた。terminationやcorruptionなど他の条約は3年で実現したものもあるから、最も楽観的には2006年だ。
     メキシコでは2週間前に大統領がすべての人々の差別禁止の新法案を提出した。下院は通過し上院での審議に入る。また、32州のうち5州で差別禁止条例が実施に移された。メキシコは国内的にも国際的にも新たな法整備に取り組んでいる。“忘れ去られた人は誰もいないのだ。”と大統領は呼びかけている。

参考

レックス・フリーデン氏談

(米国障害者協議会[NCD]議長・
国際リハビリテーション協会[RI]会長)

○ADA(障害をもつ米国民法)をつくり人権問題のパイオニアでもある米国は、「条約には署名しない。ただし反対はしない」と明言したことで、国連・特別委員会に障害物を持ち込んだ。R.ボイド法務省次官(公民権担当)が、「条約をつくるよりも、より建設的なことは各国が自国の障害者施策を改め、障害者の生活を改善することだ」と表明したことに対して、私はNCD議長として「早まった声明である」とコメントした。
○大統領に意見を述べる役割のNCD議長として、私は書簡を送り、1.米国が条約実現に向けて貢献をすること、2.特別委員会の米国代表に障害のある人を含めること、を進言したが、政府は慎重かつ激論の末前述の結論を出した。これでは障害のある代表を出すわけにいかなくなった。
○米国が条約に署名をしない理由は3つある。1つは歴史的にも、子どもや女性の条約に署名をしてこなかったこと。また、条約を優先しない国内法の存在もある。最大の理由は条約にサインをしたら、途上国が要請する経済支援を断ることができなくなるということだ。政府の判断は米国民の支持を慎重に見極めてのことである。つまり米国民の大半は極めて保守的であり、このような国際的貢献を支持しないということだ。
○条約が成立するかどうかの鍵は、〈権利を守る vs そのために必要な経済支援〉に関して先進国と発展途上国の双方が歩み寄れるかにあると思う。