音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

みんなのスポーツ

障害者ボウリングについて

上野文雄

 ボウリングといえば、多くの人たちがレクリエーションとして楽しんだ経験があると思います。1970年代にブームが来て以来、障害者の人たちもボウリングの経験がある人が増えてきました。
 福岡市では、昭和53年から毎年6月に福岡市身体障害者福祉協会主催によりレクリエーションとしてボウリングを行ってきました。その後、昭和62年4月に福岡市障害者スポーツレクリエーション振興会の事業で、ボウリング教室が開かれ、そこに参加していた肢体障害4名、視覚障害2名の計6名でクラブをつくりました。クラブの名称は「ターキーズ」といいます。肢体障害、視覚障害、聴覚障害がそれぞれストライクを出すという意味を込めて名付け、全国的な活動を開始しました。クラブでは障害に関係なく、みんなで楽しむことを常に考えながら障害を超えて楽しめるスポーツとして取り組んできました。
 平成2年に第26回全国身体障害者スポーツ大会が福岡で開催された時に、初めてボウリングが公開競技として選ばれました。障害者ボーラーにとっては、ボウリングが障害者のスポーツとして認められた瞬間でした。そして、平成5年2月に待望の第1回全国障害者ボウリング大会が行われ、以後、毎年福岡市で開催されるようになりました。特に全国レベルとしては、初の何々の障害者大会ではなく、すべての障害者を対象にした全国大会の開催となりました。福岡市が始めたこの事業は、今年で11回になりますが、毎年参加している県外の選手も多く、選手にとっても大きな目標となっています。ボウリング福岡としても誇りに思っています。

1 競技におけるルール

 競技規則は、それぞれの障害に沿ったものになっていますが、競技そのものは、一般のボウリングと変わりません。障害者がボウリングをするための補助として、視覚障害者には全盲用手すり、弱視者には残ピン指示、肢体障害者には車いすや椅子、重度障害者のシューター使用(ボウル運び)、知的障害者には残ピンや投球の順番指示、聴覚障害、内部障害、精神障害については必要に応じて主催者が考慮するようになっています。
 特に、全盲の人は手すり(国際的にはガイドレールという)を使うことによって、方向の確認ができ投球することができます。肢体障害者の中でも重度障害者でボウルを自分で投げることのできない人は、シューター(滑り台のような物)を使って投球します。このようにボウリングはどんな障害者でも競技できるという利点があります。
 またゴルフなどでもHD制(ハンディ)があるように、ボウリングにもHDを付ける方法があります。たとえば設定を180点にした場合、選手のアベレージ(平均点)が100点だとすると、180-100=HD80点となります。

2 福岡市障害者ボウリングクラブ「ターキーズ」

 私たちのクラブは今年度で17年目を迎えます。当初6名で始めたクラブも現在55名の部員がいます。最高で70名を超えたこともあり、福岡市は障害者のボウリング人口が全国的にも多いと思います。クラブ創設以来、重度障害者でも気軽に参加できることを考えて、HD制を使って平等に楽しめることを常に考えてきました。毎月第4水曜日に月例会を行い景品を出しています。その中には健常者も参加し、重度障害者のサポートを兼ねています。また、障害の軽い人などは他の障害者のサポートなど障害者同士が助け合っています。その他、第2土曜日が練習日で専属のコーチの指導を受けています。第3土曜日はポイント大会というのを行っています。これは半年ごとに集計しますが、毎月参加人数によって(参加者が20人の場合1位が20ポイントで、最下位が1ポイント)ポイント数が変わってきます。参加することを重視し、休むとポイントが加算されない仕組みになっています。毎月3回の活動を通じて全国大会を目標に頑張っています。

3 ボウリングを通しての体験

 私が、初めてボウリングをしたのは、1970年代のブームの時でした、私自身まだ健常者としてよく早朝ボウリングに行ったものです、74年に交通事故で視覚障害者となり盲学校にも行き、そこで視覚障害者のスポーツをいろいろ体験しました。それまで視覚障害の方としか付き合いがありませんでしたが、盲学校を卒業後、ボウリング教室がきっかけでこれまでとは違った、いろんな障害をもった人たちとの出会いが私にとって人間的にも、人生観が大きく変わることになりました。ボウリングを通じてさまざまな方と出会えることが私だけではなく、すべての障害者にとって大事なことだと思います。仲間を思いやり、感謝の気持ちを持つことの大切さを感じます。
 障害者の中にはまだまだ家に閉じこもっている方も多く、その点ボウリングは気軽にできるスポーツとして、今までスポーツをしたことがない方でもすぐ仲間に入れます。実際わがクラブにもこのような障害者が多く、特に知的障害者には取り組みやすいスポーツだと思います。最初はなかなかピンまでいかずガータばかりで点数も1ゲーム10点とか20点しかいかなかった人が、1年で100点を超えるようになったときは、本当に私もうれしく思います。本人の表情も明るくなりストライク、スペアを取ったときの表情は僕らがみていても感動すら感じます。そんな時、ボウリングをやってきて本当によかったと仲間と思うことがあり、もっと僕らも頑張らなくてはいけないと素直に思います。
 まだスポーツをしたことがない方、他のスポーツを経験したがなかなか続けられなかった方、年齢的にほかのスポーツができなくなった方、そんな方はもう一度気持ちを奮い立たせてボウリングをやってみませんか?。仲間も増え、楽しいですよ、とにかくボウリングを一緒に始めましょう!

(うえのふみお 日本盲人会連合ボウリング競技連盟委員長)