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身体障害の立場から
町田市における支援費制度の問題点と課題

安藤信哉

 4月から始まった支援費制度は、理念に障がい者の社会参加の促進とノーマライゼーションの実現を掲げています。この文面を見る限り、障がい者福祉は一見向上しているかのように思えます。しかし、介助時間を削減された町田市(東京都)では、ノーマライゼーションとは程遠い制度でした。果たして、この支援費制度は真に「障がい者を自立支援する」制度と言えるのでしょうか。
 確かに支援費制度になってヘルパー介護派遣時間数が伸びた自治体がたくさんあります1)。しかし、「福祉の町田」と言われるように全国でも先駆けて障がい者支援を行っていた町田市では、一人暮らしをする全身性障がい者の人口割合及び伸び率が非常に高く、社会参加にも積極的な地域であったため、1日約4時間とする補助基準額及び前年度利用実績を確保する「調整交付金」でも対応できない状況になりました2)。そのため、町田市では上限時間をこれまでの20時間から15時間へと削減し、平成15年度新規申請者に関しては上限を4時間にしました。さらに、「通勤・通学・通所」といった通年長期の介助が対象外(但し、通院とレクリエーション(遊びに行くこと)は介助可能)になっているため、これまで全身性介護人派遣サービスを利用して社会参加をしていた障がい者の道を閉ざすものとなってしまいました。またこのことにより、残念なことですが「家にひきこもって、就労しなければ介護時間がもらえる」という逆転的な考えが生じています。このような町田市の状況では、支援費制度は、真に障がい者を「自立支援」する制度には程遠く、「保護」の観点に立脚した制度と言えるでしょう。
 このような問題を解決するには、国は、補助基準額の上限を撤廃し、施設と同様に在宅も「国庫補助金」ではなく、「国庫負担金」で国と都道府県と地方自治体で応分負担をしていくべきです3)。また、昨今のバリアフリー化や電動車いすをはじめとする福祉用具及びIT技術の進歩により非常に重度な障がい者においても適切な介助があれば、就労参加が可能になりつつあります。したがって、「自立支援」に立脚し、どんなに重度な障がい者でも希望すれば就労参加ができるような社会にしていくためにも、「通勤・通学・通所」といった通年長期の介助を対象とするように改善していくべきだと考えます。

(あんどうしんや まちだ在宅障がい者「チェーンの会」)

参考文献
1)渡辺鋭氣ら編『福祉労働第百号』現代書館、2003年、P39~41
2)前掲書 P60~64
3)『都政新報』2003年9月16日 掲載記事