音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

1000字提言

想像力あふれる教材

蒔田麻耶

 私が小学校の6年まで在籍した盲学校は入学するのに試験があった。小学部に入るための試験の問題はたとえば、先生がいろんなものを持ってきて生徒に「これは何ですか」と言って触らせて答えさせるというもの。私はその時にキャベツを白菜と言ったのを覚えている。でもその時、私の中に多少悪知恵が働いていたら「先生、こんな萎(しな)びたキャベツを眼の見えない子どもに触らせて、それで生徒を入れるか入れないか、決めるの?」と言ったかもしれない。
 しかし、当時の盲学校には、視覚障害児を教育するための基礎があったと私は思う。たとえば、点字を習うための教材がいくつもあった。盲学校の授業では、いきなり子どもに小さな点字を書かせたり読ませたりはしない。まずは、長方形の木の板に6つの穴が開いていて、そこに玉さし版と言われるものからとった、まいたけのような形をしたものを差し込んで点字は6つの点でできているという仕組みを覚えた。それから大きな点字を触り、点字の基礎を身につけてから細かい点字を読んだ記憶がある。
 図工の時間にもいろいろなものを作った記憶がある。1年生の時にはスリッパを作る授業があった。その時にはスリッパを分解(?)して平らにした形の紙が用意されて、それをホチキスでとめればよいという単純なものだったが、絵を描いたり色を塗るなどの作業ができない全盲の子どもたちにとっては、紙テープを輪にしたもので花もよう作りをしたり、また高学年になれば、クラブ活動などで、折り紙を34枚用いてクス玉を作るという楽しいこともできた。おかげで立体的なものがどうなっているのか、その仕組みを覚えるのを楽しみながら学ぶことができたと思っている。
 昨年、横浜の中華街に食事に行った時に私はおもしろいものをみつけた。蒸篭(せいろ)の中に入った、肉まんとシュウマイと餃子の磁石だった。中華料理の好きな私は10個買い、友達にあげたり冷蔵庫につけて使っているが、あの磁石があることによって、蒸篭の中にどのように食べ物が入っているかがよく理解できた。このように立体で表した物があるととてもよく分かる。
 これからの時代、視覚障害者が楽しみながら学習することができるものを開発してほしいと思う。視覚障害があるということで補わなくてはいけないものを的確に判断していろいろなものを開発してほしいと願っている。それから私のように工夫された教材でおもしろい遊びを考えたり、いたずらをしたりする人もたくさん出てくればおもしろいと思う。さて次はどんな遊びをしようかな。

(まきたまや 神奈川県在住)