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心温まるゴルフ

高桑秀和

 私は子どもの頃、家の前で遊んでいて車にはねられ、左足を膝下から切断しました。しかし、スポーツは大好き。野球なども健常者に混じって結構楽しんではいました。友人に誘われ、何となく始めたゴルフ。スポーツの楽しさは他のスポーツと変わりありませんが、違っていたのは同じような障害をもつ人と一緒に楽しめる機会を見つけたことでした。
 「日本障害者ゴルフ協会」という障害者のゴルフ団体を知り、さっそく入会。活動に参加するようになって、かれこれ7年くらいになります。そこではゴルフをプレーするだけでなく、全国のさまざまな障害者やボランティアの人たちと友達になりました。その人たちとの交流が私の励みになっています。
 たとえば、協会のビッグイベントである「日本障害者オープンゴルフ選手権」は、優勝スコアがアンダーパーというレベルの高い大会です。そんな真剣勝負の選手権でハンディを抱えた人々が戦っているのですが、試合期間中の障害者ゴルファーとスタッフとの交流は心温まるものです。お風呂場でのこと。義足をとった足の手当で顔をしかめている選手を係の人が丁寧に看護している。キャディさんはルールの許される限り、ボールの近くまでカートで選手を運んでくれる。また、手弁当で運営にあたっている協会スタッフの人たちは、本当に一生懸命選手に対応してくれます。
 障害者が健常者に混じってスポーツをしていると、どこかで緊張していることが多いもの。でも、ここでは自分の周りの風景がいつもとはがらりと違って、自分と同じような障害をもつ仲間ばかりなのです。そして、横にいる健常者の人も違和感なく接してくれる。我々の姿がものすごく普通で、周囲もものすごく温かいのです。
 夕食の後は、同室の人と子どもたちの進学の話や仕事のことで話が盛り上がります。普段は健常者に囲まれて、仕事やつきあいに追われ、どことなく気が抜けない毎日。しかしここは別世界。思うままにくつろげます。手足を伸ばして歩けるのです。
 ゴルフをプレーする楽しさはもちろん、私はゴルフを通じていろいろな人から元気をもらいました。

(たかくわひでかず 日本障害者ゴルフ協会会員)