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知り隊おしえ隊

東伊豆・グルメと美容ツアー★

朝霧裕

踊り子、アニマル、葉っぱバス

 見上げれば山、眼下は海!!今回は、温泉旅行地、伊豆は熱川、そして稲取を、朝霧 裕がレポートします。さて、普段ならば、一人旅大好きの私が今回、参加したのはツアー旅行。実は、今回の旅、ただの観光旅行ではなく、「東伊豆ふくしのまちづくり交流研修・モニター旅行」というモニター募集に友人が誘ってくれたもの。
 「設備などは、今はなんにもないけれど、時代を見据え、変えていきたい思いがある。温泉観光地、東伊豆を、3年先、5年先、バリアフリーを誇れる町へと変えてゆこうではないか!」という町の人や企画者の思いに共感し参加した。
 神奈川新聞社で大活躍しているすがやあゆみちゃん、目が見えないけど、マッサージ師の資格を持つキュートな女の子みわちゃん、日頃から私の生活を支えてくれ、介助者として同行した私の右腕、愛ちゃんの「美容ツアー」となった。
 朝10時半。東京駅から「踊り子105号」に乗って…。はやる気持ちを抑えつつ、「電車はまだかなー…」とホームをのぞき込んでいたところへ、介助者の愛ちゃんが到着。私をあだ名で呼びながらも、なぜか顔には血の気がない。
 「…だ…だ…だ…だっこちゃん……!」
 恐る恐る、視線の先を振り向く私。女の子同士で見せ合うためにだけに、デートの時より真剣に、下着とパジャマとメイク用品を選んで入れてきたはずの、
 「リュックがないっ!!」
 あろうことか、綺麗に詰めて、部屋に忘れてきたのだった。かくして、身一つ(かろうじて財布だけあり)で踊り子号へ…。が、久々に会う友との旅に、「リュックがなくても、やってやるぜぃっ」と、闘志が湧いてくる。
 東京、横浜、品川…とハイスピードで移る景色。お昼には、旬の松茸ご飯や古代米(赤黒い、お赤飯のような感じ)、東伊豆の名物金目鯛の入ったお弁当に歓声があがる。電車で食べる駅弁も旅の醍醐味だ。古代米から、「五穀米も身体にいいんだって」「ダイエットには黒酢だって」と、話が飛ぶ。しかし、その後次々と回って来るチョコレート、おせんべい、ミルクティー、甘~いおやつに、また歓声…。
 東京駅から約2時間。窓辺に見える藍色の海を、熱川駅に到着した私たちは、地元市民の皆さんや、ボランティア参加した伊豆稲取中学校の子どもたちに迎えていただき、観光へ。
 最初に訪れたのは、熱川バイオパークだ。伊豆高原の大自然に囲まれたここは「スポーツゾーン」、「プレイゾーン」、「アニマルゾーン」と三つのステージに分かれたレジャーランドだ。レジャーランドには観覧車やゴンドラのある遊園地、スポーツランドにはゴルフ場を併設した広い園内の中、私たちが園内のバスに乗り換えて周ったのは、ラクダ、エミュー、白サイ、世界各国の動物が放し飼いとなっているアニマルゾーン。バスは、キリンの大好物である葉っぱを屋根に挟んだ状態で走っているため、キリンの居る場所では、窓さえなければ触れる距離へキリンが寄ってきて、葉っぱを食べる様子が見られた。今までは、キリンと言えば、柵の中にいるのを通路越しからちょっと見て、「目が優しそう」と思うくらいであったけど、目の先1センチで見ると、迫力。バスごと食われそう。そのことに、とっても感動した。ゾーン内には、うさぎややぎなど小動物をだっこできるふれあいコーナーもある。この日は雨で、だっこを断念!
 お土産屋さんでは、この後、たびたび目にすることとなる「みかんワイン」を発見!東伊豆は、みかんワインを作る工場があり、みかんの名産地と、町民の方に教えていただいた。名産と聞いて、周りを見れば、サブレにゼリー、ジャム、酒、石鹸、上につくのは、すべてみかん☆さすがは産地、種類の豊富さに感動する。
 バイオパーク、唯一にして最大の不便だったのは、園内を巡るバスに、スロープ、リフトのどちらもないステップバスであったこと。バスの座席に移乗可能な人でないと乗ることが厳しく、今後の改善を期待したい。

お肌つるつる体験ツアー

 バイオパーク後は、一路、稲取赤尾ホテルへ。入った瞬間、ロビーから海を一望できるパノラマビューは絶景だ。部屋の絨毯式の部屋にベットが二つ、奥の和室に布団が二つの和洋室。手前洋室の作りは広く、トイレも手すり付きの広々とした作り。部屋風呂もあり、車いす使用者と友人など、数人の旅行に動きやすい設計。
 その他、部屋風呂は、風呂を斜めに入りやすく設計してあるが、つかまりやすい位置に手すりがない、貸切風呂のスロープの手前に一段上がりかまちがあるなど、実際使う側から見ると、やや難あり。しかし、エレベーターは完備、仲居さんも「困った時にはなんでも言ってくださいね」と、気さくである。
 ホテルの自慢は、なんと言っても、家族でも、数人の友人でも使える貸切風呂、円筒形の真っ白なお風呂にバラの生花を浮かべたバラ風呂、屋上にあり、海と星空を眺めながらゆっくりと疲れを癒せる展望露天風呂と、一つのホテルでいくつものお風呂を、無料で、はしごできること。アメニティーは、「炭石鹸」「炭シャンプー」などと炭グッズに力を入れており、髪もお肌もつやつやになりながら、貸切風呂をわいわいと皆で堪能。大きなお風呂で、日頃の疲れが癒される。
 浴衣を着て、いざ、夕食は、絶品の会席料理。新鮮なマグロにハマチ、うに、あわび、そして名物、金目鯛の煮付け…最高の海鮮を堪能する。殊にお刺身は最高。魚好きの私には、この食事のためにホテルがあると言ってもいいくらい。大きな器にちょこん、ではなくて、量も半端じゃなく出てくる。刺身だけでも、お腹一杯になるのに、天ぷら、ご飯、茶碗蒸まで!
 どんなに風呂や部屋がよくても、旅行で食事がいまいちだったら、何か物足らないな、と思ってしまうが、その点、ここはお勧めしたい。
 夜は、ベッドとふとんに転がって、心ゆくまでおしゃべり。屋上の展望露天風呂には、階段を上がり、滑りやすいため、今回は私は入らなかったが、介助者の愛ちゃんがトライ。
 「お風呂から流れ星を見たよ」
と言って帰ってきた。ホテル内には、カラオケ、ラウンジなどのほか、フェイシャルエステが入っており、45分4000円という値段で、美容に磨きをかけることができる。名産のみかん、会席、お風呂にエステ…男女問わず、体の中から美肌になってゆきそうな、リラクゼーション満載である。事実、貸切風呂でアヒルを浮かべて友達と遊んでいるだけで、かなり、お肌はつるつるになった。

めざせ、バリアフリーの街

 翌日の朝は、早起きでご飯! ホテルの皆さんが、「障害をもっている方々のモニター参加」ということへ、配慮をしすぎてしまったのか、なぜか朝からお刺身付きの豪華絢爛な和食が出る。が、三度の飯よりコーヒーが好き!な私は、一般客に混じって、バイキングも参加。死ぬほどおいしいクロワッサンをいただく。もう、和食、洋食、どちらもおいしすぎてとろけそう。
 この日は、「東伊豆の町バリアフリー化」に向けて、障害をもつ人、介助者、町の人々、バイオパークを一緒に歩いて回った中学生たち、みーんなで、モニター会議に出席した。設備、宿泊については、ホテル、バイオパーク共に、ステップバスの改善を、との声が上がったほか、ボランティア参加や、障害をもつ人を交えたツアーを企画する際の留意点などが、車いす使用者、目の見えない人など、さまざまな立場から寄せられた。
 また、障害をもつ人が旅行をする際、自分で介助者を連れて旅行に行く人もいるが、必ずしもそうとは限らない。私自身、1人でポンと出かけることもあり、そんな時は、ツアーガイド、テーマパークのスタッフ、旅館の仲居さん、街の人々など、旅先で、その場で会えた人々に手を借りる。
 介助の手を貸す側の心がけとして、障害をもつ人も、性別も年齢もある一人の成人男性と女性であることをまず理解してほしい。「ここができないので、手伝ってください」と伝える前に、勝手にどんどん車いすを押されたら怖いし、小学生や幼児に話しかけるような言葉で声をかけられたら嫌な気持ちになる。また、たとえ介助でも、バスやタクシーの乗り込み等で抱き抱える介助は、身体に直接触れられることで、特に女性は、異性には頼まない人も多い。「障害者、と一括りにするのではなく、性別をもった一人の人間として、相手を尊重する気持ちを忘れないでほしい」と、心のバリアフリーについても、印象に残る意見が多数あった。
 帰りがけ、参加者はそれぞれにお土産店を散策。地元の名酒(日本酒)・伊豆の里、無添加の塩辛やわさび漬け、この地方に伝わる「つるし雛」などを見てまわる。つるし雛は、桃、お手玉、すずめ、など、雛祭りにちなんだ小さな張子人形を、紐で結び天井から床へ下がるほど長くつるして飾る雛飾りで、この地方の伝統なのだそう。人形には、それぞれに、健康、金運、厄除けなどの意味があり、女の子が生まれた時、その家のおばあさんが孫のために作るなど、手作りをするのだそうだ。来年の年明け、1月20日~3月30日の間には、稲取温泉地区内にある文化公園内「雛の館」にて、園内に咲く桜と共に、「つるし飾りまつり」が見られるそう。期間中、さまざまなイベントがあるそうなので、案内所へ問い合わせて、時期を合わせて行ってみるのもよいかもしれない。
 1泊2日はあっという間で、見たいところはまだまだたくさんあった。バスの不便も、個人旅行で事前に問い合わせるなどすれば解決するかもしれないし、何より、町をバリアフリーにしていこう、という、町民の熱意さえあれば、設備はよりよく変わるはずだ。
 今度行く時には、より動きやすい街として、東伊豆を体験してみたい。

(あさぎりゆう 作詩家、アーティスト)

◆稲取赤尾ホテル
TEL 0557―95―2222
◆稲取温泉旅館共同組合
TEL 0557―95―2901