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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年8月号

1000字提言

神話の崩壊

岡田なおこ

「支援費制度」が始まると障害者の施策が大きく変わる、と予想はしていましたが、次々に「神話」が崩壊していきます。「神話」というのは「障害者福祉」のことです。

「絶対ここまでは面倒みてもらえるだろう」と思っていた「ここまで」の予算も削られ、「支援費の考え方」に切り替えられています。「予算が削られる」ところまでは理解できても「支援費の考え方」にみんな慣れていないので、「ついていけない」といった状況です。

現在のところ「支援費」の対象になっていない通所施設も近い将来「応能負担」になるでしょう。障害によって負担額が変わったり通所の条件が変わると思います。私の地域では行政側が「利用者がパニックを起こすだろう」とはっきりしたことを発表しませんが、近隣の自治体はすでに通所施設も支援費の対象になってきていますから、早いか遅いかの問題なのです。

情報を調整する行政のやり方は良くないと思いますが、これまで手厚く保護されていた障害者やその家族に「応能負担」の話をすれば「パニック」が起きるかもしれません。

コスモス(障害者自立支援センター)を運営していても、活動するうえでの「利用者負担」の話になると利用者やその家族は、「高すぎる」「それでは利用できない」と言いだし、なかなか建設的な話し合いにならないのです。「それならば各自が居宅介護を申請して、せめて介護者に掛かる費用だけでも支援費で支払うようになさったらどうですか?」と提案すると、「支援費のことはむずかしくてわからない」「コスモスの活動のために支援費を使ってしまうと、通所施設で異端児にみられる」「手続きが面倒だから、支援費の手続きもコスモスが代行してほしい」と、こんな反応ですから、行政側が「パニックにならないように」と情報の調整をするのも一概に非難はできないと思います。

「自己選択」「自己決定」の意識が薄い利用者をみて、コスモスを運営している仲間から、「彼らは本当に自立したいの?」「彼らにはコスモスの活動は必要ないみたいだね」という声も出るようになりました。私も正直なところ「自立支援事業」が必要なのか、わからなくなってきました。「自立したい」と思う人は、「支援」しなくても自立していくでしょうから。

コスモスはスタートして3年目で、大きな難関にぶち当たっています。障害者福祉の「神話」がなくなったことを、皆に知らせるのが私の役割かなーと思ったりしています。

(おかだなおこ 児童文学作家、障害者自立支援センター・コスモス理事長)