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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年8月号

列島縦断ネットワーキング

兵庫 全国盲ろう者団体連絡協議会の設立に向けて

全国盲ろう者団体連絡協議会 設立準備委員会

1 盲ろう者は存在します

(1)盲ろう者とは

目と耳の両方が不自由な人のことを盲ろう者とよんでいます。盲ろう者は障害の程度でいうと、全く見えなくて聞こえない「全盲ろう」から見えにくく聞こえにくい「弱視難聴」まであり、障害歴の点からは生まれながらに盲ろうである者から加齢とともに盲ろうになった者まで含まれます。従って盲ろう者といってもその実態やニーズは実に多様です。

(2)盲ろう者はどれくらいいるか?

厚生労働省(および旧厚生省)の調査に基づく推計値では、1987年が2万4千人、91年が1万3千人、96年が1万7千人、2001年が再び1万3千人とかなりのばらつきが見られます。また先進諸国ではおおむね人口数千人に1人の割合ですから、日本では2万人前後と思われます。

(3)盲ろう者の抱える三つの困難

盲ろう者の抱える困難は、障害の程度や生育歴などによって実に多様ですが、共通の困難としておおむね1.コミュニケーションの困難2.移動の困難3.情報入手の困難の三つをあげることができます。

(4)福祉の狭間におかれた盲ろう者

盲ろう者はこれまでその存在やニーズが顕在化することさえ少なく、十分なサービスを享受できなかったといえます。たとえば視覚障害者に対するサービスは「(目は見えないけれど)耳の聞こえる人」に対するサービスであり、聴覚障害者に対するサービスは「(耳は聞こえないけれど)目の見える人」に対するサービスであったため、盲ろう者はこれらのサービスを利用することが難しかったのです。まさに盲ろう者は福祉の狭間におかれてきたと言っても過言ではありません。

(5)通訳介助者の育成が急務

盲ろう者が社会に参加していこうとする時、必要になるのが通訳介助者です。通訳介助者は盲ろう者に対する援助技術について専門的な知識技能を有し、コミュニケーション、移動、周囲の状況把握、その他について盲ろう者の社会参加を支援する役割を担います。しかし熟練した通訳介助者の数は著しく不足しており、今後の盲ろう者の社会参加の促進を考えた場合、通訳介助者の育成は急務であり、大きな課題のひとつとなっています。

2 当事者組織が必要

(1)いまだに当事者の全国組織がない

1991年にわが国ではじめての盲ろう者支援組織である「(社福)全国盲ろう者協会」が設立され、盲ろう者に対する福祉施策が遅ればせながらスタートしました。

しかし、これまで十分な行政サービスを受けられず、社会参加もままならなかった盲ろう者にとって、当事者が結集して自分たちの存在やニーズを訴えていくことには、大きな困難がありました。そのため当事者の全国組織がいまだに存在しないのです。

このことはたとえば、歴史的にもっとも有名な盲ろう者であるヘレンケラーが過去3回来日した折、彼女を出迎えたのがいずれも、盲ろう者団体ではなく他の障害者団体であったことに象徴的に現れているでしょう。

(2)各地の盲ろう者団体

ただ、全国を統一した当事者組織はないものの、全国各地には盲ろう者を主体として盲ろう者とその支援者からなる盲ろう者団体が34団体あり、地域に密着した活動を行っています。

3 当事者団体発足に向けて

(1)はじまり

平成11年2月、4人の盲ろう者が神戸に集い、それを機に相互の情報交換が始まりました。翌12年2月神戸において7人の盲ろう者が集まり、全国レベルの当事者組織の必要性について話し合いました。

(2)設立準備会の発足

その後、全国盲ろう者協会主催の「全国盲ろう者大会(体験交流会)」や指導者研修会などの盲ろう者の集う場において、当事者による全国組織の必要性について提案を行い、参加者で協議を行ってきました。

平成14年、各盲ろう者団体の代表者会議を開催し、「全国盲ろう者団体連絡協議会設立準備委員会」の発足が承認されました。写真は、去る7月3・4日の両日、岐阜市中央青少年会館にて行われた準備委員会の様子です。

4 全国盲ろう者団体連絡協議会に期待される役割

(1)当事者の意見の集約

これまで述べてきたように、この社会に盲ろう者という障害者が存在することや、盲ろう者固有のニーズがあることが、社会に十分認識されていないことが大きな問題点のひとつです。従って連絡協議会の役割のひとつとして、盲ろう者の存在やニーズを社会に対してアピールすることがあげられます。

(2)盲ろう者団体の発展の支援

全国各地の盲ろう者団体の活動をさらに充実させていくためには、十分な情報や専門的な援助が必要です。そして何よりも、盲ろう者当事者のエンパワメントやさまざまな意味でのスキルアップは、盲ろう者団体の順調な発展には欠かすことができません。連絡協議会は当事者と支援者を含めた盲ろう者団体を有機的にとらえ、盲ろう者団体全体を支援していくことにより、各地の盲ろう者団体の着実な発展と運営に寄与しようとしています。

(3)連携と協力の時代

盲ろう者団体が他のさまざまな団体と連携し、協力しあって活動することが重要です。近年活動が活発になってきた盲ろう児の親の会「ふうわ」や、盲ろう児教育研究会等とも連携を取りつつ、全国盲ろう者協会や全国盲人援護会などの協力を得ながら進めていきたいと考えています。

また世界盲ろう者連盟の活動にも参画するとともに、近い将来日本における盲ろう者の世界会議の開催をめざすという目標も視野に入れて取り組んでいきたいと思います。

(4)日本版ヘレン・ケラーナショナルセンター設立をめざして

長期的な目標として、盲ろう者への総合的なサービス、サポートの提供、盲ろう者関係者・支援者・家族等の支援、教育、研修等の拠点として、「日本版ヘレン・ケラーセンター」の設立が望まれます。そのためにも各地の盲ろう者団体のネットワーク化を強化し、盲ろう当事者の要望やパワーを結集する仕組み作りが欠かせません。

5 おわりに

現在、私たちは全国盲ろう者団体連絡協議会の設立総会の開催について、具体的に話し合う時期を迎えています。日本で初めて盲ろう当事者による全国組織が結成されるという歴史的な日は近いのです。今後ともみなさんの温かいご支援を期待してやみません。