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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年8月号

挑戦!アテネパラリンピック

女子柔道選手
赤塚正美(あかつかまさみ)さん

【プロフィール】

未熟児網膜症による弱視。女子柔道は、今大会からの新種目。48キロ級に出場する。東京都板橋区在住。

―赤塚さんが柔道を始められたきっかけは何ですか。

私が小さいころ、女子柔道では山口香さんが活躍していたので、いつか自分も柔道をやってみたいなと思っていました。柔道を始めたのは、20歳になってからで、今年で12年目です。

―柔道に魅力があるからこそ、続けてこられたと思いますが、赤塚さんにとって柔道の魅力はどんなところですか。

そうですね。技の種類がたくさんあることです。いろんな技を使って、相手を投げることはおもしろいところですね。私は大内刈と背負い投げ、体おとしが好きな技です。技がきれいにかかったときは気持ちいいし、人を投げるなんて、柔道というスポーツの中でしかできないことなので。

技がうまくかかったときは、力がいらないんです。相手の力を利用してそのタイミングで投げるので、体の大きさはあまり関係ないんですよ。

―女子柔道は、アテネパラリンピックからの新種目ですね。それを聞いたのは、いつ頃でしたか。

昨年の5月頃、聞きました。恩師の先生からせっかくのチャンスだからアテネをめざしてがんばってみたらどうか、と言われました。国内代表を決める選考会のひとつとして、昨年8月ケベックで開かれた国際大会に出場したのですが、外国の人と試合をしたのはそのときが初めてでした。そのときの感想は、外国の選手は試合慣れしているし、力も違って、試合に勝つための柔道をやっているということでした。同じ48キロ級でも外国の選手のほうが力も強いです。趣味でやってきた私の柔道とは違っていました。

―実際に外国の選手と試合をして、強さなどを実感したわけですが、今アテネに向けてどのような練習をしていますか。

今練習しているのは、打ち込みをたくさんして、ひとつの技を完成させることです。基本の技の形を身につける練習です。それから、試合時間、体力が持つように、サーキットトレーニングをしています。腕立てや腹筋、背筋、サイドステップやジャンプなど6種目くらいを組み合わせて時間を決めて、何セットかを繰り返してやっています。悩みは、同じ階級の人となかなか練習できないことです。

強い選手に勝つためには、相手の技を研究して、相手の技にかからないように防ぐ練習をする必要があると思います。外国の選手は試合のビデオを撮ったりして情報収集をやっているんですよ。日本はなかなかそういうことをやっていないので、情報がなくて苦労しています。

―そのためには、視覚障害の女子柔道人口が増えることが一番いいことですね。視覚障害のある人たちはどのように覚えるのでしょうか。

そうですね。少しでも女子が増えてくれたらいいなと思って、全日本視覚障害者柔道大会にはずっと出るようにしていました。女子の出場選手がいないとその年は試合がなくなってしまうんです。昨年、アテネの代表選手を決める大会には、48キロ級の人が出てきましたが、その前何年かは試合がありませんでした。

柔道は、技に入るタイミングを覚えるまでに時間がかかります。特に視覚障害者は人が見えないので、相手の動きの中で、いつ技をかけるか、タイミングを覚えることが難しいです。最初は苦労しますが、体で覚えるしかないんですね。でも技がかかったときは、うれしいですよ。

―本番ではどんな試合をしたいと思っていますか。

柔道は日本の国技なので、きちんとした技で勝てる試合をしたいと思います。外国の選手は、レスリングのようなんですね。外国の選手との試合は、いつもと違うので対処できないこともあるんですが、技を完成させて試合に集中したいと思っています。

―最後に本誌読者に一言お願いします。

視覚障害者の女子柔道の種目ができたので、一人でも多くの人たちに見てもらいたいと思います。女子柔道のことを知ってもらって、それがきっかけとなって全国の女子のみなさんに柔道を始めてもらえたらいいなと思います。

(取材・編集部)

酒井絹代先生(武道学園)から一言

女子柔道は新種目で初出場になるので、みんなから期待されています。出場するからには、いい結果を出してほしいです。練習相手がいなくてたいへんな点があるけれど、男の人にも相手になってもらって練習に励んでほしいと思います。