音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年3月号

障害こと始め

障害者の害の字は変である
「害」ではなく『碍』がいいと考える

李鐘成

私たち障碍者は、日本国の条文では障害の(がい)が「害」する(がい)と記されている。

私はとても変に感じています。私たち障碍者は生活するうえで「バリア」があるのに対して、危害の「害」の扱いであったり、危険的な扱いであったりとの考えのようです。

私は日本の山口県で生まれた3世の在日朝鮮人(韓国)です。1歳半の頃高熱を上げてポリオになり、1種1級の障碍者です。私の家はとても貧しく生活してきました。

現在は自立生活センター・ドリームハート博多の代表をしています。私にとっていろんな思いがあります。日本で生まれていなければ障碍者になっていなかったかもしれないとか、いろいろ悩み苦しんできました。朝鮮人と差別され、障害者と差別的にされてきました。「くさい」「きたない」だのと、言われながら生きてもきました。

そんな中で障碍者の苦しみは十分理解していない、『害』の字は許しがたいと考えています。

また、韓国では障碍者を『チャンエジャ』と発音します。そして漢字で書くときは『障碍者』と書きます。それはいろんな歴史も関係しています。

それでは、なぜ日本では「障害者」なのか、辞書で碍と害の意味を調べてみると、

碍:物事のじゃまをする・さまたげられる。また、そのこと。さしつかえ。「碍」は「礙」の俗字です。

害:悪い状態にする。がいする。そこなう。災難。また悪い結果・影響。がい。殺す。がいする。

ということです。

次に、広辞苑で「しょうがい」を調べてみると、

しょう―がい【障害・障碍】シヤウ

(1)さわり。さまたげ。じゃま。「~を乗りこえる」

(2)身体器官に何らかのさわりがあって機能を果さないこと。「言語~」

(3)障害競走・障害物競走の略。

このように、元は「妨げとなるもの」の意味があり、そこから「身体器官への妨げ」の意味に発展したものであると考えられます。

実は、戦前まで日本では「しょうがい」を「障碍」や「障礙」と書いていました。しかし、戦後現代国語を書き表すため、日常使用する漢字の範囲を政府が告示した当用漢字と定めた1858字の中に「碍(礙)」という字は入りませんでした。

入らなかった理由として考えられるのが、「障」と「碍(礙)」が共に「さしつかえる」という意味の単語であり、共に、「何かを行うときに差し支えること」を指す時に使うからのようです。

たぶん、ここに原因があると思います。これにより、二つ重なってしまった自動詞のうち「碍(礙)」が当用漢字から外れてしまい、「碍(礙)」と同じ発音の「害」に置き換えられた(当て字として使われた)との説があります。

ちなみに、

「碍」の本来の意味は「何かしたくてもできない状態」の意味合いだそうです。

「害」とはものごとを「傷つける」という他動詞的な漢字であり、他に対して危害を与えることであります。

実は「障碍者」の碍の字を使っているところは私たちだけかなぁと思っていましたが、近年、「害」の字はおかしい!と声を挙げる方々が多くなり、「障碍者」、もしくは「障がい者」でいこうと言う声がたくさん聴こえてきています。

障碍者は、障害者ですか? 障碍者はだれかを傷つけていますか? 危害を与えていますか?

私は聴きたい。「碍」と「害」が同じ発音だからと言って、障碍者を障害者と置き換えた人たち(国)はどんな気持ちで置き換えたのか…。

私たちはモノや障害物ではありません。一人の人間です。人間は「害」では無いはずです。

こういうさまざまな意味合いから、自立生活センター・ドリームハート博多では、「障碍」として「碍」の字を使うようになりました。

(イ・ジョンソン 自立生活センター・ドリームハート博多)


第29回総合リハビリテーション研究大会について

日時:2006年10月27日(金)・28日(土)

場所:全社協・灘尾ホール

2006(平成18)年度の第29回総合リハビリテーション研究大会は、「障害者の権利保障確立に向けて(仮題)」をテーマに、現在国連で審議が進められている「障害者権利条約」をはじめとする国際的動向や、転換期にあるわが国の障害者施策と実践のあり方について、次のようなプログラムを企画中です。

プログラム(案)

<10月27日(金)>

  • 午前
    基調講演、特別報告<テーマ(案)障害者の国 際人権保障に向けて>
  • 午後
    シンポジウム 障害者団体、行政、専門職団体、学識経験者、等

<10月28日(土)>

  • 午前
    分科会<テーマ(案)インクルーシブな地域社会 実現に向けて>
    重度障害者と地域生活、バリアフリーと情報・コミュニケーション、雇用、教育、等
  • 午後
    分科会まとめ

*テーマ、プログラムは企画中で、変更することがあります。

問い合わせ:(財)日本障害者リハビリテーション 協会 企画課
TEL 03―5292―7628
FAX 03―5292―7630