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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年6月号

新潟市における取り組み

新潟市市民局保健福祉部障害福祉課

1 合併の背景

新潟市は、昨年2度の合併(注1)により、近隣の13市町村を編入し、人口81万人を有する都市となりました。

以前より、編入13市町村と旧新潟市では、通勤、通学、医療サービス、企業の経済活動などで一体化が進み、将来のまちづくりを考えるうえで、住民はもとより、さまざまな機関や企業、関係団体から、地域ごとの機能分担や地域間の連携を図ることが求められていました。つまり、各市町村で別々に実施してきた福祉、医療、環境などの広域的な諸課題への対応や、各種事業の一体化と効率的な実施を可能とするためにも、「ひとつ」であることが求められ、それが、政令指定都市移行をめざした大合併への潮流となっていきました。

これは、障害福祉の分野においても同様で、生活圏域の一体化が進む中にあって、各種サービスや施設の利用などの地域間格差の解消が図られることへの期待が大きくなっていました。

2 編入市町村における変化

(1)障害福祉サービス

合併に伴う編入市町村における障害福祉サービスは、旧新潟市のサービス水準に合わせることを基本としたことから、編入市町村においては、一部のサービスについて水準を引き下げたものの、サービス水準が向上したものが多く、「総合的にサービス水準は向上している」と評価しています。

サービスが引き上げられたもしくは拡充された主な事例としては、福祉タクシー利用助成(タクシー券の配布)、自動車燃料費助成(タクシー券との選択制で年額25,920円)、住宅リフォーム助成制度(最高限度額100万円で限度額まで複数回利用可)、紙オムツ支給事業、心身障害者施設通所等通所費助成、支援費施設利用者負担金軽減事業(施設利用者自己負担金の2割軽減)、小規模作業所運営費補助金などが挙げられます。

中でも、小規模作業所運営費補助金は、1施設当たりの補助金額で新潟市は約1,120万円と全国の都市の中でも極めて高い水準(「きょうされん」の地方自治体単独補助金制度調査による)にあり、また、自動車燃料費助成や紙オムツ支給事業も、制度が無かったもしくはサービス水準が大きく引き上げられたことから、高く評価されています。

しかし、これとは逆に、県制度の重度心身障害者医療費助成における上乗せ助成や小中学校における入学・卒業時の祝品支給など、編入市町村独自のサービスを旧新潟市の水準に合わせることとして、サービスを廃止または引き下げた事例もありました。

こうした事例については、新市全体での適用の可能性も協議しましたが、すべてのサービスを高い水準に合わせることは困難であり、総合的なサービス水準が最も高かった旧新潟市に合わせることで、福祉サービス全体の水準が向上することから、経過措置を設けたうえで廃止するなど、引き下げの対象となる方への配慮を行うこととしました。

このように、合併調整の過程においても、全体的に新規適用または拡充となる事業が多かったため、総合的に障害福祉サービスが向上すると評価され、制度調整は比較的円滑に行うことができました。また、政令指定都市移行に向けて、小さな市町村ではできなかった専門的な障害者支援や広域的なサービス提供体制の確立などの多くの期待も寄せられています。

なお、現在、合併後の効果・影響に関する検証作業を行っていますが、現時点での評価(注2)では、「総合的にサービスは向上した」ものと考えています。

(2)サービス提供の体制

合併後におけるサービス提供の体制づくりについても、大きな期待や要望が寄せられました。

中でも、サービス提供事業者に係る地域間格差の解消に関する期待が大きく、とりわけ、政令指定都市移行に伴う自治体権限の拡大等による効果に期待するものが多いといえます。

その一方で、行政組織としてのサービス体制に関して、合併により大きくなり過ぎて「市役所が遠いもの」とならないよう、身近な区役所でのサービス提供体制の充実が望まれています。

3 政令指定都市移行に向けて

(1)政令指定都市への展望

来年4月の本州日本海側初となる政令指定都市移行に向けて、現在、着実に、かつ、急ピッチでその土台づくりを進めています。

本市では、市民が支えあい、学びあって「共に育つ」ことを大きな理念として、新潟地域が持つその特性を踏まえ、港・空港と高速交通体系を生かし東アジアと向き合う「日本海政令市」、高次都市機能と自然環境が調和し共存する「田園型政令市」、地域の力を大切にして市民と行政が協働でまちづくりを進める「分権型政令市」という、これまでにない新しいタイプの政令指定都市をめざしています。

このような都市像は、合併時の「協議」に基づくもので、とりわけ、「分権型政令市」は、地域のことは地域が考え自ら解決していくという地域内分権を推進しようとするもので、市民と行政が協働して地域づくりを行うことをめざしています。

この「分権型政令市」による地域づくりは、障害の有無にかかわらず、だれもが住み慣れた地域や家庭で安心して生活できるよう、地域の力を生かした地域福祉の充実を大きな柱としています。

また、そのために、身近な行政サービスは身近な区役所で完結できるよう、権限を伴う「大きな区役所」の実現を標榜しています。

(2)政令指定都市移行の土台づくり

政令指定都市移行の準備段階に当たる今年度は、身体、知的、精神の三障害に係る障害福祉サービスを一元化し、一体的な取り組みを行うこととして、精神保健分野を障害福祉課に移管し、また、政令指定都市移行後の区役所における三障害一元的な福祉サービスの提供体制を整えることとしています。

加えて、今年度は、障害者自立支援法の施行に伴う福祉サービス利用者負担に対して、三障害共通の軽減策など市独自の制度(注3)をスタートさせています。

(3)中核市から政令指定都市へ

中核市の現在も県から相当の権限移譲はありますが、政令指定都市移行後はさらに多くの権限移譲があり、保健・福祉の分野では精神保健福祉センターの設置や、児童相談所に併設することとした身体障害者及び知的障害者の更生相談所の設置によって、障害に関する相談をはじめ、精神障害者保健福祉手帳や療育手帳の発行など、より市民に身近なところでのサービス提供が可能となります。

しかし、本市では「保健・医療・福祉の最先端都市」実現をめざしており、県からの権限移譲によるものに限らず、より多くの権限と機能を持つ区役所、つまり「大きな区役所」を中心に、地域福祉の充実など、さらなる住民福祉の向上を図っていきたいと考えています。

4 おわりに

現在、平成19年度を初年度とする障害者計画の策定と障害福祉計画の策定を同時に行っており、新生新潟市にふさわしい計画を作り上げたいと考えています。そのため、全国の自治体、関係団体等の皆様から、多くのご指導とご支援を賜れますようお願い申し上げますとともに、これまでに頂戴いたしました数多くのご教示に対し、厚くお礼申し上げます。

(注1)合併期日等:平成17年3月21日、3市4町5村と合併。同年10月10日、1町と合併。図「新潟市の合併の状況」を参照。

(注2)合併協議・調整等に係る市民意見については別に作業をしていますが、支所(編入市町村ごとに設置)からの検証意見を中間集約したもの。表1「合併による編入市町村への効果・影響」(抜粋)を参照。

(注3)新潟市では、従来からも独自の施策を講じてきていますが、新たに生じる負担増などへの激変緩和措置として講じるもの。表2「障害者自立支援法施行に伴う新潟市独自の施策(事業)」を参照。

図 新潟市の合併の状況(地図上の表示は旧市町村)
図 新潟市の合併の状況拡大図・テキスト

表1 合併による編入市町村への効果・影響(抜粋)

No. 事業名 良くなった 変わらない 悪くなった 備考(効果・影響の最も多い数字の主な理由)
心身障害者福祉タクシー利用料金等助成事業 12 福祉タクシー助成券配布枚数が増えた。
自動車燃料費助成 12 自動車燃料費の助成が受けられるようになった。助成額が増えた。
障害者住宅リフォーム助成事業 一部助成を受けられるようになった。助成限度額が増額となった。
身体障害者手帳交付事業 県経由から市の事務となり、申請から手帳交付までの期間が短縮された。
補装具給付事業 11 ストマ用装具購入の自己負担額の助成が受けられるようになった。
障害者訪問入浴サービス事業 新たに訪問入浴車の派遣を受けられるようになった。
手話奉仕員及び要約筆記奉仕員派遣事業 新たに奉仕員の派遣を受けられるようになった。
知的障害者授産施設通所経費助成事業 11 通所経費の助成が受けられるようになった。
障害者住宅整備資金融資事業 13 貸付限度額が増額した。新たに融資制度を受けられるようになった。
10 身体障害者スポーツ振興事業 13 障害者大運動会に参加できるようになった。
11 精神保健福祉事業 事業の対象地区が拡大され、利用できる機会が増えた。精神障害者の社会参加につながった。
12 精神障害者医療費助成事業 10 入院費の助成を受けられるようになった。適切な治療が継続されると同時に経済的負担が軽減される。
13 精神障害者短期入所事業 日帰り利用が可能となった。指定施設が増え、利用場所の選択肢が広がった。
14 精神障害者通所作業所等補助事業 交通費の助成を受けることが可能となった。
15 リフト付タクシー利用券 11 リフト付きタクシーと小型タクシーの料金差額を受けられるようになった。
16 新潟市重度心身障害者福祉手当 11 重度心身障害者が福祉手当の支給を受けられるようになった。
17 車いす障害者健康診査 12 車いすを使用する身体障害者が基本健康診査を受けたり、その費用の助成を受けられるようになった。

表2 障害者自立支援法施行に伴う新潟市独自の施策(事業)

事業名 概要
障害福祉サービス利用者負担額軽減 従来からの身体・知的の施設サービス利用者の負担額2割軽減を、3障害共通で居宅サービス利用者まで拡大
社会福祉法人減免の拡大 社会福祉法人による利用者減免を民間事業所利用者にも適用
知的障害者施設入所者への医療費助成 重度心身障害者医療費助成制度(県障)の対象とならない者に対して、法改正に伴う経過措置として同制度と同様の医療費助成を行う
現行利用者のサービス水準を確保 障害程度区分判定により、現行サービスが低下することのないよう支援を行う
  • 審査会によるサービス給付非該当者への支援
  • 重度障害者に対する現行サービス量の確保