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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年6月号

1000字提言

地域づくりは相談支援体制から…

原田みち子

障害者自立支援法がこの4月に施行された。

高齢者福祉が介護保険導入により大きく変化したように、障害者福祉も過渡期を迎えている。

高齢者福祉の歩みを振り返ってみると、介護保険施行前は、市町村の窓口に措置のお願いに行くという体制だったから、利用者自らがサービスを選ぶということはできなかった。「在宅介護支援センター」の設置に伴い、相談支援と連絡調整ができる体制が整い始めた。そして介護保険導入と同時に、サービス利用調整は「居宅介護支援事業所」の役割となった。「在宅介護支援センター」の役割も変化し、介護保険が適用とならない部分を担うことになった。そして今年度からは「地域包括支援センター」が「居宅介護支援事業所」と役割を分担することになった。介護保険施行後6年で、民間と公的機関の役割分担の体制ができてきたといえる。

この間、高齢者福祉のサービス事業所は爆発的に増え、サービス選択の幅も広がった。しかしケアプランを立てる「居宅介護支援事業所」は「サービス提供事業者」でもあるため、利益誘導や、相談支援の抜け落ちた給付管理だけのケアマネジメントをも招く結果となった。

相談支援とケアマネジメントは、障害者自立支援法においても、制度の核である。そして障害者自立支援法の中では、相談支援体制の整備は、市町村の手に委ねられている。

今現在は、利用者が市町村にサービス利用申請を行い、市町村が聞き取り調査とサービス支給量を決定するという流れができている。利用者への支給決定通知書には、いつ、何のサービスを何時間利用できるという記載があるだけである。「何のために、何を目標に」が抜けている。相談支援がないからである。地域に何が必要なのかは、一人ひとりの「何のために、何を目標に」の集約から分かることである。だからこそ相談支援は重要なのである。

介護保険ではすべてのサービス利用者にケアプランが必須であるが、自立支援法では必須とされるのは退院・退所時と困難事例に限られている。ということは、大半が今と同じような流れで支給決定される。ケアマネジメントが抜け落ちる可能性が大である。

相談支援を民間委託すれば、介護保険と同じ過ちを繰り返すことになりかねない。かといって市町村が窓口となる今の体制では、地域のニーズを把握し地域づくりをめざす体制にはなりにくいということである。

住みやすい地域づくりをめざすためには、あらゆる利益から独立した、市町村窓口とも別の相談支援体制を作る必要がある。どうすればそれが実現できるのか、今、地域で真剣に考えるべきことであると思う。

(はらだみちこ 高崎・安中圏域障害者相談・生活支援センター 相談・生活支援アドバイザー)