音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年6月号

1000字提言

「モバイルの点字辞書がほしい!!」

西政宏

私は全盲で英語の教員をしている。当然予習をして授業に臨むのだが、発音に自信の持てない英単語や意味の記憶が曖昧なものが時折ある。そんなときに、手軽に携帯できる、電子辞書のようなものが私にもあったら!と常々感じていた。最近は電子辞書を持っている生徒も多く、このままでは生徒のほうが意味調べは速くできるくらいである。教師としては、それらは専門に関する所であり、生徒に全面降伏というのは悔しい。

そこで、教壇に立ちながら、つまり外出先で、辞書を引く方法について、思いを巡らせていた。パソコンを使って音声ガイドで辞書を引くことはすでに可能である。しかし、英語の発音が完璧でなかったり、日本語の読みに誤りがあったりする。また、音声のみのガイドでは、詳細をチェックするのが、私には難しい。点字ディスプレイとパソコンを組み合わせると、発音や日本語の読みなど詳細にチェックできるが、両方を合わせるとかなりの重さと嵩になり、持ち運びは大変である。

そこで以前から目をつけていたのが、点字用の電子手帳である。大きさがB5サイズ以下とかなり小さい。パソコンからデータを送信したり直接入力したりしたものを点字で読める。検索機能もある。ただ問題が一つ。国産の点字電子手帳では、辞書のデータを入れるには記憶容量が足りない。

そんなとき、インターネットで、コンパクト・フラッシュ・カードを自由に増設できる外国製の点字電子手帳を見つけた。重さも500gと軽い。カードは1~2GBと大容量の物も発売されており、これなら辞書を複数入れられる。試しに個人で購入して使ってみた。点字データなら日本語も英語も問題なくパソコンとデータを送受信できる。検索機能もあり、文書内から特定の文字を探すのも瞬時にできる。これこそ私が長い間求めていたものであった。

残る問題は二つ。点訳した辞書のデータの入手と辞書編集者の著作権である。点訳された辞書はあるが、その点字データを一括して管理している団体を、私は見つけることができなかった。また、それが手に入ったとして、個人の点字電子手帳にそれら辞書のデータを移植するに当たって、著作権が適性に扱われるよう検討する必要がある。

私のような全盲の人が、大学の授業や職場で辞書を引きながら専門的な仕事に携ったり、ネット上に公開されているサイトから英語や日本語の文学作品やニュース記事を自由にダウンロードし、通勤の電車やバスの待ち時間などに、辞書を引きながら読める日は近いと、今ワクワクしている。点字使用者の職域や統合教育の拡大のためにも、前記二つの問題を解決できる道を早期に検討できないものだろうか。

(にしまさひろ 福岡県立福岡盲学校(英語科)教諭)