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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年6月号

ほんの森

『自立を支援する社会生活力プログラム・マニュアル』

評者 阿部順子

企画/日本リハビリテーション連携科学学会・社会リハビリテーション研究会
中央法規
定価/3,000円(税別)
〒151―0053
渋谷区代々木2―27―4
TEL 03―3379―3861
FAX 03―5358―3719

社会生活力(Social Functioning Ability、略称SFA)という用語を聞いたことがありますか。「社会生活力とは、さまざまな状況の中で自分のニーズを満たし、一人ひとりに可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する」(RI、1986)と本のまえがきに記されています。

1999年に主に身体障害のある方々を対象にした同名のマニュアルが出版されています。それに比べると今回はB5版でコンパクトな仕様になっていて、持ち運びに便利です。一方、中身は生活の様子が具体的にイメージできるようなヒントが満載され、充実したものになっています。1999年に設立された日本リハビリテーション連携科学学会と社会リハビリテーション研究会の活動が凝縮されて詰まっているといっても過言ではないでしょう。

今回、知的障害や高次脳機能障害のある人たちを対象にしていることもあって、現場で戸惑うことの多いプログラムの進め方について、実施者をファシリテーターと位置づけ、集団において参加者の学びを促進するためのノウハウが具体的に示してあります。

私は3月まで、名古屋市総合リハビリテーションセンターにおいて高次脳機能障害者の支援に関わってきました。彼らの多くは在宅において家族のケアを受けて暮らしています。在宅ケアニーズ調査(2005)によると、最も支援が必要だったのは、対人関係や契約・手続きなどの社会活動に関わる項目で、次いで金銭管理をはじめとする生活管理に関わる項目でした。

そこで早速「モジュール6金銭管理」の頁を開いてみました。学習目標2「お金を計画的・安全に使う方法を学ぶ」を見ると、毎日のお金の管理方法のヒントが載っていて、長所と短所が整理されています。これらの中から自分の行動に見合った方法を納得して試していくことができれば、より自立的に行動できるようになるのではないかと思わされました。ここには「お金をめぐるトラブルの対処方法を学ぶ」項目もあります。

障害のある人や認知症のお年寄りがだまされる被害が急増している昨今、契約や携帯電話、インターネットなどのトラブルに巻き込まれないためのノウハウが、地域で生活するうえで重要になってくることでしょう。話し合いのヒント以外にも、ところどころにコラムが散りばめてあるので、プログラムを実施するかどうかにかかわらず、楽しみながらミニ知識を得ることができる本です。

(あべじゅんこ 岐阜医療科学大学)