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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年7月号

重点連載 障害者自立支援法と自治体施策

伊丹市における利用者負担軽減策

伊丹市

はじめに

わが国は世界に類を見ない少子高齢化が急速に進み、「人口減少化社会」に突入したと言われています。本市においても、15年後には現在19万3千人の人口が約1万人減少するものと見込まれ、現在16.3%である65歳以上の高齢化率は24.8%になると推計されています。その結果、高齢者1人を支える就労人口は11人から2.4人に大幅に減少し、就業人口の若年化が予測されています。

利用者負担軽減策実施の経緯

こうした人口減少化社会においては、年金・介護・医療費用の増大等により、これまでの社会保障や社会福祉の諸制度は持続することが極めて困難となってくることが予想され、限られた財源の効率的な再配分は喫緊の課題であり、個人給付の見直しなど施策の転換が求められています。

このため、本市におきましては、昨年度に福祉施策全般にわたって見直しを行い、高齢者、障害者が地域で自立した生活を送るための生活支援、就労支援、介護予防等の健康対策のほか、子どもを安心して生み育てることのできる子育て支援施策の構築を図るため、今後の福祉施策のあり方について福祉対策審議会に諮り審議をお願いしました。

障害福祉施策の充実

この中で障害福祉施策については、本年1月に策定した「第2次伊丹市障害者計画」を着実に進めるべく、権利擁護やケアマネジメントなど総合的な相談支援体制を整備するとともに地域生活への移行支援、職場開拓、ジョブコーチの設置などきめ細かな就労支援施策の充実を図ることとしました。

また、障害者自立支援法の施行に伴う事業の円滑な実施に向け、利用者の費用負担の激変緩和について配慮が必要との判断から、一定の軽減策を講じることとしました。

伊丹市の利用者負担軽減策

支援費制度の下では利用者負担率は1.1%と極めて低い状況にありましたが(在宅サービス利用の場合)、障害者自立支援法の施行後は、原則としてサービス利用料の1割が利用者負担となります。

自立支援法においても負担軽減策は講じられていますが、家族と同居している場合は負担軽減の対象にならない場合が多く、その一方で市民福祉金、医療福祉制度が見直しをされることから、利用者負担が急激に増加することが予想されるため、段階的に利用者負担の軽減策を講じ、激変緩和を図ることを目的に市単独施策として実施するものです。

1.低所得者に対する月額負担上限軽減補助

国においては、定率負担の導入に伴う低所得者対策として、市町村民税非課税世帯に対しては所得に応じて段階的に軽減策を講じていますが、本市においては、国の負担上限額より低い基準額を設定し、さらに低所得1の階層を2段階に分割して低所得者への配慮を行い、利用者負担額が本市の基準を超えた場合、その2分の1を助成することとしています(図1参照)。ただし、施設入所の方は対象となりません。

図1

  伊丹市基準額 国負担上限額
生活保護者 0円 0円
低所得1その1 8,000円 15,000円
低所得1その2 13,000円
低所得2 13,000円 24,600円
一般世帯 37,200円 37,200円

この補助制度は介護保険において市単独の補助制度としてすでに実施しており、障害福祉の分野においても同様の扱いとしたものです。

2.在宅サービス利用者に対する月額負担上限軽減補助

対象は、17年度中に在宅サービスの提供を受け、18年度以降も引き続きサービスを利用する人に対し1年目7割、2年目5割、3年目3割をそれぞれ補助するものです(実費負担分除く)。

また、この補助制度は低所得世帯だけでなく一般世帯にも適用することとしています。

なお、利用者負担の補助対象を在宅サービス利用者としたのは、施設入所者については従来から一定の負担を行っており、その意味において「負担の激変」には当たらないとの理由によるものです(18年度予算額4,500万円)。

おわりに

本年4月に障害者自立支援法が成立しました。この法律は、障害者基本法の基本的理念にのっとり、障害のある方がその有する能力及び適性に応じ、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう必要な支援を行い、障害のある方の福祉の増進を図ることを目的としています。その目的達成のためには、障害のある人にとって最も身近な存在である市町村の果たす役割はますます重要になってきます。10月からは、市町村の真価が問われるといっても過言ではない地域生活支援事業もスタートします。

本市においては、利用者、サービス事業者等関係者との協議をすすめながら、サービスメニューの充実を図り、さらに地域生活を送るうえで欠かすことのできない相談支援、就労支援等を積極的に推進し、障害のある人が生まれ育った地域で安全に安心して生活することができるよう努めていきたいと考えています。

(伊丹市健康福祉部障害福祉課)