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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年12月号

特別企画

2006 私が選んだ今年の5大ニュース

北海道
桂律也(かつらりつや)

クラーク病院(札幌市)リハビリテーション科医師、日本リハビリテーション工学協会理事、日本チェアスキー協会員、日本リハビリテーション医学会専門医。障がい者が描かれている絵本コレクター。

1.身体障害者スポーツ国際大会で日本人選手(チーム)大活躍

代表的な出来事でも、トリノパラリンピックのメダルラッシュ、ウィンブルドンでの国枝・斎田ペアのダブルス優勝、大分国際車いすマラソンでの笹原選手の男子フルマラソン日本人初優勝などが挙げられる。すそ野が広がるほど頂きが高くなることを実感している。今後は、日本選手団としてオリンピック(メダル1つ)同等の強化策が必要と考える。

2.某ホテルチェーンでハートビル法対応などを偽装

ホテル業界の先端を行く対応にならない限り、利用しないと決めている。あの社長さんは、ほとぼりが冷めるのを待っているだけのような気がしていたが、HPで社内のユニバーサルデザイン対応化委員会を公開している。これがポーズだけでないことを祈る。

3.日本リハビリテーション工学協会20周年

この20年で何が変化したか?リハ工学は障がいのある人々に何をもたらしてきたか?これから何をしていくのか?と考える良い機会であった。「ユニバーサルデザインも必要だが、スペシャルデザインも必要」という印象的な一言に出会った。

4.障害者自立支援法施行

一言だけ。1割とは言え「応益負担」となった以上、「益」の質に対して発言する権利が利用者にはある。

5.障害者権利条約草案合意、次期総会で採択へ

この草案に書かれている社会が(当たり前の社会だが)実現すれば、前記1~4に潜む課題も解決すると確信している。わが国の対応を見守りたい。


宮城県
武田元(たけだはじめ)

とうふ作りを全国へ広める事業を展開している知的障害者通所授産施設「蔵王すずしろ」施設長。養護学校の教員時代から、障害者の働く場作りと運営に携わる。現在11の通所授産施設(分場を含む)と9か所のグループホームを運営する社会福祉法人はらから福祉会理事長を兼務。利用者全員に月額賃金7万円の支給をめざしている。

1.蔵王すずしろ、ついに月額賃金10万円を超える利用者誕生

今年から通い始めたSさん、寡黙ながらあれよあれよという間に、にがり入れをマスターしてしまいました。9月の給料日は10万円を突破しました。とてもうれしい。

2.手づくりとうふ工房、全国で16か所オープン

蔵王すずしろから豆乳を提供してとうふを製造販売してもらう「手づくりとうふ工房事業」が、熊本まで広がりました。全国の障害者の賃金が上がるといいな、と切に思います。

3.障害者自立支援法4月施行、応益負担で自立遠のく

蔵王すずしろの今年の利用者月額賃金は平均約6万円です。自立は目前と思ったら、手取は昨年度の半分以下になっていました。この法律の下では、自立はできません。

4.障害者自立支援法による報酬日額計算で施設の収入は激減

さまざまな法人負担、それに報酬の日額計算が加わって施設への収入は激減しました。新事業体系へ移行するともっと減るとか、施設の存続をかけた戦いを始めたい。

5.10月31日、東京日比谷へバス3台を連ねて、大フォーラムへ

きょうされん宮城支部は東京在住の支援者も含めて203人が、日比谷から国会へのデモに参加しました。朝5時から夜10時までの行動でした。これからも頑張るぞ。


茨城県
白澤麻弓(しらさわまゆみ)

筑波大学博士課程心身障害学研究科修了後、同大学技官を経て、筑波技術大学助教授。日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)事務局。手話通訳士。博士(心身障害学)。

1.障害学生修学支援ネットワークによる相談事業開始

特別支援課を中心に、障害学生への支援を進めてきた日本学生支援機構が、本年10月より相談事業を開始した。全国の拠点大学・協力機関を中心に、個別大学からの相談を受け付けるもので、障害学生を受け入れた大学へのノウハウ普及をねらう。

2.筑波技術大学、4年制大学として新入生受け入れ

昨年10月に4年制大学として開学した筑波技術大学で、今年4月、4年制大学としては初めての学生が入学した。約4倍の難関をくぐり抜けてきた学生たちの力量はいかに?全国の聴覚障害教育関係者達の注目が集まっている。

3.障害学生支援コーディネーター採用の動き高まる

2000年以降、学内に障害学生支援室等の組織を設け、全学的支援体制を構築する大学が増加する傾向にあるが、今年は特にそうした支援室の職員を専任で採用する動きが高まりを見せてきた。特に関西方面でこの傾向が強く、今後全国に波及することが期待される。

4.PEPNet-JAPAN、第1期事業遂行

PEPNet-Japanの第1期事業が修了し、活動成果としてのコンテンツが全国の大学に向けて公開された。聴覚障害学生支援に関わるさまざまなトピックをまとめたTipSheetや各大学でノートテイカーの養成をスムーズに進めていくための手引きなど、すぐにでも活用できる情報が存分に盛り込まれてる。

5.国連障害者の権利条約採択へ

かねてより審議が続けられてきた国連障害者の権利条約であるが、いよいよ採択に向けた動きが加速し始めた。聴覚障害分野では、言語としての手話や教育の場におけるコミュニケーションの保障等が明確に規定されており、高等教育現場への影響力が注目される。


群馬県
勅使川原洋子(てしがわらようこ)

群馬県精神科救急情報センターに勤務。警察官等からの通報に基づく精神科救急業務を担当。保健所の勤務が長く、精神障害者の地域支援活動を行ってきた。保健師。

1.障害者自立支援法の施行

三障害の障害者が、平等にサービスを受けられるようになりました。混乱の中10月からスタートしましたが、やはり、精神障害者対策の遅れは、まだまだ取り戻せません。今後、多くの課題を関係機関が協力して解決していかなければなりません。

2.群馬県精神科救急情報センター3年目

こころの健康センターと精神科救急情報センターが一体化し、一見複雑な組織ですが、機能的なセンターが誕生しました。さらに機能の充実と業務のシステム化により、行き届いた質の高い県民サービスをめざします。

3.群馬県で初の医療観察法対象者

これまで、触法の精神障害者も含め、地域のすべての処遇困難者に対して、当センターの「精神科アウトリーチ」で地域ケアを実践していました。今年初めて、医療観察法の審判による処遇決定者が出ました。

4.「精神科アウトリーチ活動」4,500件突破

保健所等からの依頼により、必要なところには出向き相談を受け、訪問し、支援会議を実施しています。支援ネットワークづくり、問題解決のための検討を行い、医療中断者を継続治療に結びつけるなど成果を上げています。

5.子どもたちの自殺

毎日、さまざまな自殺の記事が新聞に載っています。最近は、子どもの頃の辛い体験を語り、克服した現在の心境をこころから伝えているものが掲載されていました。こうした記事が、多くの人の心に届くことを祈らずにいられません。


東京都
天野聖子(あまのせいこ)

1949年東京中野生まれ。上智大学卒後、精神病院にケースワーカーとして15年勤務。その後、国立市で友人と共同作業所棕櫚亭を設立。10年後(社福)多摩棕櫚亭協会を設立。近年は就労支援に力を入れているが、当事者の力の増大と社会の変化が噛み合っていくような実践を模索中。

1.雇用促進法改正…精神障害者も雇用率に算定される

これは画期的な出来事で本当にうれしい。けれどすぐに企業に紹介できる人たちがどのくらいいるのか、受け入れてくれる企業がどのくらいあるのか気がかりです。押し出す側の力も受け止める側の度量も必要とされる大きな変化です。

2.国事業の「就業・生活支援センターオープナー」開所

社会の受け入れは変わりつつあるということと、それにしても職場の中はますます厳しく、障害者にとっては高すぎるハードルがまだまだある、何とかせねばと思っています。

3.職員の定年

一緒に棕櫚亭を作り上げた職員の退職、定年を迎え(継続雇用で残るとはいえ)感慨深い思いがあります。毎日必死になって走っているうちにこんな歳になってしまったのね(きゃあ)。上手なバトンタッチをしていくにも変化の激しすぎる状況に気ばかり焦ります。

4.障害者自立支援法成立

理念はすばらしいけれど、厳しい数字と急激過ぎる変化にやはり戸惑っています。それにしても事業体系の移行と収入激減による組織の再編は悩ましい課題です。

5.はれのちくもり―ピアス物語―完成

おそらく全国で初めての精神障害者の就労支援を漫画にした物語。ピアス利用者、OB、職員、作者、出版社が皆で作り上げました。長期入院者の無念の思いを受け止めた主人公が就労センターピアスに来て就職するまでを描いています。病気との葛藤、家族の辛い思い、友情や恋愛などをちりばめたノンフィクションに近いコミックです。絶賛発売中。


東京都
金政玉(きむじょんおく)

1955年生まれ、1990年から当事者として在日外国人障害者の無年金問題に取り組む。現在は、DPI障害者権利擁護センター所長、JDF(日本障害フォーラム)障害者の権利条約推進委員会委員長を担当。

1.国連障害のある人の権利条約草案が特別委員会(8月)において採択

条約草案は、障害のない人が有する以上の権利を創設するものではないというのがコンセプトだったが、実質的平等を確保するための「合理的配慮」等の新しい概念を盛り込んだ今世紀初の大きな分野別人権条約であり、戦後、半世紀にわたる障害当事者とそれに関わってきた人の運動が生み出した成果。

2.学校教育法の改正

新条文「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園においては、(略)教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児に対し、(略)障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする」(第七十五条第一項)をインクルーシブ教育の手がかりにしたい。

3.千葉県障害のある人への差別をなくす条例の採択

紆余曲折があって実現した条例。粘り強く取り組まれた地域の関係者の皆さんに心から敬意を表したい。

4.新バリアフリー法の制定

制定において当事者の意見を反映しようとする努力には一定の評価はできるが、交通機関や建物の利用拒否があった場合の苦情等を受け付ける機関はつくられていない。差別的取り扱いをなくす仕組みが必要。

5.障害者自立支援法の見直しを求める声の広がり

見直しを求める1万5千人の「10.31フォーラム」。国際人権法上の社会権は「漸進的な実施」が基本的解釈だが、少なくとも後退的措置はダメであることが前提。アンケート調査等では「自立した地域生活」が後退している回答が多く寄せられている。抜本的な見直しが必要。


神奈川県
松山智(まつやまさとし)

東京愛育苑金町学園非常勤児童指導員。その他、手話サークルや学校機関で実体験をもとに講演も行う。ほかに、エッセイの執筆。拙著『僕はサイボーグ』(新風社、2004)。

1.障害者自立支援法施行

2005年10月31日に「障害者自立支援法」が成立し、今年10月から本格施行。障害者自立支援法の成立まで、障害児・者の歴史的経緯は、時代の背景を反映させているとも言える。障害者の地域生活支援をどのように展開していくのか、今一度検討する必要があるのではないか。

2.特別支援教育体制へ移行

聾学校教員の人事異動、そして統廃合が急速に進んでいる。聾学校が聴覚障害児の全人的成長の場として固有の存在理由があることを考えると、聴覚障害教育における指導法の専門性を継承・発展させていく場としての聾学校は、各県1校以上の存続は不可欠。

3.全聴教会長、前田氏から遠藤氏へ

夏の岐阜シンポジウム時で、前田氏から遠藤氏にバトンタッチ!新体制が今始まろうとしている。その他役員も大幅に人事異動され、フレッシュ化。来年の夏のシンポジウムが楽しみだ。

4.聴覚障害者を狙った犯罪

聴覚障害者が、東京の福祉関連会社「(株)コロニーワイズ」社長から「高い利息を払う」ともちかけられ現金を預けたものの、返金されていない。社長らは手話を使って勧誘していた。30人以上が被害を受け、総額2億円以上。「人をみたら泥棒と思え」と言うように、おいしい話には裏があることを肝に銘じておかねばなるまい。

5.デフプロレス開催

聴覚障害者のみで開催された「闘聾門ジャパン」。全国から470人が集まった。あらゆることにチャレンジしていくことで、不可能を可能にしていけることが立証できた。


神奈川県
宮本晃(みやもとあきら)

1990年神奈川県総合リハビリテーションセンター入職(1999年、9月退職)。1999年10月横浜市総合リハビリテーションセンター入職、車いす、姿勢保持装置の研究開発、臨床評価、臨床サービス業務に工学技師として従事。

1.ヤマハ発動機IPC障害者アルペンスキーワールドカップ2006志賀高原大会に参加

1月末、IPC―ASD(国際パラリンピック委員会障害者アルペンスキー部会)公認の障害者アルペンスキー競技大会が日本で初めて開催された。参加12か国、147人の選手が全力を尽くして競技に取り組む姿を多くの方に見て応援していただくことができた。

2.2006年トリノ冬季パラリンピック競技大会に参加

3月、イタリアのトリノで開催された冬季パラリンピック競技大会に日本選手団アルペンスキー用具担当スタッフとして参加した。アルペンスキー競技では、金1個、銀4個、銅1個、ノルディックスキー競技では、金1個、銀1個、銅1個と好成績を収めることができた。

3.障害者自立支援法施行

障害者の地域生活と就労を進め、自立支援する観点から福祉サービス、公費負担医療等について、共通の制度の下で一元的に提供する仕組みを創設する制度が施行された。時間はかかると思うが、事業、計画が実施されるなかでより良く整備されることを期待する。

4.ヨコハマ・ヒューマン&テクノランド2006開催

「福祉を支える人とテクノロジー」をテーマに、人とテクノロジーの将来性を福祉的視点から指し示す体験参加型イベントを開催し大成功に終わった。今年は、遊びのバリアフリーワールドを特別企画したが、来年は、ロボットをテーマに7月に開催する予定である。

5.HDX(ハンドドライブ・クロス)を体験

アクセル、ブレーキがハンドルに設置されており、下半身に障害がある方でも運転できるレーシングカートを体験した。実際、サーキットレースが年間7戦を通して実施されている。バリアフリーな環境下で競技することができることを肌で体感することができた。


新潟県
野島理恵子(のじまりえこ)

困ったときはお互いさま、会員同士で助けあうNPO法人地域たすけあいネットワーク(かじまちの家)副理事長。障害者支援部門と広報担当。よさこい・フラ・サンバ部部長。21歳の自閉症の息子がいる。

1.障害者自立支援法本格開始

利用者1割負担はあるものの、障害者にとって平等で利用しやすいサービスだと信じていたが、始まってみるとそうでもない。1割負担の重み、区分認定の意味、地域生活支援事業の先行きなど不安、不透明材料が多すぎる。

2.障害程度区分(利用者として)

わが息子は区分5。サービスが多く使えるし、行動援護が申請できるし、利用負担金が高額だし~……。ホントは「手のかかる人」と認められただけなのでは?

3.新潟県福祉移動サービスネットワーク

道路運送法改定に伴い、NPOなどが有償でやってきた移送サービスが各地域の運営協議会で決められたガイドラインに沿って行われることになった。新潟県内の関係者でネットワークを作り、情報交換しながら継続できるよう頑張っている。

4.スペシャルオリンピックス(S.O.)

知的障害者のスポーツトレーニングのボランティアとして、かじまちBBC(たすけあいネットワークバスケ部)が参加。直接ふれあうことで互いの理解がぐんと広がった。

5.第1回かじまちの家感謝デー

10月のある日曜日、築70余年のかじまちの家にたすけあいネットワーク会員や地域の人たち160人が次々と訪れ、作品鑑賞やコンサート、地域通貨「らて」で買物などを楽しんだ。懐かしいアズキ湯が大人気。


長野県
旭洋一郎(あさひよういちろう)

1955年東京生まれ。現在、長野県にある長野大学で教員をしています。今の関心は性、老化と障害、自立政策等。私もCP当事者の一人ですので自分の肉体を対象にあれやこれや考えています。

1.1月 吉田久一先生、お別れの会

05年10月に亡くなられた吉田久一先生のお別れの会が1月にあった。吉田先生は社会福祉史、福祉思想研究の第一人者であられた。先生はかねてから社会福祉の実践と研究には社会科学と福祉思想が大切であるとおっしゃられた。昨今の状況を見るとき、その言葉の重みを感じる。

2.4月 「障害者自立支援法」施行

評価は分かれるが、やや性急に同法は施行された。教員という仕事上、学生に制度の内容と問題点をどう伝えるか苦心した。しかし、吉田先生の言葉に習い、利用者の立場で整理するよう心がけたのであるが。

3.6月 障害学会第3回大会開催

長野大学で学生や大学の協力のもと第3回大会を開催した。日本ではまだ障害学は定着したとは言い難いが、地方大学においても大会が開催できたことは、確実に理解者が増え期待も大きいといえる。

4.8月 国連第8回特別委員会で「障害者権利条約」(案)採択、国連総会で成立へ

8月の国連特別委員会で条約案が難産の末に採択された。この歴史的な出来事を喜びまた元気づけられた。これにより第61回国連総会で、権利条約が06年中には成立するはずである。

5.9月 障害者自立支援法による利用者負担の地方自治体是正処置実施状況

朝日新聞が「障害者の負担軽減、自治体の4割導入、広がる地域格差」(9月25日日刊)と題し、利用者1割負担への軽減処置が4割の地方自治体で実施されていることを調査によって明らかにした。詳細は割愛するが、自立支援法の大きな課題を物語るものと注目した。


福岡県
西政宏(にしまさひろ)

福岡県立福岡盲学校勤務。英語教諭。全盲。元盲導犬使用者。九州盲導犬友の会会長。

1.身体障害者補助犬法改正の全国署名運動

民間の住居や学校、職場への補助犬の受け入れを義務化してほしい、さらに、すでに受け入れが義務になっている施設での周知・徹底を国として取り組んでほしいという署名であった。衆参合わせて20万以上の署名が寄せられたが、結論が出るにはまだかかりそうだ。

2.NTTドコモの最新機種で音声による漢字変換をサポート

「FOMAらくらくホン3」が9月に発売になり、音声ガイドのみを頼りに操作している視覚障害者にも、漢字を使った携帯メールが作成できるようになった。ひらがなだけでは、慣れた人でなければなかなか読みづらい。視覚障害者の情報バリアの解消に期待している。

3.「おいしクック料理教室レシピ集」の出版

福岡点字図書館主催で続いてきた、視覚障害者対象の料理教室での成果をまとめたレシピ集が点字、デイジー、拡大文字で出版された。プロのレシピをもとに、視覚障害会員も共に意見を出し、音、匂い、手触りなど五感を活用した料理の手引き書に仕上がったと思う。

4.「ブレイルセンス日本語版」の発売

点字や漢字かな混じり文の読み書き、音声ファイルの再生、電子メール、インターネットなど、一般のパソコンとほぼ同等の機能を持つ形態端末が登場した。しかも、画面情報は点字用のディスプレイに表示され、音声でも確認でき、大容量カードも読み書きできる。読書の効率化や辞書検索などさまざまな活用が期待できる製品。

5.九州盲導犬友の会の「声の解放」発刊

会員同士がより身近な存在となり、自分たちも盲導犬のしつけや健康管理について学びを深めたい、情報を共有しあいたいという思いを実現するために、今年初めて、会員数名の声を収録した会報誌をテープで発刊することとなった。自分たちで作った貴重な一歩。


NY
長田こずえ(ながたこずえ)

今年の8月、国連アジア太平洋地域を管轄するESCAPから、NYの国連本部に転勤。ESCAPでは社会開発部で障害の担当をして、障害者の人権を当たり前と考えてきましたが、経済中心の開発部門に突然投げ出され、現実の厳しさを味わっています。国際開発協力政策課シニア経済担当官。

障害の開発へのメインストリームの観点から、次の5点を取り上げます。

1.まずは、今年の8月に国連のアドホック委員会において、障害者の権利条約の条文が採択されました。特に条約文の第32項で「国際協力」が入り、批准国のインクルーシブな国際協力、開発支援への義務が明確にされたことは意義があります。被援助国のキャパシティの構築、グッドプラクティスの情報交換、訓練、障害分野での研究など、日本などの先進国が今後、幅広く国際協力の分野で障害を組み込む義務がいっそう明確になるでしょう。国連、世界銀行、その他の開発銀行、JICAなど、今後、メインストリームに向けての対策が必要になると思われます。民間組織の途上国への支援も必要になりますね。

2.これに対応して、世界銀行やアジア開発銀行などが対策を練ってきたこと。国連開発機関(UNDP)なども支援対策を練り始めています。

3.今年の10月にアジア太平洋障害フォーラム(APDF)がバンコクで総会を開いたこと。

4.国連ESCAPが障害者NGOや政府と共同で、来年、「第二次アジア太平洋障害者の十年」の中間年報告に向けて、後半5年の行動計画の準備に取りかかったこと。

5.最後のニュースとしては、インドネシアのジョグジャカルタで起こった大地震の後、大被害が報告されるなか、いくつかの国際NGO(たとえば、ハンディキャップインターナショナルなど)が、すばやく、障害を災害支援に組み込んだこと。

結論は、2006年は、「障害と人権」「障害と開発」の年でした。そして、2007年は、「権利に基づく開発」の年であると思います。キーワードは、「障害」「開発」「人権」ですね。