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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年12月号

1000字提言

教育=人づくり=社会づくり

津島徹

アメリカでは、障害のある子どもが生まれたとき、医師は親を前にして、「お子さんに障害があって生まれたことに親の責任は一切ありません。あなた方は、障害のある子どもを立派に育てられる資格と力があると神様がお認めになって選ばれたご夫婦です。どうぞ愛情深く育ててあげてください」と告知するそうです。

障害がある人たちの暮らしを支える資格と力が私たちの社会にあるという自覚は、残念ながらまだ十分ではないのかもしれません。だれもが差別されることなく自立して幸せに暮らせる社会を作りあげることは、私たちに与えられた責務なのでしょう。

「人は社会によって人として作られ、社会は人によって形作られる」という話を、つい先日うかがうことがありました。この世の中では、否応もなく社会の影響を受けて人々の意識は作られるわけですが、その社会を構成しているのは人であり、人々の考え方や行動によって社会を変えることができるという内容で、私はあらためて考えさせられました。

障害者福祉の根幹をなすのも、「人づくり」であり、「社会づくり」であると言えるのではないでしょうか。障害のある人も含めて、だれもが暮らしやすくなるためには、制度やサービスの充実はもちろんのこと、コミュニティーの中で、互いに相手のことを理解し、思いやり、支え合う関係が大切です。人を育てることが社会づくりにつながるのです。この点において、「教育」の果たすべき役割は大きいと感じています。

教育基本法の第一条には、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない。」とあります。教育の基本が「人づくり」にあることをはっきりと記しています。

もちろん、教育は学校だけで行われるものではありません。社会においても、家庭においても…、あらゆる機会においてなされるべきものでしょう。そして、その中でも学校というものが重要な教育の場であると考えます。

障害がある生徒本人にとっても、彼らを含めてお互いに支え合う関係にあるそれぞれの生徒にとっても、日々の成長と相互理解と協力の中で、一人ひとりが大事にされて、その人その人が充実した生活を送ることを学び合い、さまざまなチャレンジを通して身につけていくことは、将来の生活のために欠くことのできない大切なものです。

学校での取り組みや新しい動きについては、次回に述べさせていただきたいと思います。

(つしまとおる 藤沢市立白浜養護学校教諭)