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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年12月号

重点連載 障害者自立支援法と自治体施策

田辺市独自の負担軽減策

田辺市

田辺市の概要

当市は、紀伊半島の南西側、和歌山県の南部に位置し、平成17年5月1日、5市町村が合併し、人口約8万5千人、面積1,026kmと県全体の約22%を占める近畿で最も広い市域を有し、政治、経済、文化面で紀南の中核都市としての役割を果たしています。

また、主な産業は農林水産業で、豊かな自然環境と温泉及び近年、世界遺産に登録された熊野古道を生かした観光振興を図っております。

当市における障害福祉の現状ですが、平成18年10月現在、身体障害者手帳所持者3,872人、療育手帳所持者611人、精神保健福祉手帳所持者296人で、障害者自立支援法による障害福祉サービス支給決定者は、490人となっております。

旧法授産施設、就労移行及び継続支援サービスに係る利用者負担金助成

障害者自立支援法施行に伴い、4月からの障害福祉サービスの定率負担により、障害者世帯の負担が大きくなり、利用者及び障害者団体等から市への利用者負担の軽減について要望が出され、市としての独自施策の検討に入りました。

障害者自立支援法施行後の状況を見ますと、全国的に障害福祉サービスの利用を控える例がある中、田辺市においても例外ではなく、授産施設の利用をやめたり、利用日数を抑制するケースが見受けられました。

障害者の就労対策が重要視される中、当市には大企業がなく、障害者の就労の場は限られているのが現状であり、障害者授産施設は田辺市における障害者の就労施策の重要な位置を占めております。

上記の現状に鑑み、財政状況の厳しい中、障害者の就労支援の観点から、旧法授産施設、就労移行及び継続支援のサービスの利用者負担への助成制度を平成18年10月から実施することになりました。

利用者負担金への助成制度の概要

対象者は、旧法授産施設支援、就労継続支援及び就労移行支援のサービスを利用する在宅の障害者で所得区分にかかわらず、すべての方が対象になります。

田辺市において助成制度の対象となる事業所は旧法授産施設3か所、就労継続支援及び就労移行支援サービス事業所4か所があり、周辺町の事業所と併せて137人が利用しております。また、他に精神障害者通所授産施設2か所と無認可の小規模作業所が6か所あり、81人が利用しており、今後、就労継続支援及び就労移行支援サービス事業所への移行が予定されています。

田辺市では、平成4年度から障害者の就労支援施策としての授産施設及び小規模作業所等の利用者に対して、低額な工賃から通所のための交通費の支出は大きく、就労意欲の減退と利用の抑制を防ぐことを目的に交通費の補助を実施しております。

今回の利用者負担金への助成制度の制定にあたりましては、全国レベルと比較して当地域の授産施設等の工賃は低く、利用者負担金及び食事代を負担すれば、工賃が手元に残らない場合や工賃では足らない場合が生じるため、交通費の補助制度の目的と同じく、工賃を手元に残す方法で助成をすることになりました。

具体的には、事業所から支給される月額工賃のうち、5千円及び5千円を超える部分の2分の1の額が手元に残るように利用者負担金に助成します。月額工賃が5千円以下の場合、利用者負担額の全額を助成し、自己負担額は無料になります。月額工賃が5千円を超える場合は、工賃の5千円を超える部分の2分の1の額で利用者負担金をお支払いいただき、不足分を市が助成します。ただし、工賃の5千円を超える部分の2分の1の額が利用者負担金を上回る場合、助成金は発生しません(表参照)。

○助成金の計算例 1(社会福祉法人軽減制度対象者で利用者負担7,500円の場合)

  月額工賃
手元に残る工貨の額
自己負担額
3(1-2)
利用者負担額
市助成額
5(4-3)
5,000 5,000
5,000+
(5,000-5,000)/2
7,500 7,500
7,500 6,250
5,000+
(7,500-5,000)/2
1,250 7,500 6,250
10,000 7,500
5,000+
(10,000-5,000)/2
2,500 7,500 5,000
20,000 12,500
5,000+
(20,000-5,000)/2
7,500 7,500

○助成金の計算例 2(社会福祉法人軽減制度対象外で利用者負担15,000円の場合)

  月額工賃
手元に残る工貨の額
自己負担額
3(1-2)
利用者負担額
市助成額
5(4-3)
5,000 5,000
5・000+
(5,000-5,000)/2
15,000 15,000
7,500 6,250
5,000+
(7,500-5,000)/2
1,250 15,000 13,750
20,000 12,500
5,000+
(20,000-5,000)/2
7,500 15,000 7,500
35,000 20,000
5,000+
(35,000-5,000)/2
15,000 15,000

今回の助成制度については、平成21年度末までの措置でその後、国の制度の見直し等にあわせて検討していく予定です。

他の軽減施策について

1.自立支援医療(精神通院)の自己負担金を支給

平成8年度より精神障害の通院医療費の公費負担制度の自己負担分(5%)を支給しており、平成18年4月の障害者自立支援法に規定する自立支援医療(精神通院)に移行後も引き続き実施します。

2.補装具の自己負担金の支給

身体障害者福祉法及び児童福祉法による補装具の自己負担金の全額支給を行っていましたが、平成18年10月以降の障害者自立支援法による給付にあたっても、引き続き自己負担金の全額を支給します。なお、日常生活用具に変更になったストマ用具及び紙おむつについて、日常生活用具の自己負担金を引き続き全額支給します。

(田辺市保健福祉部やすらぎ対策課)