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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年10月号

ほんの森

サムデイ~いつか~
岡田なおこ著

評者 井出裕子

岩崎書店
〒112―0005
文京区水道1―9―2
定価(本体1,200円+税)
TEL 03―3812―9131
FAX 03―3816―6033

作者の岡田なおこさんとの出会いは紙芝居だ。

10年前、私が実行委員をした「紙芝居サミット」という大会に、紙芝居の脚本家として岡田さんは参加した。

岡田さんの作品は『ともだちきねんび』といい、車いすに乗るお姉さんと少年が友だちになる物語だ。

岡田さんは一人電動車いすでやってきた。

私は兄が脳性マヒ者なので、岡田さんがとても身近に思え、それ以来、彼女とは“友だち”になり、作品はすべて読ませてもらっている。

ここ数年、体調の思わしくないこともあった岡田さんの新作が出るというので、私は楽しみにしていた。

過去のどの作品も主人公はみんな「岡田なおこ」の分身ではあろうが、今回の『サムデイ』の主人公・くるみさんは、「岡田なおこ」そのものだと思った。

文を読むまで題の由来が彼女の大好きな佐野元春の歌のタイトルであることに気づかなかった。“ともだち”とはいえ、歳が10歳も上の私は『岡田なおこのホームページ・なお小箱』の日記を読み、佐野元春のことを知った。CDをかけ、歌詞を改めて読み直し、「これが岡田さんの応援歌なのだ」と思いながら聞いた。

今回の作品は、障害者に対して不思議に思うことや戸惑いを小学生・まりえとその仲間たちの目を通して分かりやすく書いてある。

それはまさに今、岡田さんが行っている小学校や児童館での子どもたちとの交流が作品のモチーフになっているのだろう。

ヘルパーさんとのぶつかり合いも、「ヘルパーに頼った『一人暮らし』は間違いだ」という知人の言葉もおそらく実体験だと思う。

くるみさんが車いすの上で傾く体を立て直したりする様子が目に見えるようだ。

普通のアパートに住んでいて、カエルが苦手だったり、傘をコウモリと間違えたりユーモラスなところがいっぱいあって、読者はくるみさん(=障害者)を身近に感じると思う。

それにしても、8つの章の表題が全部曲のタイトルで、それぞれの話の中に歌詞が活かされているなんて、音楽好きの彼女らしい作品だと思った。

(いでひろこ 紙芝居ボランティアグループあじさいの会)