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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年10月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●白杖に点滅式ランプを、他●

提案者:田幸勇二 イラスト:はんだみちこ

田幸勇二(たこうゆうじ)さん

ろう学校在学時から網膜色素変性の症状が現れ、弱視と視野狭窄を経て、明暗が分かるだけになる。全国盲ろう者協会、東京盲ろう者友の会などに所属。


白杖に点滅式ランプを

外出する時に必ず手に持つのが折りたたみ式の白杖です。だんだん見えにくくなっていた頃は、周りから勧められてもなかなか持ちたがらなかったものです。使い始めてから、以前よりも安全に歩けることが分かってきて、今では身体の一部のような存在になっています。

耳も聞こえませんので、一人で歩けるのは自宅の近くなど、ごく限られています。買い物や通院には手話や指点字のできる通訳者と一緒に行っていますが、その時も白杖は欠かせません。片手で白杖を持ちながら、もう片方の手で手話や合図が伝わるような体勢を取っています。「階段」とか「またいで」などの合図をしてもらいながら、白杖の先で段差や隙間を確かめるようにしています。

雨が降っている時や夜間などは二人とも緊張しながら歩いていますが、そんな時に自転車用に作られた点滅式の赤ランプを使うと、周りの人や車のドライバーも注意してくれますので、ストレスの軽減にもなっています。


近所の郵便局で

歩道橋を渡った団地には小さな郵便局があって、よく点字郵便物を持っていきますが、時々郵便振替や電報を頼むことがあります。発音があまり明瞭ではありませんので、窓口の人に用件を伝える時はいつもメモ用紙とボールペンを使っています。そして私に何か話す時は、指先で手の平に書いてもらうようにしています。

電報など細かい用件は、自宅のパソコンで電報文やあて先の住所、名前などを入力してプリントアウトしたものを持っていきます。漢字の間違いがないようにピンディスプレーで何度も確かめますので、時間がかかりますが、その分、窓口での代筆や手続きをスムーズに済ませることができます。

郵便局のATMには、手触りだけで操作できるボタンや指で金額が読める点字表示部が付いています。メニューの選択、暗証番号や金額の入力など、操作手順を覚えれば、ほとんど自力で預け入れや引き出しができますので、重宝しています。


生活に欠かせない点字

少し見えていた頃はルーペや拡大読書器を使って新聞や本を読んでいました。黒地に白い文字が映るようにして、弱くなっていた視力でも見やすいようにしていましたが、だんだん見えなくなって点字を使うようになりました。指先で読む練習を何時間、何日、何か月も続けたものです。点字の読み書きができるようになり、カードやテープに点字を打って、身の回りの整理にも活用しています。

パソコンはピンディスプレーという点字の出る機械をケーブルでつないで、メールやインターネットなどいろいろ活用しています。テレビの画像も見えない、ラジオの音声も聞こえない、また電話やファックスも使えない私にとっては、パソコンとピンディスプレーの組み合わせは他に代えがたいものがあります。

パソコンが動かなくなってパソコンサポートの人に修理してもらう時などは、私にとっては、ガス、水道、電気と同じライフラインだと痛感させられたものです。