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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年4月号

フォーラム2008

全国障害者スポーツ大会の見直しについて

井田朋宏

見直しの経緯

昭和40年より毎年開催されてきた全国身体障害者スポーツ大会と、平成4年より毎年開催されてきた全国知的障害者スポーツ大会が統合され、平成13年より「全国障害者スポーツ大会(以下「全国大会」という)として開催されるようになった。この全国大会を開催するにあたり、(財)日本障害者スポーツ協会(以下「協会」という)が平成13年に実施した検討委員会で決定したことは、全国身体障害者スポーツ大会及び全国知的障害者スポーツ大会で実施した競技種目や参加者数について、当面は現状を変えないということであった。

しかし、全国大会の開催基準要綱では、国が認定している障害者のうち、精神障害者と内部障害者が参加不可能となっている。このうち、精神障害者は第1回全国大会からオープン競技としてバレーボールを実施しており、全国大会に正式競技として取り入れる時期に来ていた。また内部障害者は、全国の障害者スポーツセンターなどで医学的な指導のもとスポーツ活動が見られることから、協会医学委員会から競技会への参加について一部導入してもよいのではないかとの意見が出されるなど、全国大会の見直しを求める機運が高まった。

見直しの要点

そこで、前記内容を踏まえ、精神障害者と内部障害者が参加できる競技種目の導入を前提に、開催基準要綱の改正について協会、厚生労働省、関係団体、学識経験者による検討委員会が開催され、次の事項が決定された。

1、精神障害者のバレーボールを平成20年度より正式競技として実施する。

2、内部障害者の参加については、まずは、ぼうこうまたは直腸機能障害者の個人競技への参加を認めることとした。具体的な競技・種目については協会技術委員会が中心となり検討を重ね、次の各競技・種目に参加できることとした。

  • 陸上競技(50m、1500m、立幅跳、走幅跳、ソフトボール投、ジャベリックスロー)
  • アーチェリー(リカーブ、コンパウンド)
  • フライングディスク(アキュラシー、ディスタンス)

3、前記の導入にあたっては、大会参加者総数を減少させることとした。具体的には、団体競技の参加チーム数を現行の8チームから7チームに減らす(競技団体推薦枠をなくす)とともに、先催県、後催県の裁量分を減少させることで調整する。

4、その他、実施種目の見直しについては、協会技術委員会が中心となって進めることとした。

5、次回見直しは平成25年度に行う。

実施種目の見直しの要点

協会技術委員会では、前記決定を受け実施種目や競技規則の見直しを行い、平成20年度に開催される大分大会から適用することとした。なお、見直しにかかる基本方針は次の通りである。

1.大会未出場者の参加機会の確保に配慮すること。

2.「スポーツの楽しさを体験する」という大会目的を念頭に置き、実施競技・種目の新設、廃止及び規則の見直しを行い、生涯スポーツ実践への動機づけとなるようにする。

3.過去5大会の障害区分別の参加状況を参考に、種目の新設・廃止、障害区分の統廃合、選択種目の見直しを図る。

主な見直し内容とその理由

(1)陸上競技

・障害急歩の廃止
全国大会参加後も継続的に行う者がほとんどいないこと、「歩」と「走」の判定が監察員の主観によるところが大きい等の理由により廃止する。
・すべての60m走を50m走にする
学校体育での実施距離や参加者の高齢化に配慮し、距離を短縮する。
・障害区分番号24、25の者が出場する50m走は音響による独走とし、100m走は伴走者付きとする。また、一人の競技者が50m走と100m走の両方には参加できないこととした。
競技力の高い競技者による両種目への参加申込みを防ぐことで、大会未出場者の参加機会の確保に配慮した。
・5000m走の廃止
「スポーツの楽しさを体験する」段階の対象者には参加しにくい種目であると判断し廃止することとした。
・リレーは男女混合とする
より多くの都道府県・指定都市が参加できるようにした。
・スラロームの廃止及び見直し
参加者数が毎年ごく少数であることに加え、全国大会参加後、継続的に行う者がほとんどいないため廃止する。ただし、選択種目が限られている四肢麻痺による車いす使用者や電動車いす使用者に配慮し、コースレイアウトや規則を見直したスラロームを導入する(参考1)。
・三段跳、立三段跳の廃止
毎年、参加者数が極少のため廃止することとした。
・立幅跳と走幅跳の両方に参加できないこととする
競技力の高い競技者による両種目への参加申込みを防ぐことで、大会未出場者の参加機会の確保に配慮した。
・ジャベリックスローの導入
やり投の導入種目としてジュニア大会で行われているが、その扱いやすさや安全性から、高齢障害者や重度障害者などが気軽に取り組める種目であると判断し導入することとした(参考2)。
・ソフトボール投の廃止
やり投の代替種目として実施してきたが、ジャベリックスローを導入するため廃止することとした。
・こん棒投の廃止
毎年、参加者数皆無なため廃止することとした。
・ハンドボール投の廃止
円盤投の代替種目として実施してきたが、初級者にとっては技術的に困難な場合もあり、ジャベリックスローの導入に合わせて廃止することとした。

参考1〉スラローム
■主な特徴
1.電動車いすの時速の差が勝敗に影響されないようなコースレイアウトとした。
2.旗門に触れただけでは違反としないなど、従来よりも規則を緩和した。
3.旗門は、スラローム1と同様のものを使用することとした。
コース図
コース図拡大図・テキスト
(平成20年度全国障害者スポーツ大会競技規則集 P135)

参考2〉ジャベリックスロー
■主な特徴
1.使用する用具以外は、すべてやり投の規則に準じて行う。
2.用具は、男女とも同規格(本体:ポリエチレン製、穂先:エラストマー製、長さ=70cm、重量=300g)のターボジャブを使用する。
3.ターボジャブは、材質、重量、長さとも非常に扱いやすく安全であることから、公園や体育館など身近な場所で練習することができる。
使用するターボジャブ
写真 使用するターボジャブ

(2)水泳

・各泳法の100mの廃止
「スポーツの楽しさを体験する」段階の対象者には参加しにくい種目であると判断し廃止することとした。
・個人メドレーの廃止
毎年、参加者数が極少のため廃止することとした。
・リレーは男女混合とする
より多くの都道府県・指定都市が参加できるようにした。

(いだともひろ 財団法人日本障害者スポーツ協会)

引用:「全国障害者スポーツ大会競技規則集」(財)日本障害者スポーツ協会編、平成20年6月1日