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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

障害福祉計画について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

1 障害者自立支援法と障害福祉計画

障害保健福祉施策については、平成15年度以降、措置制度から契約制度へと転換した支援費制度の下で、利用者が飛躍的に増加する等サービス量の拡充が図られてきました。

しかしながら、居宅介護事業等について未実施の市町村がみられるほか、精神障害者の方々に対するサービスは支援費制度の対象となっていなかったこともあって、その立ち後れが指摘されていました。また、長年にわたり障害福祉サービスを支えてきた現行の福祉施設や事業体系については、利用者の入所期間の長期化等により、その本来の機能と利用者の実態が乖離する等の状況にあるほか、地域生活移行や就労支援といった新たな課題への対応が求められていました。さらに障害者の方々の地域生活を支えていくために障害福祉サービスと並んで欠くことのできない相談支援体制についても、その整備状況に大きな地域格差がみられました。

障害者自立支援法においては、こうした状況に対応して、障害者の方々が、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスや相談支援等が地域において計画的に提供されるべく、福祉施設や事業体系の抜本的な見直しと併せて、市町村及び都道府県に対しサービスの量の見込みを定める障害福祉計画の作成を義務付ける等、サービス体系全般について見直しが行われました(表1)。

表1 障害福祉計画について

○ 国は、「基本指針」において、障害福祉計画作成に当たって基本となる理念、サービス見込量の算定の考え方、計画的な基盤整備を進めるための取組みなど、下記の事項について定めるものとする
  • 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本事項
  • 市町村障害福祉計画及び都道府県障害福祉計画の作成に関する事項
  • その他自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するために必要な事項
○ 市町村及び都道府県は、国の「基本指針」を踏まえ、平成23年度までの新サービス体系への移行を念頭に置きながら数値目標を設定し、平成18年度中に平成20年度までを第1期とする障害福祉計画を策定するものとする

図 障害福祉計画について拡大図・テキスト

市町村及び都道府県においては、障害福祉計画作成に当たっては、厚生労働大臣が定める基本指針(以下「基本指針」)に即し、各地域の実情に応じた計画が作成されることとなります。

その際は、1.利用者のニーズやサービスの過去の伸び等を把握・分析すること。2.特別支援学校卒業生の進路動向や福祉施設からの就労移行の状況等から、将来の見通しを検討すること。3.精神障害者の方々に関する新たなニーズを見極めること。4.法定外の施設であるいわゆる小規模作業所についての今後の方向性を検討すること、等を行い、さらに地域の実情を勘案した上で、数値目標の設定やサービス見込量の算出が行われることとなります。

2 障害福祉計画に係る数値目標等の全国集計結果

各都道府県及び市町村については、基本指針において、遅くとも平成18年度中に平成18年度~20年度までを計画期間とする第1期障害福祉計画(以下「第1期計画」)を作成することになっています。そこで、各都道府県が作成した第1期計画について、基本指針において定める数値目標及びサービス見込量の設定状況を把握するために報告を求め、その概要をとりまとめたもの(なお調査時点は、平成19年7月末時点。各数値は、千未満を四捨五入)を平成19年9月18日に各自治体を集めて行われた障害保健福祉関係主管課長会議において公表しました。

ここではその資料を掲載するとともに、若干の解説を加えることとします。

(1)数値目標の集計結果について

数値目標の集計結果は、表2のとおりとなっており、なお、表中の(※)の数値については、数値目標を設定していない都道府県があり、当該都道府県を含まない数値となっています。

表2 数値目標について

(ア)福祉施設からの地域生活への移行

項目 数値 考え方
現在の施設入所者 14.6万人 平成17年10月1日現在の全施設人所者
目標値 地域生活移行者数 1.9万人 上記のうち、グループホーム・ケアホーム等へ地域移行する者の数
13.2% 地域生活移行者数を全入所者で除した値
施設入所者の削減数 ※ 1.1万人 平成23年度末段階での削減数
※ 7.8% 削減数を全入所者で除した値

(イ)退院可能精神障害者の減少

項目 数値 考え方
現在の退院可能精神障害者 4.9万人 現在の退院可能精神障害者数については、各都道府県において独自に実態調査を実施しているケースがあるため、調査時点や対象者が異なる場合や現在数を記載していない場合がある。
【目標値】減少数 ※ 3.7万人 上記のうち、平成23年度末までの減少数

(ウ)福祉施設から一般就労への移行

項目 数値 考え方
現在の年間一般就労移行者数 0.2万人 平成17年度において福祉施設を退所し、一般就労した者の数
目標値 年間一般就労移行者数 0.9万人 平成23年度において福祉施設を退所し、一般就労する者の数
3.9倍 平成23年度目標値の平成17年度実績に対する割合

※ 数値目標を設定していない都道府県があり、当該都道府県分を含まない数値である。

基本指針においては、「障害者等の自立支援の観点から、地域生活移行や就労支援といった新たな課題に対応するため、障害福祉計画において必要な障害福祉サービスの量を見込むに当たっては、まずはこれらの課題に関し、現行の福祉施設が新しいサービス体系への移行を完了する平成23年度を目標年度として、次に掲げる事項について、それぞれの数値目標を設定することが適当である。」とされています。ここでいう次に掲げる事項が、表2の三つの数値目標である(ア)福祉施設からの地域生活への移行、(イ)退院可能精神障害者の減少、(ウ)福祉施設から一般就労への移行、となっています。

まず、(ア)について、基本指針においては、「現時点の施設入所者数の1割以上が地域生活へ移行することとするとともに、これにあわせて平成23年度末の施設入所者数を現時点の施設入所者数から7%以上削減することを基本としつつ、地域の実情に応じて目標を設定することが望ましい。」としています。今回の集計結果においては、現在の施設入所者(平成17年10月1日現在)のうち1.9万人(13.2%)が地域生活へ移行し、1.1万人(7.8%)が削減されることが見込まれています。

次に、(イ)について、基本指針においては、「平成24年度までに退院可能精神障害者が退院することを目指し、平成23年度末までの退院可能精神障害者数の減少目標値を設定する。」としています。今回の集計結果においては、平成23年度末までの減少目標値は、3.7万人と見込まれています。

また、(ウ)について、基本指針においては、「現時点の一般就労への移行実績の4倍以上とすることが望ましい。」としています。今回の集計結果においては、現時点の一般就労実績(平成17年度)である0.2万人が平成23年度において0.9万人(平成17年度実績比3.9倍)と見込まれています。

(2)サービス見込量の集計結果について

障害者自立支援法においては、障害福祉計画において定める事項の中に、各年度の指定障害福祉サービスまたは指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込みを規定しており、また、基本指針においては、平成20年度までの各年度及び平成23年度における指定障害福祉サービスまたは指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込みを定めるとしています。これの集計結果が表3となっています。

表3 サービス見込量について

○新体系サービス見込量

1 訪問系サービス

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
居宅介護
重度訪問介護
行動援護
重度障害者等包括支援
340.1万時間 376.1万時間 412.2万時間 521.8万時間

2 日中活動系サービス

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
生活介護 45.2万人日分 132.1万人日分 201.7万人日分 393.7万人日分
自立訓練(機能訓練) 2.3万人日分 5.9万人日分 8.6万人日分 14.6万人日分
自立訓練(生活訓練) 6.4万人日分 20.0万人日分 31.2万人日分 58.9万人日分
就労移行支援 8.9万人日分 29.2万人日分 41.5万人日分 72.0万人日分
就労継続支援(A型) 3.1万人日分 9.2万人日分 15.6万人日分 42.8万人日分
就労継続支援(B型) 21.6万人日分 73.9万人日分 122.1万人日分 234.2万人日分
療養介護 0.3万人日分 0.4万人日分 0.4万人日分 1.0万人日分
児童デイサービス 23.3万人日分 26.2万人日分 28.3万人日分 33.9万人日分
短期入所 21.1万人日分 24.4万人日分 26.8万人日分 34.5万人日分

3 居住系サービス

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
共同生活援助
共同生活介護
3.8万人分 4.5万人分 5.3万人分 8.0万人分
施設入所支援 0.8万人分 3.6万人分 6.0万人分 13.5万人分

4 相談支援

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
相談支援 1.6万人分 2.8万人分 3.4万人分 4.8万人分

〇旧体系サービス申込書

1 日中活動系サービス

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
旧通所系サービス 318.1万人日分 257.3万人日分 201.0万人日分 5.7万人日分
旧入所系サービス 247.2万人日分 185.5万人日分 132.7万人日分 3.5万人日分

2 居住系サービス

種類 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成23年度
旧入所系サービス 14.2万人分 11.3万人分 8.8万人分 0.3万人分

(注1)ここでいう「時間」とは、平均的な月間のサービス提供時間をいう。

(注2)ここでいう「人日分」とは、「人日分」=「月間の利用人数」×「一人一月当たりの平均利用日数」をいう。

なお、障害福祉計画においては、障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスまたは指定相談支援の種類ごとの必要な量の見込み、すなわち新体系サービスを定めることとなっていますが、平成23年度までの経過措置がある施設もあるため、旧体系サービスが当該年度まで存在します。よって、サービスの全体を把握するという趣旨で、旧体系サービス部分も今回の集計の対象としています。

3 第1期計画の策定状況等

障害者自立支援法と障害福祉計画との関係や実際に作成された第1期計画の数値目標等については、前述のとおりですが、各自治体における第1期計画の作成に当たっては、そもそも障害者自立支援法が平成18年10月完全施行ということもあり、その施行業務と計画作成業務とが重なり、また、特別対策の実施等の制度改正に係る業務も加わったことにより、十分な検討が行えないまま作成された自治体が少なくなかったと思われます。

特に市町村においては、一人の職員が多岐にわたる業務を担当しており、計画専門というわけにはいかず、大変ご苦労されたものと思われます。とはいえ、現在は、第1期計画の計画期間中であり、各自治体においては第1期計画の実績の把握等を行い、設定された目標値やサービス見込量の達成に向けた施策の推進を行っていくことが期待されます。

4 第2期計画の作成に向けて

先ほども申し上げましたとおり、現在は、第1期計画の計画期間中でありますが、平成21年度より第2期障害福祉計画(以下「第2期計画」)がスタートすることとなります。そのためには平成20年度中に第2期計画を作成することが適当です。そこでここでは、第2期計画の作成に向けてのポイントについて若干触れることとします。

第2期計画においては、以下のような基本的方向に向けて、現状把握と分析を十分に進めることが望まれます。

(1)サービスの基盤整備につなげる

サービス量を機械的に見込むのでなく、各地域の抱える問題は何かを把握・分析した上で、これを解決するために、どのようなサービスが必要かを明らかにし、それを実現するための基盤整備量(事業所数等)を、できるだけ具体化します。

(2)都道府県が市町村と協働して「圏域」単位のサービス基盤を考える

入所施設や精神科病院との関係を考えていく場合、一般に市町村単位では狭すぎる一方、都道府県単位では広すぎます。このため、第2期計画では、「(障害保健福祉)圏域」単位での入所(入院)・居住・通所・居宅サービスの現状を明らかにするとともに、地域移行に必要なサービス基盤の必要量を明らかにします。なお、ここでいう圏域については、2次医療圏なども踏まえながら、入所(入院)・通所・居宅などのサービス基盤全体の整備の方向が見通せるものを設定します。

(3)個々の障害者に対してサービス相互が有機的につながる仕組みを考える

サービス基盤が整備されるだけでなく、それが個々の障害者の状態や置かれている環境、さらにはその希望も踏まえて、総合的に提供される必要があります。

このため、相談支援体制の強化、保健・福祉・教育・労働などを横断する自立支援協議会の設置とその活用についても、できる限り具体化します。

以上のような基本的方向を踏まえ、市町村においては、第1期計画の分析・把握、現行サービス利用者の実態把握、自立支援協議会による地域の課題の整理等を行い、また、都道府県においても、市町村が作成した第1期計画の実施状況の把握、自立支援協議会による地域の課題の整理、圏域ごとの現状把握・分析等を行い、それらの情報を都道府県と市町村とで共有していくことが必要となります。

その後、圏域ビジョンの構築等、具体的な第2期計画作成の作業に移っていくこととなります。

5 終わりに

いずれにしても、今後本格的な第2期計画の作成作業が始まることとなりますが、国としては、各自治体の第2期計画作成における取組に関して、できる限りの支援等を行っていきたいと考えています。