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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

計画の評価と期待

座間市障害福祉計画に期待するもの

鈴木孝幸

今回策定した「座間市障害福祉計画」は、座間市における障害福祉サービスの基本となる重要な計画であると位置付けて、短期間ではあったが集中して検討を行った。私は同計画のワーキンググループのメンバーとして関わった。

第1期計画は、平成18年度中に9回検討会が開催された。第1回が7月に行われ、その後数か月は開催されず、12月から翌2月にかけての3か月間に8回の検討会が集中的に実施された。

計画策定に当たり、市内の障害者全員にアンケート調査を実施し、その回答を業者が分析したものを基礎データとして計画の参考とした。調査の実施から集計までに時間が無かったため、十分な検討が行われたとは言えないが、委員の中からは今後に向けての課題点が指摘されており、この提案などを踏まえて第2期計画の策定の際に検討することが内定している。

以下、座間市の計画について特徴的な面を述べてみたい。

第1の特徴は、ワーキンググループのメンバーを障害者団体から出したことである。これは今までの座間市当局の考えを覆す画期的なものと言える。なぜなら、今までの各種の計画策定に当事者が入ることはなく、むしろ行政が独自で計画したものを障害者に押し付けていた感がある。言わば「計画のための計画」であった。しかし今回は、当事者を中心としたワーキンググループを立ち上げ、土曜・日曜はもとより平日の夜間にまで会議を行ったのである。その間、当局の担当者が必ず出席し会議の中心となっていたことは、この計画策定に関しては障害者を中心にして推進しようという座間市の意気込みがうかがえたと言える。

ワーキンググループには、障害者団体8団体(身体障害、視覚障害、聴覚障害の各協会、育成会、腎友会、肢体不自由自者父母の会、精神障害者を支援する会、自閉症児の会)に加え、障害者地域作業所の代表も加わっていた。地域作業所を入れたことによって、受け入れ側の意見も反映させられるものとなった。

第2点は、計画の基本指針に、発達障害や高次脳機能障害などの、いわゆる「制度のはざま」にある障害者への支援を検討していく旨を明記したことである。とかく「制度のはざま」の障害者は忘れられがちであるが、ワーキンググループに当事者団体が入っていたため、当事者の意見が計画に反映されている。これらの意見は他の障害者団体も、「障害があっても制度が使えないメンバーがいる」ということを知ることができ、良い影響があったといえる。

第3点は、同じく基本指針の中で、地域作業所への支援を明確にしたことである。障害者が就職することは大変なことである。そこで地域作業所に代表されるいわゆる「福祉的就労」の受け入れ先となっている地域作業所は重要であり、この支援を明確にしたことは評価できる。しかし、地域作業所も数年すると公的補助金の支援対象ではなくなるため、地域活動支援センターへの移行も視野に入れながら計画に反映させている。

第4点は、新規事業として、地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業に、点字等による公文書の発行事業を平成20年度から行うことを盛り込んでいる。自立支援法のコミュニケーション事業の中に、点訳・音訳が含まれているが、これらは従前の手話通訳や要約筆記などのようにメジャーな制度ではなかった。しかし、この点訳・音訳も新しい技術を導入することにより、視覚障害者に対する行政サービスが可能となった。

第5点は、新規事業として、地域生活支援事業に就労支援相談員設置事業を盛り込み、障害者の就労支援を促進することとなった。まだまだこの制度は順調に機能しているとは言えないが、相談件数も増加傾向にあるとともに、相談員側も積極的に多方面への働きかけを行っている。また、受け入れ側である地域作業所からも積極的に働きかけを行い、相互がこの制度を活用しようとしていることは、今後の就労数の増加の布石となると思われる。

第6点は、視覚障害のある人や高齢障害者に配慮して、文字のサイズを大きくした福祉計画「拡大版」も作成している。これに加えて、本編には視覚障害者に配慮し「音声コード」をすべてのページに添付したことで、この計画の注目はさらに高まった。本編の作成と並行してダイジェスト版A4サイズ12ページの物を作成し、障害者はもとより各方面への啓もう用として広く活用されている。

以上、特徴としての良い点を記述してきたが、良いことばかりではない。それは、行政側の課題として、地域生活支援事業や新システムへの移行準備等の膨大な業務が策定年度に集中したため、計画策定に本格着手するまでに時間がかかり、十分な検討期間がとれなかったことである。先にも述べたが、実質的に検討会が機能し始めたのは12月であり、実際に動き始めてからも職員の事務量が多かったと言える。

また、制度の施行から間がないため、十分なデータが蓄積されておらず、また、施設の新体系への移行計画が定まっていなかったこともあり、数値目標及び見込み量を算出するのが非常に難しかった。今後も十分な検討が必要と思われる。

最後に、計画全般に言えることだが、業者にアンケート集約を委託するところが多いが、これが問題で、一定の数式に沿って数値目標を出す傾向が高い。また、財政的な基盤が不確実なのに、目標数値だけが先行して最終的には現実とのギャップを作り出すことになってしまうことを恐れたため、これまでの予算や決算の動向、財政当局の考えなども考慮しながらの計画となった。数値も「目標のための数字」から「実現するための数字」と考えて設定を行ったことも特徴となっている。

(すずきたかゆき 日本盲人会連合)