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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

計画の評価と期待

親の立場から計画づくりにかかわって

細見頼子

はじめに

わがまち篠山市は、兵庫県の北東部に位置する山間部にあり、人口は4万6000人弱で高齢化率の非常に高い地域である。人口の約5パーセントの人が何らかの障害者手帳を所持している。

平成の大合併で身の丈以上の公共事業や人口減で市財政は破たん目前まできている。そんな中で18年3月から、障害者自立支援法施行に基づく新サービス体系下での事業量を算出し、これまで以上のサービス提供体制を確保するための方策を示す「篠山市障害福祉計画」を策定しなければならなかった。

同時に平成15年3月に策定した「篠山市障害者福祉プラン」もノーマライゼーションの理念を継承しつつ、その後の社会・経済事情の変化と障害者自立支援法に基づく制度改正を反映させるために見直し、関連のある個所を改正した。

策定委員長として

利用者、事業者の双方から見ても自立支援法には納得のできないことが多々あるが、今回のテーマは自立支援法施行によって義務づけられた障害福祉計画を、どのように組み立てたかのみを記していきたい。

「篠山市障害者福祉プラン」と「篠山市障害福祉計画」は整合性を持ち、相互に連携する必要があることから、まず「福祉プラン」の実施状況を検証した。時間的なこと、費用的なこともあり、4回の委員会しか開催できず、委員はそれぞれの資料を持ち帰り「現状・課題」にまとめ、次回に持ち寄り取り組みの方策について論議をすすめた。その他、福祉関連計画とも照らし合わせ、予算と実施状況を検証し、積極的に実施されていない施策を重点的に討議した。

それに加えて、今回、障害者手帳所持者に行ったアンケート調査からも多くの課題が見えてきた。情報が行き届いていないことも分かってきた。プランであれ計画であれ、障害のある本人が知らなければ意味を持たないのではないか。

計画の策定にあたっては14人の委員の可半数を障害のある本人、もしくは家族を含む障害者団体が策定委員として委嘱された。私も手をつなぐ育成会の親として参加し、異例なのかもしれないが委員長としての任を受けた。が、旧態依然として残っている「行政が何とかしてくれるだろう」という意識の中での委員会は、正直大変だった。

ヒアリングに時間をかけ生活支援事業を討議

多くの見直しを必要とする自立支援法ではあるが、プラスの方向へもっていける計画にするためには、より正確なニーズを把握する必要があった。アンケート調査だけでは十分ではなく、サービス提供事業者、サービス利用者からのヒアリングに多くの時間を費やした。

特に9か所の小規模作業所は、自立支援法施行以前から障害種別を問わず受け入れをしていたため、篠山市にとっては大切な社会資源であり、自立支援法下では非常に厳しく存続すら危ぶまれるため自立支援法の情報提供も行いながら進めた。結果、20年度予定数を上回り地域活動支援センターへ3か所、統合して就労移行支援、就労継続支援B型、また生活介護事業所に3か所が移行した。自立支援法をポジティブに捉えるなら、無認可で曖昧だった部分が法人格を得ることで明確になったことは、利用者や送り出す家族にとって安心できる場所になったのではないかと思う。NPO法人からさらに社会福祉法人格を目指して事業展開をしている頼もしい事業所もある。市内にある既存の社会福祉法人にももっと元気になってもらいたいと願っている。

しかし、地域活動支援センター移行の事業所についてはまだまだ不安なところを残している。

また、グループホーム、ケアホームの利用者も、施設からの人、親元からの人とで20年度計画数の2倍以上を超えた。これには兵庫県単独の家賃補助があり利用しやすかったと思われる。

次に、市町村で大きく格差が生じると予測される地域生活支援事業内容については、最も時間をかけ討議をした。

相談支援事業については身体、知的、精神を一本化せず、きめ細やかな相談支援をすることとした。ピアカウンセラーの設置についても明記し検討中である。利用者からの相談をより迅速に対応するために本計画後、篠山市自立支援協議会を立ち上げ、3つの部会形式をとり必ず連携をしながら進めている。お互いの情報の共有化や障害者の地域生活を支援する観点から、地域包括支援センターとの連携も深めている。

プランの中ではあるが、成年後見制度の活用を推進するため「権利擁護センターを設置する」を明確にできたことは一歩前進できたことである。本年度、兵庫県手をつなぐ育成会と共催で「市民後見人養成講座」を計画しているところである。

おわりに

最後に、障害のある人たちが篠山市民として自立と社会参加を実現していくためには、障害福祉サービスの提供基盤整備は不可欠であり、実施主体の篠山市が責任を持つことは基本である。計画が絵に描いた計画で終わらないために、具体的数値を示した今計画は評価するとともに、自立支援協議会の中で進捗状況を絶えず確認しなければならないと思っている。

(ほそみよりこ 財団法人兵庫県手をつなぐ育成会副理事長)