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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年7月号

列島縦断ネットワーキング【愛知】

笑顔あふれる「元気ショップ」が1年を迎えました!

春日井市健康福祉部障がい福祉課

春日井市役所1階ロビーで授産施設利用者が作った授産品を販売する「元気ショップ」が今年の5月で開店から1年を迎えました。月曜から金曜に4施設が交代で2~3時間出店し、手づくりパンやお豆腐、手芸品を並べ、障がい者も店頭で販売を担当しています。来庁者や職員からも好評を得ています。

「元気ショップ」が生まれた経緯

一昨年から施行された障害者自立支援法は、障がい者が地域で安心して暮らせる社会を目指すとしており、市も障がい者の自立支援を総合的に推進することが強く求められている中で、「市役所には、多くの市民の出入りがあり、授産施設で売られている授産品が売りやすい場所を提供すればもっとたくさん売れるのではないか、障がい者の就労支援と障がい者への理解を深めたい」との考えから開店に向けた準備が始まりました。

春日井市役所の1階には市民課、国保年金課、介護保険課、障がい福祉課、生活医療課など、市の窓口部門が配置され、1階の1日平均延べ来庁者数はおよそ1,000人。この人たちに気軽に立ち寄ってもらえるショップを立ち上げることになりました。

なかなか進まない……

しかし、最初からつまずきました。市役所内での販売行為は「目的外使用」に当たるとして、純粋に授産品販売のみに限定するための「目的外使用」の根拠づくりに何度も調整が続きました。元気ショップの準備期間の7割は会場使用のために費やしたことになるでしょうか。庁舎管理を担当する課といろいろ協議した結果、「目的外使用」ではなく、障がい福祉課の「障がい者授産品販売促進事業」とし、授産施設等に場所を貸すということで何とか収まりました。

「元気ショップ」オープン!

コンセプトは「障がい者の店だから同情で買ってもらえる」ショップではなく、「気に入って買ってもらえる」ショップを目指し、出店については、授産品であること、施設職員と一緒に利用者である障がい者も販売に加わって参加すること、市職員は販売や金銭管理に関与しないことを条件としました。市内の授産品販売を手がけている施設に聞き取りを行ったところ、さっそく3か所の事業所が手を挙げてくれました。

これまでも事業所で授産品を販売していた小規模授産施設の手作りパン、新しく就労継続支援B型で開設した施設の手作りパン、百貨店等のイベントへ参加し販売することもある小規模授産施設の足ふきマットや陶器、草木染めのスカーフ、こうした授産品を3事業所が交代で販売することになりました。後に、こだわり手作り豆腐、焼き菓子を販売する地域活動支援センターも参加していただくことになりました。

授産品販売促進事業の名前は、販売する障がい者や施設職員もお客さんも、このコーナーを囲んで皆が元気になってもらえたらとの意味を込め「元気ショップ」としました。

元気ショップは折りたたみ机を5本並べた仮設式のもので、障がい福祉課の窓口近くに設置。施設職員1名と障がい者である利用者4人から5人が販売を担当します。

パンの販売は清潔第一。販売時には、机に白布を敷き、手指消毒、エプロン・帽子を装着し清潔、感染防止に心掛けています。生ものであるお豆腐の販売には傷まないだろうかとの不安がありました。そこで施設は、お豆腐を作る際に残る「おから」を板状にナイロン袋に入れたものを冷凍し、それを保冷剤として使用するよう工夫しました。お客さん側から見れば、お豆腐を買うとおからがついてくる…お買い得です。

お金の管理は施設職員が担当していますが、商品の説明や袋詰めなど、最初はなかなかうまくいきませんでした。お客さんから、「早くしてくれ」と催促されたり、長い行列ができてしまったりということもありましたが、回数を重ねるたびに徐々に慣れ、今では待たせることもなく、お客さんとの会話も比較的スムーズに行われています。

最も心配していたのは手芸品でした。パンやお豆腐はリピーターも多く、毎回行列ができています。しかし、手芸品は一度買ってしまえばそれでおしまい…売り上げは期待できるのだろうか…そんな心配はどこへやら。毎回1万円ほどを売り上げています。

働いてみての感想は?

参加してみてよかったことを各施設に聞いてみました。

○元気ショップに参加して社会との輪が広がった。

○お客さんから温かい言葉をかけてもらい、障がい者の仕事に対するやる気が増した。

○販売を担当した障がい者は自分が作ったものが売れる喜びを知り、売れる商品を作ろう、よりよい品物を作ろうと意欲的になり、自信と責任をもって仕事をするようになった。

○授産施設での活動を理解してもらう機会になっている。

○元気ショップで販売に関わりたいという利用者(障がい者)が増えた。

○「どこにあるの」「ボランティアに行きたい」等施設自体に興味を持ってもらえた。

○働いている障がい者を見て、悩みを持った保護者が相談に来ることもある。

○障がい者の目がいきいきしてきた。

などが寄せられています。

工賃は上がったのか

元気ショップはこの1年で313回開催し、月平均90万円を売り上げ、100万円を超える月もありました。1日平均にすると3万5千円近くを売り上げており、うれしい誤算です。出店する4施設のすべてで利用者に支給する工賃が上がりました。工賃は1,600円から8,700円ほどと施設によってまちまちですが、工賃の引き上げができなかった施設ではボーナスを支給しました。

ますます元気!

この1年、新聞掲載やケーブルテレビでの放映、他市からの視察など皆さんから温かな声援をいただいています。最近では、地域のお祭りや市のイベントからの出店要請が来るようにもなり、元気ショップの認知度も上がってきました。

このように、市役所内に開設した元気ショップが販売促進のみでなく、障がい者が販売の場に立つことで障がいのある人とない人が交流でき、当初の目的であった障がいへの理解も進んできているのではと実感しています。

障がい者も、元気ショップに関わることで、工賃の増加もさることながら、人との交流の中で働きがいを感じ、責任と自信を持って、働く楽しさを感じながら頑張っています。

みんなの「輝く笑顔」を目指し、本日も元気ショップは開店しています!