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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

高齢者用白杖、ステキーくんを使用して

斉木實

私も数年前まではある程度視力があり、何とか日常生活を送ってきましたが、現在は、明暗も感じなくなってしまいました。

視覚ゼロの中での外出で欠かすことができないのは白杖です。白杖といっても、材質や形状はさまざまです。単独で歩行する時は直杖が丈夫で安全と思いますが、劇場やレストランなどに行く時には、軽くてコンパクトで折り畳みのできる白杖が便利だと感じていました。そのため行き先や目的によって白杖を変えています。実際に外出してみると、誘導ブロックの上には自転車や荷物が乱雑に置かれていたり、時には走ってくる自転車に触れ、ひやっとすることもあります。

視覚障害者にとって白杖は、周囲の環境を知るための貴重なアンテナの役割を果たしていますが、同時に、私自身が視覚障害であることを周囲の方々に知ってもらうことにも役立ちます。最近では私も歳をとるにつれ、体の動きも鈍くなってきました。特に、下肢の衰えによって、身体のバランスが崩れ体を支えてくれるような杖があれば大変助かると思っていました。しかし、一般に売られている白杖には、その機能はありません。幸い、今年の4月「広報ひらつか」で、ライオンズクラブ様から、体を支えることのできる白杖が寄贈されるという記事を読みました。

この新しい白杖、ステキーくんは、これまでの白杖とは、まったく異なった機能を備えていました。自分の身長に合わせて長さの調整ができ、握りの部分は手に優しくフィットします。しかも、その握った手が滑らないように工夫されています。また、柄の部分には階段を昇る時にも体が支えられるように握りがついています。

この杖の一番の特長は、石突の部分です。杖を突いた時に石突の部分のゴムが常に路面に平行になるように工夫されています。こうした工夫により足腰が弱り、身体のバランスを崩して転びやすい高齢の視覚障害者にとっては大変使いやすくなりました。使う人のセンスも考慮されているようで、見た目も優しい色使いのようです。体を支えてくれる白杖があれば、ガイドヘルパーさんとも楽しく歩けます。そんな窮状を救ってくれたのが今回開発された白杖、ステキーくんです。

高齢化の進む私たちにとっては、従来の白杖のように、杖先から情報を入手するというよりも、むしろ歩行時に体を支えてくれる白杖が必需品になってきました。今回、開発された白杖、ステキーくんは近年に無い、私たち視覚障害者にとっての朗報です。

(さいきみのる 平塚市在住)

*ステキーくんの問い合わせは、国際視覚障害者援護協会まで。
URL:http://www11.ocn.ne.jp/~iavi/
TEL:03―5392―4002