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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

中途失聴・難聴者ユーザーの声

小川光彦

情報通信機器やシステムの発達は、情報障害者である私たち聴覚障害者の活躍の場をぐんと押し広げてくれました。かつてはコミュニケーションの難しさから電話が十分活用できず、離れた所にいる相手とは手紙や電報でしか連絡できなかったのが、今や地球の裏側にいる相手とも歩きながら片手でメールしたり、テレビ電話で手話を使って通話することも可能になりました。

一方で聴き取りの面など、なかなか向上しない点もあります。特に感音性難聴者の場合、聴者と同じような、言葉の聞き取り環境の向上は実現が困難です。加えて筆者は両耳100dB近い聴力損失です。こうした環境を補うシステムの総称が、補聴援助機器(assistive listening device(ALD))です。最近では次のような進展がありました。

■FM、ブルートゥース

聞く、ということについては、補聴器や人工内耳が最も優れています。デジタル化が進展し、性能も向上しています。補聴器等を使えば聞こえるようになると思われがちですが、離れたところにいる相手の声は、どんなに優れた補聴器でも聞きにくいのです。特に、人の話し声については2mくらいまではかなり聞き取れても、3m、4mと離れると途端に分かりにくくなってしまいます。こんな時に、話者の口元でマイクを使用して補聴器で受信できれば、このような離れた位置の聞こえを補って、耳元で話されたような効果があります。コード付きまたはワイヤレスのマイクが活躍します。

07年8月、電波法改正で169MHzの周波数によるFM補聴器使用が認められ、約30m離れた距離でも使えるようになりました。これにより「耳元で話されている」かのように、安定して活用できる範囲が飛躍的に広がりました。ブルートゥースの無線システムでも、10m程度の近距離に限り、同様のことが可能です。携帯電話の着信を、耳にかけた補聴器にハンズフリーに受信し通話が可能なシステムまで登場しました。手ぶらで補聴器だけで電話している様子は、少し不気味です。

■ワンセグ

聞こえないとテレビが楽しめません。かつて、持ち運びできる字幕付きテレビ、というのが未来の難聴者の夢として語られていたことがありました。ワンセグはそんな夢を飛び越して、手のひらで字幕付きで見られるテレビを実現してしまいました。

気になる番組やスポーツ中継、緊急災害の時の情報受信に、字幕付き、受信料無料(携帯電話の場合、携帯利用料金は必要)で見られるワンセグは、大変重宝です。ただ、せっかくワンセグ機能付きの携帯電話を持っていても、視聴料がかかると誤解している方も多いので、さらにPRが必要です。

(おがわみつひこ 全難聴情報文化部)