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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年8月号

メモリアシストの活用

工藤則之

私は、42歳の診療放射線技師です。技師専門学校を卒業後、東京都内の総合病院に勤めていましたが、4年前にウイルス性脳炎を発症し、意識消失などの症状で、半年間の入院生活中に、「高次脳機能障害」と診断されました。退院後は職場を離れ、本格的なリハビリ訓練を開始しました。

現在、私が抱える症状は、食後の薬を飲み忘れる、今朝の食事メニューが思い出せない、人や物の名前を思い出せないといった健忘症候群。また、よく知っている場所や買い物中に店内で道に迷うといった地誌的障害などです。

発症間もない頃は、これらの症状をボンヤリとは感じていながらも、「そんなはずはない」との思いから、この現実に対して正面から向き合うことを避けていたと思います。しかしどんなに自分を偽ってみても、こうした症状が消えてはくれませんでした。今のままでは、常にだれかの助けを借りなくては生活できないという現実に、ようやく気付くことができました。

私は、これらの問題と上手く付き合うための手掛かりを求めて、リハビリ訓練を行う中で、「メモリアシスト」と出会いました。これは、前記のような記憶の曖昧な部分の確認を手助けしてくれます。毎日のスケジュールをあらかじめデータ入力しておくことで、先々の予定表を携帯情報端末(PDA)で確認することができます。指定の時刻には、その画面に行動内容が表示され、お知らせアラームが鳴って気付かせてくれます。私は、毎日、子どもの送迎や買い物、通院、ビデオの録画、ゴミ出しなど、1日のスケジュールを入力して、いつでも確認できるよう腰に携帯して使っています。その中でも通院など、特に忘れてはいけないことには、アラーム機能を使っています。

また、手順支援機能もあって、これは通院時の交通機関の乗り換え・病院の受付・診察・会計といった一連の手順を、文字はもちろん、風景写真付きで確認できるだけでなく、地図の画像表示もできます。さらには、手書きのメモや録音機能も装備していて、外出先での記録に活躍してくれます。

このように「メモリアシスト」は、ユーザーが病識を高め、どの場面で手助けを必要としているのかを正しく見極めて、対処方法を入力しておくことで、ますます有用なものへとなっていきます。

今後、私が「メモリアシスト」に望むことは、未来記憶(発生が懸念されるトラブル)への支援はもちろんのこと、カメラ機能などを搭載した電子日記のような、過去の記憶を振り返ることへの手助けもしてくれるようなもの、へと成長してくれることです。

(くどうのりゆき 東京都在住)